だんじょん＆にゃらごん｜リアクション

だんじょん＆にゃらごん

■冒険者の酒場
　木の扉を押し開けば、たき火の音が最初に耳についた。
　続いて男たちの賑やかな話し声。注文をとるウェイトレス。
　玉突き台の小気味よい音。
　ブドウ発酵飲料とコルクの混ざった独特な香りを吸い込みながら、恵御納夏朝は酒場の中へと進んだ。
　外の明るさと打って変わって薄暗い、キャンドルによるオレンジ色の灯りに目が慣れてきたならば、客たちの様子がわかるだろう。
　剣を背負った甲冑姿の男や、皮鎧を着込んだ盗賊風の女、ローブを羽織った魔法使い。ここは冒険者の集う酒場なのだ。
　情報交換に来る者、仲間を募る者、時間を潰しに来た者。どれもが冒険者である。
　かくいう夏朝も冒険者。それも仲間を募るためやってきた次第である。
「できれば一人の人がいいな……」
　どこかのパーティーに混ざるよりは、同じように一人で酒場にやってきた冒険者と組んだ方がやりやすい。手頃な相手はいないものかと視線を巡らせたところで、夏朝の視線と足が自然と止まった。
　カウンター席で一人グラスを傾ける逢坂魁の後ろ姿が目にとまったからである。
　線の細い男性で、頭の後ろで結んだ髪が美しい鳥が尾を引いたように伸びている。
　最低限の皮鎧と背負ったボウガンからしておそらくは狩人だろう。
　どう声をかけようか……。
　初対面の会話は割と苦手な夏朝である。最初のフレーズを迷っていると、後ろからばしんと肩を叩かれた。
「やっほ！　仲間捜し？」
　下から覗き込むように首を突っ込んでくる姫神絵梨菜。
　びっくりして跳ねそうになる夏朝を肩にやった手でもっておさえると、絵梨菜はにっこり笑って彼女の前へと回り込んだ。
　スキップみたいな足運びだが、体軸に全くブレがない。
　それに彼女の装備は世にも愉快なビキニアーマー。わざとミニスカートまで装着し、髪はまごうことなきツインテールという実に極まった装いである。
　ここが冒険者の酒場でなかったら職業を疑うところだ。
「私も仲間探してるんだ。一緒に行こっか。そっちのキミも？」
　身体ごとくるりと振り返る絵梨菜。
　自分に話が向いたと気づいて、魁はゆっくりと振り向いた。
「ああ、丁度いい。仲間を探していたところだ。よろしく頼む……と、言いたいんだが」
　手にしたグラスを掲げ、魁は表情を変えずに言った。
「まだ途中なんだ。よかったら、自己紹介も兼ねて一緒にどうだろう」

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