【ホワイトデー】学生達のWhite Day!｜リアクション

【ホワイトデー】学生達のWhite Day!

【ＨＲ】

　今日は野郎が３倍返しをする日だ。
　帰りのＨＲ前のざわざわする時間。担任が遅れているのをいい事に、１年８組の教室はフリーダムだ。伊賀解理も勿論真面目に席などに着かずに、友人の串田美弥子の席の傍にいた。

「『物は質素だけど、俺の想いが込めてあるから』な～んて言って許されるのはイケメンと真のリア充だけで」
　解理はふふんと鼻眼鏡から冷めた目つきでクラスの男子達を見回す。
「それ以外は物理的に３倍の値打ち物を返すべきじゃあないかと思うんだがどうかね？　串田氏」
「え……でも私解理ちゃんに３倍返ししてないよ、ごめん」
　美弥子はへぷしっ！　とくしゃみを１つして、思い切り鼻を啜った。
「いや、女子同士のはいいだろう。というか串田氏からはバレンタインももらっていたのに悪かったな」
　解理は小さな包みを持って頭を軽く下げる。友クッキーだと言ってついさっき美弥子がくれたのだ。
「ううん……友チョコのお返しに……たくさん焼いたから」
　会話の途中で何度もくしゃみを挟みそうになりながら、美弥子が言う。この友人にどんな花粉も入らないマスクをあげればよかったと思いながら解理が尋ねた。
「君も男子にチョコを渡してるなら３倍返しを受ける権利はあるんだ。どう思ってるか率直な意見が聞きたい」
「へ……率直……？　へぷしっ」
　こらえきれなかったくしゃみを１つすると、美弥子は花粉で潤んだ目を解理に向けた。
「私男子には渡してないよ。解理ちゃんこそ権利があるじゃん。どう思ってるんですかぁ？」
　鼻を赤くしながらも首をぐいんと曲げて、インタビュアーの様に美弥子は拳を解理の前に差し出した。
「僕は『彼』が僕のために用意してくれた物なら別に何だって嬉し……僕のことはいいから君の意見をどうぞ！」
「わ～、解理ちゃん可愛い～！　私の意見はねー、私も彼氏が欲しーい！！」
　赤くなってムキになる解理と、キャッキャとはしゃぐ美弥子。そこに担任が入って来て、８組の生徒達は一斉に席に着いた。