うみねこで春の味覚を｜リアクション

うみねこで春の味覚を

●限定メニューを食べに来ました

「すいませーん、２名っすけど空いてますかー？」
　来店と同時に本居陽毬とやって来た水守流が訊ねる。
「水守君も、限定メニュー食べに来たんだ……」
　知り合いを見かけた恵御納夏朝が声をかけた。
「限定メニューの海鮮鍋を食べに来た。それでいいよな？　本居」
　他にも限定メニューがあるんだから、いろいろ考えようよと陽毬に言われ、そうするかと思い直す流。
「海鮮鍋にするんだったら、一緒に食べないか？」
　二人前を2つ頼めば別々のシメを楽しめると言う八神修の提案に「それ、いい！」と陽毬は賛成する。
「僕も、それがいいな……」
　う～んと考える流だったが、大勢で食べるほうが美味いか、と思い、４人で海鮮鍋を食べることに賛成した。

「いらっしゃいませ。４人ですか？」
　お品書きを手に、綾辻綾花が訊ねる。
「ああ。お座敷、空いてるか」
「今はどこも空いていますから、お好きなテーブルにどうぞ」
　あれ可愛いと陽毬がイルカのテーブルを気に入ったので、そこに座ることに。
「すぐ座れて良かったぜ。期間限定メニューの海鮮鍋でいいよな？」
　そう言われたものの、私はどうしようかな、どれにしようかな……と財布の中身と相談しながら陽毬は悩む。
　美味しそうなメニューがいっぱいあるが、財布の中身と相談したら一択に。
「いいわよ、海鮮鍋にしましょう」
「いいんだな？　じゃあ、頼むぜ」
「頼んで！」
　二人前なら割り勘にすると１人分の代金は安い。
　できるだけたくさん食べる！！　と早くも海鮮鍋を食べる気マンマンの陽毬だった。

「いらっしゃいませ、天満さん」
　鳴鏡院総悟が、どこに座ればと困っている天満七星をテーブルに案内する。
「今日は、何やら特別な献立があるようですけれど」
「ケンゾウさんとハルコさんが、お客様に感謝の気持ちを込めて考えた３月限定メニューなんだ」
「そういうことでしたか。それは良いことですわ」
　それで、今日はお客様が多いのですね、と納得する七星。
　新装開店準備、七夕ゆかた祭りの屋台手伝いと魚戸夫妻と縁があるので、何かしたいと思う気持ちが。
「ご利用の人が多くなりそうでしたら、お手伝いを申し出ようかと思いますわ」
　頑張っている夫婦の様子を知っているからこそ、協力したいという思いが強くなる。
「いらっしゃい、七星ちゃん。久しぶりだね」
　注文聞きを終えたばかりの魚戸ハルコが、明るい笑顔で話しかけた。
「お久しぶりです、ハルコ様。限定メニューを食べにきました。楽しみにしていますわ」
「嬉しいねえ。注文が決まったら呼んどくれ」
「はい」
　お品書きを見て、何を食べましょうかと目移りする七星だった。
　いろいろと悩んだ結果、注文したのはうみねこ春定食。
「春定食、頼むよ！」
「あいよ！」
　カウンター越しに、魚戸ケンゾウの威勢の良い返事が。
「亮、これから忙しくなる。手伝い頼むぜ！」
「わかりました」
　ケンゾウに頼りにされたので、新田亮は頑張らないとな、と包丁を握りしめる手に力が入った。

　12時を過ぎると限定メニューを食べに来た客が増えてきたので、魚戸夫妻達は大忙し。
「美味しい定食、ご馳走様でした」
　お勘定を済ませると、七星は一旦、店の外へ。