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【ホワイトデー】学生達のWhite Day!
どこもホワイトデーで賑わっている寝子高だが、一部例外もある。それは、北校舎の３階だ。
１階は学食、２階は購買室や職員室。それらの階は割と生徒達が集まる場所であるが。
本日北校舎３階にある図書室の周囲は静かだった。その図書室に、綾辻 綾花は向かっていた。
今日綾花は本当は図書委員の仕事はなかった。しかし友人に頼まれ、急遽カウンター業務を交代したのだ。
面倒見の良い綾花は別に図書委員の仕事でなくても、自分の出来る事であれば代わってやっただろう。しかし本日の図書委員の仕事は、綾花は自分からお願いしてもいいくらいの気持ちだった。
それは、司書の早川 珪に渡す物があったから。
静かな図書室で。カウンターを整理しながら、綾花はふっと息をついた。
窓の外に目をやれば、たくさんの生徒達が下校していく。やはりホワイトデーだからだろう、図書室の利用は少なかった。
（バレンタインより意識しなくて仕事が出来そうかな……）
先月は、ドキドキだった。そう、先月のこの日、綾花は意を決して珪にチョコを贈ったのだ。
心臓が口から飛び出るかと思ったあの時間。優しく受け取って貰えて、本当に嬉しかった。
だから、今日はちょっと穏やか。ホワイトデーは女の子から贈れば、バレンタインよりは少し愛の意味も薄まるだろう。珪先生と仲良く出来たら、それだけで綾花は嬉しいのだ。
綾花はカウンターの裏手にある自分の鞄に目をやった。そこには、今日珪に渡す物が入っている。
（今すぐにでも渡したいけど……やっぱりきちんとお仕事をしてから）
綾花はそっとカウンターの奥を見る。年度末だから色々まとめるものがあるのだろう、珪が机に向かい、真剣な顔で書類をめくっていた。
珪が司書の仕事を大事にしている事を、綾花は分かっていた。少しでもお手伝い出来るように。綾花は少ない利用者でも、貸出や返却などの対応もしっかりとこなした。
―――カタン。
図書室の扉に『閉室』の札を下げ、綾花はカウンターに戻ってきた。
「お疲れ様、綾辻さん。殆ど手伝えなくて悪かったね」
珪が奥から顔を上げて言った。
「いいえ。今日は利用者も少なかったし、大丈夫ですよ」
「そうかい？ ほんと、申し訳ない」
綾辻さんのお蔭で書類もだいぶ進んだよと言って、珪はうーんと伸びをした。
綾花は良かったですねと微笑みながら、鞄にそっと手を入れた。……やっぱり、ドキドキする。
綾花は深呼吸を１つ。うん、と心を落ち着けると、可愛らしい猫の足跡柄の袋を取りだした。
「珪先生、ホワイトデーだからクッキーを作ってきたんです。食べてくれませんか？」
「え！？」
書類を片付けていた珪が驚いた顔で振り返った。綾花は珪の傍に行き、笑顔でクッキーの入った袋を差し出した。
「昨日の夜に作ったんです。どうぞ」
「あ、ありがとう……」
パチパチと瞬きをしながら珪はクッキーを受け取る。そして小さく「まいったな……」と呟いた。
「え？」
「いや、何でもないよ。バレンタインのチョコも美味しかったけど、これも手作りなんて凄いね。開けてもいいかい？」
「はい、是非！」
嬉しそうに答える綾花の前で、珪は可愛らしい袋を開ける。その目がへえと大きくなった。
「クッキーも猫なんだ。可愛いね」
珪が取りだしたクッキーは可愛らしい猫の形。プレーンとコーヒー、２種類の味の猫が、毛糸玉に見立てたマカダミアナッツを抱えていた。
食べていい？ と珪が目で綾花に訊く。綾花が頬を赤らめて頷くと、珪はさくりとクッキーを口にした。
「うん、美味い。甘すぎないのがいいね。これならいくらでも食べられそうだ」
「良かった……！」
綾花は幸せな気持ちでほっと胸を撫で下ろす。すると、クッキーの袋を閉じた珪が、ポケットから何かを取りだした。
「いや、実はバレンタインのお返しを用意していたんだけど……」
「え、私にですか？！」
驚く綾花に、珪は小さな包みを差し出した。
「マカロンなんだ。けど、また今日も貰っちゃったからお返しにならないな」
珪は困ったように笑いながら頭を掻く。綾花は大きく首を振った。
「いいえ、そんな！ 凄く嬉しいです！」
「貰ってくれるかい？」
「はい！」
２人きりの図書室で。綾花は珪から包みを受け取る。そしてそれを大事に大事に胸に抱いた。
「大切に……大切に食べます！」
「僕もクッキーを大切に食べるよ。……けど美味しいからすぐ無くなっちゃうかな？」
「先生ってば。なら、また作ってきます！」
悪戯っぽく笑う珪に、綾花もくすくす笑いながら答える。その胸は幸せでいっぱいだった。
１階は学食、２階は購買室や職員室。それらの階は割と生徒達が集まる場所であるが。
本日北校舎３階にある図書室の周囲は静かだった。その図書室に、綾辻 綾花は向かっていた。
今日綾花は本当は図書委員の仕事はなかった。しかし友人に頼まれ、急遽カウンター業務を交代したのだ。
面倒見の良い綾花は別に図書委員の仕事でなくても、自分の出来る事であれば代わってやっただろう。しかし本日の図書委員の仕事は、綾花は自分からお願いしてもいいくらいの気持ちだった。
それは、司書の早川 珪に渡す物があったから。
静かな図書室で。カウンターを整理しながら、綾花はふっと息をついた。
窓の外に目をやれば、たくさんの生徒達が下校していく。やはりホワイトデーだからだろう、図書室の利用は少なかった。
（バレンタインより意識しなくて仕事が出来そうかな……）
先月は、ドキドキだった。そう、先月のこの日、綾花は意を決して珪にチョコを贈ったのだ。
心臓が口から飛び出るかと思ったあの時間。優しく受け取って貰えて、本当に嬉しかった。
だから、今日はちょっと穏やか。ホワイトデーは女の子から贈れば、バレンタインよりは少し愛の意味も薄まるだろう。珪先生と仲良く出来たら、それだけで綾花は嬉しいのだ。
綾花はカウンターの裏手にある自分の鞄に目をやった。そこには、今日珪に渡す物が入っている。
（今すぐにでも渡したいけど……やっぱりきちんとお仕事をしてから）
綾花はそっとカウンターの奥を見る。年度末だから色々まとめるものがあるのだろう、珪が机に向かい、真剣な顔で書類をめくっていた。
珪が司書の仕事を大事にしている事を、綾花は分かっていた。少しでもお手伝い出来るように。綾花は少ない利用者でも、貸出や返却などの対応もしっかりとこなした。
―――カタン。
図書室の扉に『閉室』の札を下げ、綾花はカウンターに戻ってきた。
「お疲れ様、綾辻さん。殆ど手伝えなくて悪かったね」
珪が奥から顔を上げて言った。
「いいえ。今日は利用者も少なかったし、大丈夫ですよ」
「そうかい？ ほんと、申し訳ない」
綾辻さんのお蔭で書類もだいぶ進んだよと言って、珪はうーんと伸びをした。
綾花は良かったですねと微笑みながら、鞄にそっと手を入れた。……やっぱり、ドキドキする。
綾花は深呼吸を１つ。うん、と心を落ち着けると、可愛らしい猫の足跡柄の袋を取りだした。
「珪先生、ホワイトデーだからクッキーを作ってきたんです。食べてくれませんか？」
「え！？」
書類を片付けていた珪が驚いた顔で振り返った。綾花は珪の傍に行き、笑顔でクッキーの入った袋を差し出した。
「昨日の夜に作ったんです。どうぞ」
「あ、ありがとう……」
パチパチと瞬きをしながら珪はクッキーを受け取る。そして小さく「まいったな……」と呟いた。
「え？」
「いや、何でもないよ。バレンタインのチョコも美味しかったけど、これも手作りなんて凄いね。開けてもいいかい？」
「はい、是非！」
嬉しそうに答える綾花の前で、珪は可愛らしい袋を開ける。その目がへえと大きくなった。
「クッキーも猫なんだ。可愛いね」
珪が取りだしたクッキーは可愛らしい猫の形。プレーンとコーヒー、２種類の味の猫が、毛糸玉に見立てたマカダミアナッツを抱えていた。
食べていい？ と珪が目で綾花に訊く。綾花が頬を赤らめて頷くと、珪はさくりとクッキーを口にした。
「うん、美味い。甘すぎないのがいいね。これならいくらでも食べられそうだ」
「良かった……！」
綾花は幸せな気持ちでほっと胸を撫で下ろす。すると、クッキーの袋を閉じた珪が、ポケットから何かを取りだした。
「いや、実はバレンタインのお返しを用意していたんだけど……」
「え、私にですか？！」
驚く綾花に、珪は小さな包みを差し出した。
「マカロンなんだ。けど、また今日も貰っちゃったからお返しにならないな」
珪は困ったように笑いながら頭を掻く。綾花は大きく首を振った。
「いいえ、そんな！ 凄く嬉しいです！」
「貰ってくれるかい？」
「はい！」
２人きりの図書室で。綾花は珪から包みを受け取る。そしてそれを大事に大事に胸に抱いた。
「大切に……大切に食べます！」
「僕もクッキーを大切に食べるよ。……けど美味しいからすぐ無くなっちゃうかな？」
「先生ってば。なら、また作ってきます！」
悪戯っぽく笑う珪に、綾花もくすくす笑いながら答える。その胸は幸せでいっぱいだった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2017年03月05日
- 参加申し込みの期限
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- 2017年03月12日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年03月12日 11時00分
