１０１匹にゃんこ大移動！　にゃんころ星人ＳＯＳ！｜リアクション

１０１匹にゃんこ大移動！　にゃんころ星人ＳＯＳ！

■恵御納久隆という男
　さて、画面の前のみんなもそろそろ疑問に思っている頃では無かろうか。
　紫の窮地を救った謎の煙。それは修がとっさの機転で作った煙幕だったが、そのもととなった発煙筒は誰が投げたのだろうか？
　そして現場に駆けつけた自動車。理沙は夫のものだと言っていたが、その夫はどうしているのか？
　野次馬対策に困った夏朝は無事ににゃんこ星人たちを助けられたのか？
　そんな疑問の中心にいる人物。
　それが、恵御納久隆という男である。
　名前でなんとなあく察しているとは思うが、夏朝の父にして理沙の夫。久隆パパ、３８歳。ただの『ひと』である。

　久隆は家族とともに本土へやってきていた。
　とはいえ妻は日用品の買い出し中。
　家族団らんというよりは、好き勝手に動き回る時間である。まあ、あったかい家族ってーのは割とこんな具合に回るものだ。きっと娘も島で自由にしているころだろう。
　というわけで自分はやけに男臭い車用品店（と何かがくっついた店）に訪れていた。
　車用の芳香剤を買い足したり、そういえば期限が切れていたらしい発煙筒を買い足したり、きれかけた整髪料（妻に任せずに商品に拘ってみたくなった）を買ったり……。
　でもって、知人に勧められたレザージャケットを眺めていた。
　古い刑事ドラマで見かけたような渋いジャケットだ。しかしこの年で着るには派手すぎるのでは？
　そうこうしていたら、唐突に例の爆発事件が起きた。
　なんだかんだで購入したジャケットと（古い刑事ドラマの影響で）一緒に買ったサングラスを着用したまま、彼は現場に走った。
　家族のいる場所でおこった非日常的な事件。家族、事件。その二つのワードだけで、彼が走るには充分すぎたのだ。

「これは……どういう状況だ……？」
　ネコ方ＵＦＯが落ちてにゃんこ星人がピンチらしい。
　幸い家族の姿は見えないが……。
「にゃー、たすけてにゃー」
　野次馬を逃れたらしいにゃんこ星人が彼の足下でぺたりと倒れた。
　その姿が娘に重なるように思えて、久隆は慌ててにゃんこ星人を抱きかかえた。
　傷ついたにゃんこ星人。地球は子供たちが思い描くほど平和じゃあない。もし知れ渡ればこの子たちがよからぬことに利用されることは明白だ。
「……何とかしよう！」
　三月の空の下。
　３８歳のサラリーマンに闘志の炎が宿った。

　日頃から鍛えたおかげか体力と筋力は自信のある久隆である。
　にゃんこ星人を抱えて野次馬へとかけよった。
　しかし力尽くでどかすには人数がいすぎる。にゃんこ星人を抱えながらでは出入りは難しいだろう。
　となれば……。
　ついさっき買ったばかりの発煙筒を地面の摩擦で着火させ、野次馬を超えるよう山なりに投げ放った。
　地面に落ちるやいなや、ポンッという破裂音と共に大量の煙を放出する発煙筒。
　いや不良品だろうあれは。安物を買ったからかなあ。今度はちゃんとしたやつを買おう……とか思いつつもこれは好機。
「あぶないぞ！　みんなふせろ！」
　刑事ドラマで聞いたような単語をめいっぱい叫びつつ、周囲の様子を素早く確認する。
　自動車らしきものが飛び込んでいく。危なっかしい運転だが、それゆえに皆飛び退いて道ができていた。
　その隙を突くようにして何人かの人影が中へ飛び込んでいく。
　彼らに協力することも考えたが……。
「いや、違うな」
　自分には別にやることがあるはずだ。
　久隆はそう直感して、とにかく場を乱すことに集中した。
　にゃんこ星人は、助けに入った彼らに任せることにしよう。
「さ、仲間たちと一緒に行くんだ」
　大丈夫かと聞かれて、久隆は……笑みをこらえてこう言った。
「ここは任せて先に行け」