【ホワイトデー】学生達のWhite Day!｜リアクション

【ホワイトデー】学生達のWhite Day!

　ホワイトデイ。期待してしまうと重いのだろうか？

　そんな事はないと周囲は言うだろうが、当の乙女達には大問題だ。アクションを起こしている分だけ、何もしないでただワクワクと期待している男子達より複雑な気持ちかもしれない。
　ここにいる桜庭円も揺れ動いている乙女の１人だ。普段は明るく行動的で、ボクシング部の部長まで務める円だが、本日の彼女は思いきり乙女だった。

（チョコ、渡したんだよねぇ）
　円はほうっと赤色の瞳を伏せ、溜息をついた。彼女の溜息の相手は神木直樹。線が細く守ってあげたい系の元引き篭もりだ。
　ごまかしつつとは言え、バレンタインにチョコをあげたのだ。円は今日という日を嫌でも意識をしてしまっていた。
（だけど、期待しすぎても意識過剰だし）
　はぁとまたもや大きな溜息。思考が変な方向に行き始めた気がして、円はぷるぷると首を振った。
　見返りが欲しかったから、渡したわけじゃない。
　ただ、バレンタインという行事に向かった時、心に浮かんだのが直樹の笑顔だっただけで。その自覚した気持ちに素直に従ったら、手作りのチョコを直樹に渡していたのだ。
（そもそも余り重くなりすぎないように渡したから、印象が薄すぎて忘れてしまってる可能性も無くはない）
　そう思えば、あんなに軽く行き過ぎなければ良かったなんて円はちょっと後悔する。顎に手を当て考えてしまった円が、今度はパッと顔を上げた。
（いやでも、プラネタリウムに行けてよかったなぁ）
　味に自信の無かったチョコと一緒に渡した、プラネタリウムのチケット。それを使って直樹と出掛けた事を思い出せば、円の気持ちはほっこりし、自然に笑みが零れる。
（でも、もし実際にお返し貰えるとしたら、ボクはどうしたらいいんだろう？）
　また思考が別の方向に行き、今度は円は不安になった。
　素っ気なくもらうのか？　うーん、それも何だかなぁ。
　笑顔でありがとうでいいのか？　果たしてそんなスマイルがボクに出来るだろうか。

　上へ下へと忙しい円の乙女心。それはボクシングのトレーニングより厳しいのだ。