うみねこで春の味覚を｜リアクション

うみねこで春の味覚を

●鍋のもうひとつの楽しみ

「ふぅ、慌ただしかったけど食いごたえあったぜ」
　具材争奪戦もあったりしたが、水守流と本居陽毬は海鮮鍋をたいらげた。
「そんじゃ、シメといくか。うどんと雑炊、どっちにする？」
「どっちが良いって？　ふっふっふ、甘いね水守君！　ここは交渉だよ！」
　陽毬曰く。
　シメをうどんか雑炊か選ぶのはまだまだ初心者！　鍋の玄人は、まずはうどんを堪能！
　そして、更にそこで残った残り汁と単品で頼んだご飯と卵で雑炊を作って食べる！
　すなわち、うどんも雑炊も食べる！
「要は、両方食べたいということか」
　流は雑炊派だが、陽毬がうどんも、とプッシュするのでどうすべきか悩んだ。
　しばらくすると、頭の中で、うどんを食ってからご飯を入れて雑炊も楽しむ自分の姿が浮かんだ。
「ま、まさか、そんな発想があったとは！？」
　驚くほどのことではないが、何故か敗北感をおぼえた流。　
「折角いい出汁が出てるのに両方食べないのはもったいないでしょ？　最後まで味わいつくさないと」
　発想のスケールに負けた……と流は項垂れた。
「だとしたら、ご飯と卵は単品で頼むしかないか」
「そうだね。すみませーん、単品で白ご飯と生卵とかもらえますかー？」
　ちょっと待ってください、と近くで注文聞きをしている鳴鏡院総悟が言う。
「お待たせしました。単品でご飯と生卵ですね。鍋のシメはどうしますか？」
　両方！　と同時にキッパリ答える２人。
　シメをうどんにして、後で雑炊作って食べるんだと思った総悟は、どうすべきか魚戸夫妻に相談することに。

「シメを両方食いたいだ？　食欲旺盛な客だな。ご飯は単品注文、生卵は追加料金で頼めると言っとけ」
　若い奴の食欲はすげえと感心するケンゾウは、その客が追加注文するかもと思った。
　シメを楽しみにしている流と陽毬に、総悟はご飯は単品で頼め、卵は追加料金を払えば頼めると伝えた。
「両方できるってんなら、やってみようじゃねぇか！」
「そうこなくっちゃ！　というわけで、ご飯と卵の代金は水守君が払ってね？」
「奢るとは言っていない」
「え？　違うの？」
　鍋はひとつ分の代金で済んだので、ご飯と卵のお金だけでも払おう……と陽毬は財布の中身を確認。

「水守君達は両方なんだ……シメ……どっちにしようかな……」
　どちらにしようか決めかねる恵御納夏朝。
　八神修も悩んでいるので「え、えーと……お鍋のシメ、うどんと雑炊が選べるみたい……」と説明。
「フグ鍋だと雑炊だが……」
　うどんも捨てがたいな、と思案中。
「雑炊もいいけど、うどんも美味しそうだよ……」
　いつまでも悩んでも仕方がない。夏朝の提案に「そうだな」と修はうどんに賛成した。
　接客をしている李小麗を呼んで、シメのうどんを頼む。
「鍋のシメはうどんなのだ。お持ちしますのだ」
　小麗が臨時１日店員として手伝っていたことあったことを思い出し、今回も手伝わなくて良かったかな？　と思うと修は申し訳ない気分に。

「お待ちどうさまなのだ！」
　うどんを持ってきた小麗に、今回も手伝えなくて悪いと謝る修。
「気にしなくていいのだ。しゃおりーはお手伝いしたいからしているのだ。ごゆっくりなのだ」
　さっそく食べよう、と鍋の中にうどんを投入。茹であがったら、小皿に入れて一口。
「お鍋、シメも楽しくて……美味しい！」
「そうだな。体の芯から暖かくなる。１つ鍋ってのもオツなものだ」
　具だくさんの鍋も良いが、残った汁で煮込んだうどんも良い。

　４人は、お腹いっぱいになるまで海鮮鍋を堪能した。