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花残し月のあなたへ
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「ああ、いたいた」
ホールに戻ったエリセイたちを、早速奏楽が見つけた。彼は誉の両肩を掴み、隣に立たせた。
「弟と仲良くしてくれて有難う。
これからも、メールとかねこったーとか手紙とかで連絡を取り合ってあげて欲しい。
誉はこう見えて寂しがり屋だからね」
「奏楽!」
誉が名前を呼んで窘めたが、おどけた兄は双子たちと兄同盟を組んだらしく歯が立たない。兄に勝てる弟はいないかもしれない。
「あはは誉さん、じゃあ僕らは弟同士で仲良くしちゃえばいいんですよ」
優しさを感じて、誉はイリヤをじっと見つめる。
「イリヤは『皆が沢山助けてくれてるから』と言ったけど、助けたいと思わせるイリヤが居るから、俺達は手を貸すんだと思う。
どうでも良い人に手は差し伸べない。
少なくとも俺はイリヤが好きだから、力を貸すし、困った時はイリヤの手を借りたいって思う。だから、それはきっとイリヤの魅力で、イリヤの力だ」
「誉さん……。
あのね、僕、信じてますから。ニューヨークってジャズの本場なんですよね? だから、きっとまた!」
涙声を詰まらせるイリヤへ、誉は強く頷いてみせた。
「何処へ行っても大丈夫。
何かあれば呼んでくれ。直ぐにとはいかないかもしれないけど、飛んでいく。力になる」
「うん!」
「これでさよならじゃない。ずっと友達だ
俺にとって、エリ先輩、レナ先輩、イリヤは大切な友達だ。今までもこれからも」
深い灰色の瞳が濡れているのを見ると、誉も貰ってしまいそうになる。誉は兄を呼んで、準備してきたものを披露することにした。芸術で感情を伝える、いつかレナートが言っていたように。
「ところで誉、ピアノは?」
「これがある」
誉は蛇腹にしていたスケッチブックをカウンターテーブルの上に広げた。
「ああ、またあのマジックなのか」鍵盤は誉のろっこんで音を奏でる楽器になった。「いつ見ても不思議で面白い」と奏楽らは素直に驚き楽しんでいる。
誉は皆の反響の間に気持ちを落ち着けて、もう大丈夫だと奏楽へ目配せした。
そして二人が鍵盤をおさえると、瞬く間に世界が展開された。ジャズの明るいリズムが伝えるのは、誉の楽しかった思い出と感謝の思いだ。
(誉の友人達の行く先に)奏楽は誉の音に弟の伝えたいものを感じ取りながら、それが旅立つものへ届くように祈りを込めた。
(明るい未来がありますように)
奏楽は手拍子を聞いて、左手で演奏しながら右手で皆へ合図する。
「さあ、歌い踊ろう!」
「よぉーし!」
武道はグラスを持って、皆の顔をぐるりと見た。
「お祝いの会はまだまだこれからが本番だぜーぃ!
素敵なパートナーと共に人生を歩む康子さんに! 新天地に向かうエリセイくん、レナートくん、イリヤくんに! そしてそのモフモフできっとアメリカでも魅了しまくるだろうポンチクに!
もういっかいカンパーイ!!」
*
送別会は夜まで盛り上がった。
「万が一、進展があったらアメリカに行った時に報告する……かもしれません」
「おー英二言ったなー!」
「男見せろよ!」
ホールに笑い声が響くなか、夏夜は自分の時間の終わりを感じて目を閉じる。
「夏夜さん?」
イリヤが気づいたのか視線を向けてくる。その顔を見ていると少し寂しさを感じるが、夏夜はなにより幸せを願った。
(寝子島や本土で頑張る皆に、新天地へ往き楽しむ皆に。
……どこかへ去りゆく誰かにも)夏夜はドアノブに手をかけた。
「それじゃ……元気で、ね」
ちりんちりんと鈴の音が消えるまで、イリヤは扉の前に佇んでいた。はっとして外へ飛び出すが、もう夏夜の姿はなく、花びらが風に舞うだけだ。
イリヤは薄い桜色が足元に落ちたのを見た。
瞬間まるで突風のように彼を叩いたのは、幾度も経験した旅立ちの前に、関わってきた人々から掛けられた別れの言葉だ。
無数に積もる言葉のその根元に、イリヤが思い出したくないものがある。
「『ごめんなさい、おかあさん』」
あの日。自分が母に掛けた別れの言葉を、もう一度口にしたあと、イリヤは自分がどうなっているのか分からなくなった。
数十秒か、数分間。軽い意識の喪失のあと、泉に背後から助け起こされてはじめて、ミルクホールの前で自分が蹲っていたことを知る。
イリヤは呆然としたまま、母の名前と同じ木を見上げた。
「僕は嘘つきだ」
「イリヤ」
泉がエリセイとレナートが追ってきたのに気づいて忠告したが、イリヤは言葉を止めない。
「あなた話し合えって言ったでしょう。だから話すよ、全部。全部僕の嘘のせいだって!」
イリヤの激昂する声に、泉は反射的に振り向きエリセイとレナートの様子を確かめた。二人は驚きで動けなくなっている。助けてやりたいが、イリヤの全身に彼自身を傷つけるような力がある今は、泉も大丈夫だと視線を送ってやるので精一杯だ。
イリヤは口を開き、今度は機械的な調子で喋った。
「僕はあの日何があったか今も知らないけれど、何が起こるかは知ってたんだ。
パーパとお母さんが死んだのは事故じゃない。そしてきっとあの人の事も。
お母さんが殺したんだ」
突きつけられた言葉を遂に否定できず、レナートは眉を寄せながら頷く。
「僕もお母さんと一緒に死ぬって約束したから、毒だと分かっていて食べるなんて怖かったけれど、ねえ、残さず綺麗に食べたでしょう?」
「お前……どうしてそんな恐ろしい事を! 初めから死ぬつもりだったのか!?」
「そうだよ。
それがお母さんの幸せなら良いと思ったんだ。でも二人の命だけは——!」
イリヤは突然目を吊り上げ、狂気めいてまくし立て始めた。
「スープにブロッコリーを入れて、兄さんたちが捨てるように仕向けた。パーパの銃を兄さんたちの手の届く場所に置いたのも、僕だ。
ああ、僕が裏切るなんてお母さんは想像もしてなかったよ。だって、はは。分かる訳がない、リーセとレーナが僕にとってどれだけ大切か、特別か、愛しているか、お母さんもパーパも知ろうともしなかったんだから!
でも、あの壊れた家のなかで、僕を守っていてくれたのが誰なのか、僕はずっと分かってたから。
二人に守られることが僕の幸せで、僕も二人に幸せをあげたかった。笑った顔が見たかった」
イリヤは泣きそうな顔で微笑んでいる。
「あのね、僕頑張ったんだぁ」
褒めてとねだる声で甘えると、強張った全身から力が抜けて倒れそうになる。彼を後ろから支える泉は、祈るような気持ちで押し黙っていた。
「お母さんもパーパも『可愛いイリヤ』が自慢だったから、二人が帰ってくるようにステージに立って、歌って、微笑んで」
そんな自分を周囲がどんな目で見ていたかを幼い日のイリヤは知っていた。賞賛の陰に隠れた悪意に晒され、ボーイソプラノと性別のない愛らしさと言う時間制限つきの才能が終わる日に恐怖しながらも、彼は二人の兄が幸せになれる家庭を夢見て歌い続けていたのだ。
「生きていればいつかって、そう……思って……。
浅はかだった。
エリセイ、レナート、ごめんなさい……お母さんとパーパとあの人が死んだのは…………全部僕が招いた結果なんだ」
決壊したものは元に戻らず、イリヤは全てを打ち明けてなお震え、虚ろな目で二人の兄を見つめている。エリセイとレナートははじめて、弟の笑顔の奥にあったものを知った。
守っていたつもりで、守られていたのは自分達だったのだ。
エリセイは弟の迷う手を取った。
「何があっても、お前は俺たちの大切な弟だよ」
エリセイが肯定でも否定でもない応えを出すと、レナートはイリヤの額に口付けた。彼が弟に与えられる愛情と感謝と赦しの印だ。
「有難う。イリヤが守ってくれたから、ここへこられた。
康子おばさんに会えた。学校に通って、仕事して、沢山の人に出会えて嬉しいことも悲しいことも経験できた。幸せだよ俺たち」
「もう一度、一緒に生きよう。兄弟一緒なら」
エリセイは言葉をとめ、澄んだ瞳でミルクホールを見つめる。あそこから送り出してくれた人たちを——、また会えると信じてくれる人たちを思うと、行くべき先に道標の灯りが見えるのだ。
「——いや、あの頃みたいに三人だけじゃないから。もう俺たちは自分の辿り着きたい場所を目指せる。
何処へでも飛べるよ」
しかしイリヤはまだ兄の微笑みの意味を理解しようとしない。
「でも兄さん、僕は」とイリヤが否定しそうになると、泉が静かにそれを制した。
「お前ら自身が自分を許さなくても、周りがお前ら兄弟を許したんだ」
イリヤは静止して、目を見開き、自分を見つめた。
「……そうか……」
あの事件の前、イリヤはエリセイとレナートが助かった時の可能性に気づいていた。彼は母親の希望通りの息子を演じながら、二人の兄が母親の凶行から自分を守ってくれるのだと完璧に信じていた。
死にたくなかった。
「僕は……僕も一緒に生きていたかったんだ——!」
そしてイリヤは、エリセイとレナートに続いてようやく気がついた。
温かい手に握って貰った——熱をくれる誰かに感謝しながらも、自分たちの罪が溶けてしまう春に怯え、冬を永遠にして凍え続けようとしていた事に気がついた。
真実、今の彼らを裁くものはこの島になく、触れ合った人々は優しさと慈しみに満ちていたのだ。
悲鳴を上げるように泣き崩れた弟を、二人の兄は抱きしめる。
桜の花は闇の中を照らすように踊り、飛び立つ彼らの背中を押すように、空へ高く高く舞った。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
東安曇
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
NPC交流
定員
20人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年05月11日
参加申し込みの期限
2017年05月18日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年05月18日 11時00分
参加キャラクター一覧
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