【ホワイトデー】学生達のWhite Day!｜リアクション

【ホワイトデー】学生達のWhite Day!

（ホワイトデー！　つまり男の俺がプレゼントを贈る日だ！　という訳でまゆ先生好きだー！）
　どういう訳なんだろう。まあとにかく、本日も冴木竜司は絶好調という事だ。

（今日はバレンタインにチョコを貰った勇者がお礼を返す、聖戦の様な勝負の１日。つまりバレンタインと同じくまゆ先生にプレゼントを貢ぐ日だって事だ！）
　文脈が繋がっていないが、竜司にとっては歴然とした事実なのだろうから、放っておく。
　２月ほどではないが、まだまだ寒い３月の朝。透き通る青空をきりりと凝視しながら職員玄関に近い東門で、冴木竜司はバレンタインと同じく腕組みをして立っていた。
　さあ、俺の心も体も準備万端、ストレッチでもして待っておこうと屈伸運動を始めた時、職員玄関に向かう相原まゆの姿を発見する竜司。途端、彼は叫びながら走り出していた。
「まゆ先生！　今日も一段と綺麗なその御姿に俺の心はフォーリンラヴ！　結婚してくださーい！」
　ズザザザザッ！
　先月同様竜司は見事なスライディングを決める。そしてその姿勢のまま、よよと地面に倒れ伏した。
「先生、今日はおズボンなんですね……」
　まゆがムッフッフと竜司を見下ろした。
「先月が先月だったから、こんな事になる気がしたのよね～」
「ハッ！　まゆ先生が俺を待ち望んでいたなんて！　分かりました、式場はどこにしましょう！？」
「人の話をキチンと聞きなさい！　結婚はお　こ　と　わ　り　よ！！」
「どいひー！？」
　叫ぶまゆ、チュドーンと玉砕する竜司。いつものお約束だが四捨五入すればアラフォー……ゲフンゲフン……だいぶ大人の階段を上っているまゆは心なしか肩で息をしているようだ。そろそろ手加減してやれ、竜司君。

「さて、今日は何の日かご存じですか？　そうホワイトデーです！　という訳でこれが俺の気持ちです！」
　元気高校生ピチピチ１０代の竜司は、有り余る体力で無駄な動きをしながらうやうやしくまゆに可愛い袋を差し出した。
「ニャルキー（ホワイトピーチ味）詰め合わせです！」
「おお、３月限定販売のやつ！」
「その通りです！　俺の桃色の想いを受け取って下さい！」
「想いはいらない、ニャルキーだけ寄こしなさい」
　まゆは袋を受け取ると、ペペッと手で竜司の桃色の想いとやらを払いのける。そして袋を開け、早速１粒口に放り込んだ。
「おいし～い！」
「ああそのそっけない態度。でも最高に可愛いです～！」
　拳を握り嬉し悔しがる竜司。そんな彼をまゆはニャルキーをコロコロしながら眺めていたが、ふっと一息つくと鞄から小さな包みを取りだした。
「はい、竜司君。バレンタインのお返し。……キャンディの詰め合わせよ。勿論ニャルキーも入ってるけど」
　え、と竜司が顔を上げる。まゆは困った様に微笑んだ。
「バカな事ばっかやってないで、勉強頑張りなさいよ？」
「―――は、はい！　ありがとうございます！」
　竜司は漢泣きに泣きながら、まゆから包みを受け取る。そしてぐいっと親指で涙を拭うと、キラリとまゆを見た。
「頑張って勉強します！　まゆ先生に楽な暮らしをさせてあげるために！」
「おことわりだって言ってんでしょー！！」
　ギャイギャイといつものようにじゃれ合い、２人は別れる。手を挙げて校舎に入るまゆの背中を見ながら竜司は思っていた。
（何度だって伝えますから、感謝の気持ちと大好きだって気持ちは！）