【星幽塔】第六階層　祈り星と雲海を懸けるタランテラ｜リアクション

【星幽塔】第六階層　祈り星と雲海を懸けるタランテラ

おまけ

　――会議が終わった頃。

　鴻上彰尋が目を覚ますと、そこは集会所の中だった。傍らではアルレッテ・ザメニスが安堵の息を漏らし、「気分はどうだい？」と問いかける。
「義勇軍や星守のみなさんは……？」
「和解したよ。君やみんなのお陰でね」
　アルレッテが『第六階層復興委員会』が結成された事を話すと、彰尋は顔をゆっくりと綻ばせた。
　治療をしたアルレッテ曰く、共に負傷したリリエル・エーテライトは軽く肩を切っただけだったので治癒の光で完治した。だが、彰尋の場合は、運が悪ければ胸に傷が残るかもしれない、との事だった。それだけ深かったのだ。
　だが、彼の顔に後悔は無かった。あの時、命すらかけていたのだから。
「賭けに勝ったのかな」
「あぁ」
　彰尋とアルレッテが顔を見合わせて笑い合っていると、外が騒がしかった。窓から見ていると、ゲース・アイルンアルムと義勇軍の人々が何かを言っている。
「約束の掛け金払え？　なんのことやらっ！」
「っ！　逃げやがった！　追え！　追えーっ！」
　走り去るゲース、追う義勇軍。その様子を見た２人は……見なかったことにした。

　彰尋が目覚めた、と聞いたリリエルはサンドウィッチを持って彼のいる部屋へ向かっていた。その途中、軽やかなバイオリンの音色が聞こえ、ふと足を止める。窓の外を見れば結城日和がバイオリンを奏でている。彼女の奏でる曲を聴こうと、多くの人が回りに集まっていた。
　星守も義勇軍も対立せず共に歩む道を選んだ。今は一緒に音楽を気楽に楽しんでいるように見える。
　その中には新田亮もおり、どこか安らいだ顔で音楽を楽しんでいるようだった。今までスパイ活動をしていた彼は多少疲れており、日和の音楽で幾分かリフレッシュできたようだった。普段はヘヴィメタルを好む彼だが、バイオリンもたまにはいいな、と思ったらしい。
　日和は、バイオリンを奏でながら、こうして皆が一緒に楽しんでいる事を、心から喜んでいた。思いが通じた事が何より嬉しい。日和はそっとうれし涙が滲むのを堪えながら、心をこめて奏で続けた。
「うんうん、やっぱりみんな仲良しが一番だよねぇ」
　うさぎのぬいぐるみ・ラピちゃんを抱っこした曖浜瑠樹の言葉に、リリエルも笑顔で頷いた。

　瑠樹とリリエルが彰尋とアルレッテがとお茶を楽しんでいる頃。椎井莉鳥もまた疲労から別の部屋で横になっていた。彼女は戦争を阻止するべく情報収集やら万が一に備え気を張っていた。場合によっては義勇軍側に潜入しラプターを戦闘不能に追い込もうとすら思っていたのだ。
　彼女の行動が結果的に骨削瓢の放火を食い止め、証拠の品を手にしている。影の功労者といってもいいだろう。
「大丈夫かい？」
　旅鴉月詠がお茶を持ってやってきた。彼女は起き上がった莉鳥にお茶を渡すと、自分も椅子に腰掛けお茶を飲みながらスケッチをしていた。
「おかげさまでよく眠れたわ。……それ、もしかして竜？」
　莉鳥の問いに月詠は僅かに口元を綻ばせてうなづく。彼女は仲間たちに頼まれ、復興委員会のマークを描く事になったのだ。竜が縁になるよう丸くなった状態で書き、中に６枚の花弁を持つ花を描く。月詠の絵に莉鳥の眼差しも幾分か優しい物になった。
「戦争が起こらなくてよかった」
　莉鳥の呟きに、「そうだね」と月詠もどこか嬉しそうに頷いた。

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