ネコジマ警察２４時｜リアクション

ネコジマ警察２４時

■こずゆきチェイス
　お待たせしましたネオシンジュク。サイレンとパトランプを高らかに鳴らして走るは壬生由貴奈のパトカーである。
「そこの車両、とまりなさーい！」
　助手席の屋敷野梢はスピーカー用のマイクに向かって呼びかけるが、前方を走る車はまるで止まる気配が無い。
「止まらないと車のボディに傷が付きますよー。十円キズじゃ済みませんよー！　警告しましたからねー！」
　梢はホルスターから銃を抜くと、窓から身を乗り出した。
「止まらないと撃ちますよー。当たるととっても痛いんですよー。デコピン何十発分ですよコノヤロー！　……っと！？」
　前方の車から身を乗り出した男がこちらめがけて銃撃をしかけてきた。
　急いで由貴奈がハンドルをきって射撃がしにくい位置につけた。
「ネオシンジュクはブッソーだねぇこずえちゃん」
「だから私たちがいるんじゃーないですか。ハイウェイ乗りますよ」
　前方の逃走車両が料金所のバーを破壊しながらハイウェイに突入。
　呆然と見送った料金係の男だが、アクセルをめいっぱいに踏み込んだ由貴奈のパトカーを見て慌てて顔を引っ込めた。
　通りすがりに手帳を翳す梢。
「さてさて、どうしようねぇ。弾は沢山積んできてるよぉ？」
　ちらりとバックミラーを見やると、後部座席に鉄球やら鉄アレイやらが大量に積み込まれていた。よくこれで車の速度を保てるものだが、梢も由貴奈もこの辺のことは慣れっこだった。
　助手席上部のバーを掴んで上体を維持しつつ、ピッと指を立てる梢。
「いいんじゃないですかね。警告しましたし」
「それじゃあ」
　カップホルダーに詰め込んだ小さなネコさんクッキーを数枚掴んでくちに放り込む由貴奈。指先をぺろりと舐めると、人差し指を立てて見せた。
　まるで糸で吊ったかのように浮き上がる鉄アレイ。開いた窓から外へ出すと、逃走車両めがけて発射した。
　たちまちヒビの入っていく窓ガラス。
　続けて何発も鉄球を放り込んでいくと、逃走車両は徐々にスピードを緩めていった。誰だってそうだと思うけど、運転中に鉄アレイが大量に車内へ飛び込んできたら運転が鈍るよね。
「壬生先輩、横付けできますー？」
「ちょーっと距離あくよぉ？」
「全然ＯＫ！」
　梢はバーを掴んだまま車体をよじ登り、パトカーのルーフへとしがみついた。
　アクセルを思い切り踏み込んで逃走車両を追い越す由貴奈。その途端、梢は自らを蝶に変えてジャンプ。空中で体勢を整えると、逃走車両のボンネットで変身解除しつつ着地した。
　ビッとピースサイン――の直後に銃をフロントガラスに突きつける。
「ホールドアップですよ。道の端っこにちゃーんと止めるんですよー？」

　やがて車を止めた逃走車両から、二人組の犯人が手を上げながら下りてきた。
　二人そろって銃を向け、目配せしあう梢と由貴奈。
「クッキーパウダーの不法取引の現行犯およびその他諸々の罪でぇ」
「逮捕！」
　がちゃんと手錠をかけて、梢と由貴奈は片手でハイタッチした。

　犯罪渦巻くネオニッポン。
　眠らぬ国の夜は今日もキョーアクな犯罪に満ちている。
　だが恐れることは無い。この国には、日夜働く警察官たちがいるのだから！

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