せんせいといっしょ：五十嵐先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：五十嵐先生編

　夜空を走った光の筋を、優木遥斗の眼差しは確かに捉えた。
（流星、か……）
　ノートパソコンを駆使して木星を観測していた八神修も肉眼に流れ星を映し、
「わあ……！」
　椿美咲紀が感嘆の声を零したのを耳に、そっと微笑む。
　光が消えてからも、青山絢は無言でじぃと空を見つめ、
「へえ、これは僕達、運がいいですねぇ」
　飄々とした倉前七瀬の声が、絢が纏っていた静寂を明るく破った。
「……流れ星、本当に見られるだなんて」
　ほう、と感じ入ったような息を漏らしたのは御巫時子だ。
　恵御納夏朝は、くるりと皆の顔を見回して、
「ねえ、皆はどんな事願った？　僕は……内緒！」
　と、悪戯っぽく声を零す。
　五十嵐尚輝先生が、そんな夏朝の方へと視線を移してぼさぼさ頭を掻いた。
「ああ、願い事……うっかりしていました。盲点ですね」
　存外真面目な声音で言う五十嵐先生の様子に、そこここから笑い声がさざめく。
　その只中で、夏朝は胸の内に秘密の願い事を繰り返した。
（――寝子島の皆に、幸あれ。……願いを聞いてくれてたら、いいな）
　もしも、流れ星にも神様が宿っているならばと。
　夏朝は、そう祈らずにはいられなかったのだ。
「先生、今日はこういう機会を作ってくださってありがとうございました」
　皆の元へと戻ってきた遥斗が、五十嵐先生の前まで歩み寄ってぺこりと頭を下げた。
　顔を上げた遥斗は、五十嵐先生の目を真っ直ぐに見つめる。
「……もう少し、がんばります」
　何を、とは言わなかった。
　この人なら静かに聞いてくれるだろうと思ったし、事実、その当ては外れなかった。
「時は有限ですからね」
　僅かに目元を和らげて、五十嵐先生は短く、そうとだけ零す。
　遥斗は、もう一度軽く礼をして、「帰ります」と五十嵐先生に告げた。
「さて、たき火組は後片付けかな」
「え。僕、まだ食べてないカップ麺があるんですけど」
　修の言葉に、七瀬があくまでマイペースに応じる。
　その言葉を耳に、「そういえば僕も色々と食べ損ねました」と五十嵐先生。
「ああん、私もなのです！　カップ麺なんて自分で持ってきたのに制覇ならず！」
　次いで美咲紀がそう声を上げる中、時子はそっと、五十嵐先生を見遣った。
　五十嵐先生の様子は、何だかちょっぴり残念そうに見えなくもない。
（私も名残惜しいです……少しでも長く、先生の傍に居たいから）
　居合わせた皆の姿を眺めながら、夏朝はもう一つ、消えてしまった流星に祈った。
（星空を普通に楽しめる日々が……悪意あるものに乱されませんように）
　頭上では、星々が、地上に生きる者達を見守るように輝いている。
「……写真に残したかったわね」
　目の奥に残る光の軌跡を空に透かし見て、絢がぽつりと音を零した。

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あとがき

担当マスター：巴めろ
ファンレターはマスターページから！

お世話になっております、ゲームマスターの巴めろです。
まずは、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました！

この度ありがたくも、『せんせいといっしょ』シリーズの五十嵐先生編を担当させていただきました。
此度の星見が、皆様のお陰で五十嵐先生の心に残るものになったのと同じように、
ＰＣ様方にとっても、仰ぎ見た星のように煌めく時間となっていますようにと心より願っております。

重ねてになりますが、ご参加くださった皆様に心からの感謝を。
この度も、本当にありがとうございました！

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