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「ありがとうございました!」
豊田 華露蘿
は深々と頭を下げた。
さっきのお客は野々ののこだった。「バイバーイ!」と手を振ってののこは去った。ちょっと前に事件があったのに、今ではすっかり元気な様子だ。良かったと思う。
「さーて」
客が途絶えたので華露蘿は腕まくりする。そろそろ、あれを並べなくてはなるまい。
「よいしょ」
箱を持ちあげて、カウンターの上で開封した。
「うわ……」
予想よりもなんというか……ぎっしりだ。
舶来物の万年筆を詰めた段ボールだった。モノ自体はいい。文具店員として自信を持って勧められる。書き味はさらさらと極上で、握った具合もうっとりするくらいだ。ペン先とカートリッジを交換していけば、十年二十年、いやもっと長く使える逸品だと太鼓判を押せる。
けれど、高いのだ。とても。
――こんな高価なものを学生さんに売りつけるのも、気が引けるなあ……。
店の来客で一番多いのはやはり学生だ。どうあっても学生には背伸びプライスであろう。以前、思い切ったディスカウントを店長に提案したことがあるのだが、これが限界、と逆に泣きつかれた。
目の前には恐怖の決算期が近づいている。デッドラインまでに単価が高い文房具の在庫をさばけないと、次のボーナスが随分渋くなることは明白だった。
ピンチこそチャンスと考えるべし、華露蘿はここで、年度末という時期ならではの売り方を考えついた。
今は出会いと別れの季節。
だから一生モノの万年筆、というポイントを強調してお勧めしよう!
そこに、ボワっとボリューミーなワカメみたいな髪型の少年が来店した。何度か見かけたことがある。割とハンサムといえるが、変わったヘアスタイルとなんだかフワフワした言動のおかげで、ちょっと別世界の住人のような印象を受ける子だ。(作者註:鷹取洋二である)
「いらっしゃいませ、なにかお探しですかー」
いつも明るい華露蘿だが、今回はさらに明るめに呼びかけた。
「んー……なんとなく、ペンとか」
「それはそれは」
普段なら「このボールペン、手頃で書き心地もいいよ」なんて言って『ストリームアタック』(当店の売れ筋商品。安価でコストパフォーマンスも最強)を勧める華露蘿だが、ちょっと攻め方を変えてみる。
「今日はいいものがあるんだよねえ」
「はっはっは、いいものとは?」
お、興味もったみたい。
いきなり本題に行かない。まず、やや高めの国産品万年筆を華露蘿は手にした。
「万年筆! 使い捨てペンばかりじゃ物足りなくない? このあたりのモデルなら、学生さんのお小遣いでも手が届くんじゃないかな」
多少値は張るが、悩まず買える価格帯のものだ。
「なるほど」
「万年筆の世界は、大手メーカーのものから手づくりの品まで幅広いんだよ? のぞいてみる? 万年筆の世界?」
華露蘿は胸を張ってじわじわと少年に迫った。少年のほうは、なんだか照れたように視線を下げている。その視線の先に、さっと彼女はラインナップを広げた。
そこから華露蘿の営業トークが炸裂する。口調が丁寧になったり会話調になったりするのは、彼女も乗ってきている証拠である。
「見て見て。こちらなんて、一流の職人が心を込めて作り出す逸品だし、こちらは螺鈿細工を施した銘品です。こちらなんかは、かの文豪も愛した舶来メーカーの限定モデルですよー。銀製のものまでありますとも!」
しかしこのあたりは事実上『展示用』の品であり、弩級価格なので推薦はしない。少年が顔を上げられないのは万年筆に魂が惹かれたからと判断して、ここで華露蘿は畳みかける。
「その舶来メーカーの最新モデルが、こちらになります!」
ここで彼女が出したのが、本命の在庫過多品であった。
「これを知ったらもう安物には戻れませんよ。大切な人に贈るなら、このあたりなんて喜ばれると思います」
営業スマイル強化。試し書き用に一本握らせて、その宣伝文句が嘘でないこともアピールした。
「大切な……ですか」
ワカメ頭の少年は、すっと綺麗な目をして言ったのである。
「一本下さい。贈呈用のラッピングをお願いします」
「ありがとうございます! 宛名はいかがいたしましょう?」
「はっはっは、『海原茂様』で」
「了解。『はっはっは、うなばら』……」
「いえ、『はっはっは』は書かなくていいです」
さっそく書き始める華露蘿に、思わず少年は突っ込みを入れるのだった。
なおこのとき華露蘿は、ちょっと前に「空調が効き過ぎ」と胸元のボタンをひとつ外していたことなど記憶の片隅にも残っていなかった。
洋二を送り出すと、カウンターに肘を置いて華露蘿は鼻歌を歌っていた。
実際、とてもいい万年筆なので、少年の先輩という『海原様』は喜ぶだろうし、贈った少年も感謝されて喜ぶだろう。そして華露蘿も喜んでいる。みんなハッピーだ。
――ハッピーといえば。
転校する自分を寂しそうに見送ってくれた、小学校時代の同級生を華露蘿は思い出す。先日の洞窟の件があって以来、ことあるごとに思い出してしまうのだ。
泰子ちゃんどうしてるかな――。
泰子と遊んでいるとき、華露蘿は本当にハッピーだった。彼女が今でも笑っていてくれたらいいのに、と願う。
そして泰子の笑顔は、『プロムナード』の
泰葉
に、似ていると思えてならないのだ。
来店者があったので慌てて華露蘿は身を起こした。
「いらっしゃいま……」
「来ちゃった」
にこ、と小さな、どこか寂しげな笑みを浮かべて泰葉が立っていた。
これに華露蘿は気が動転してしまって、
「い、今は大切な方への贈り物として、高級万年筆をお勧めしておりますっ!」
思わず裏声気味に営業トークを口走ってしまう。
すると泰葉は万年筆を見もせずに、
「買います」
と言った。
「あの、その……メッセージカードは添えられますか? 相手のお名前とか……」
「お願いするわ」
と近づいて来た夜の蝶、泰葉の眩しいこと。決して超美人というわけではないのに、トップキャバ嬢のオーラというのか、泰葉にはその仕草ひとつとっても、見とれてしまうような艶やかな魅力があった。
「宛名は『豊田華露蘿』様、贈り主は……『古市泰子(ふるいち・やすこ)』で」
泰葉は華露蘿様に万年筆を手渡し、
「このあと、同伴(=同伴出勤)の約束があるから」
と告げると、微笑と香りだけを残して姿を消した。
この日結局、店の在庫は二本減ったことになる。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
コメディ
定員
30人
参加キャラクター数
30人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年02月27日
参加申し込みの期限
2017年03月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年03月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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