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昼と夜の狭間の幽明が、均衡を喪って昏みに落ちゆく頃合い。
灯りを点けぬ音楽室に、グランドピアノの鍵盤がほの白い光を放っている。
そっと手を置く。人差し指を。
ピアノの前に座ったまま
神嶋 征一郎
は、まだ来訪者に眼を向けない。
「……ようやくか」
待ちくたびれたぜ、と征一郎は告げた。
言うなり椅子を回して彼は、来訪者……
篠崎 響也
と向き合った。
征一郎は脚を組む。
膝に手を置く。
そして凝視する。響也の顔を。値踏みするように。魂まで射貫くような目で。
柄にもないけど、緊張するな――というのが、響也が感じた最初の感情だった。
先に征一郎が音楽室にいたことに驚いた。そしてこんな、返答次第では殺す、というような顔を見せてきたことにも驚いた。
しかし気圧されてばかりというのは自分の好みではない、と思い直す。いくら先輩後輩であろうと音楽家同士、しかも同じヴァイオリニストだ。
だから対等だ。少なくとも気持ちの上では。
萎縮する必要はない、虚勢であっても胸を張れ、そう自分に言い聞かせる。
「悪い」
響也は軽く謝した。そういえば、と続けて、
「お前が俺にくれた曲……『深海』。だいぶ練習したんだ。聴いてくれないか。いや、聴いてほしいんだ……お前に」
何を今更、と言うかのように征一郎は顎をしゃくってみせた。
言わずもがなだろう。そのために征一郎はここで待っていたのだから。
「練習の成果はてめぇの音でわかる。期待に応えてみせろ」
すでに冷え切っていた春宵の空気がこの一言でさらに張りつめ、触れなば切れんほどの鋭利さを帯びた。
聞こえる音は互いの息づかいのみ。
それ以外の音はすべて、得体の知れぬ静寂に飲み込まれていた。
けれど響也の頬には薄笑みがあった。自分はいま、最良の聴き手を前にしていると確信していたから。
「ありがとう」
心から言った。
期待してくれて、この機会を与えてくれて、そのことに感謝したい。
響也はヴァイオリンをケースから取り出し、そっと構えた。
ひとつ深呼吸すると、冷たい夜気が肺に流れ込んでくるような気持ちになる。
この楽曲を何度も何度も、それこそ、血が滲むほど練習してきた。単に上手に弾きこなすというレベルではない。魂の波長を合わせ楽曲と一体となれるよう、それこそ夢の中ですら奏でてきた。これまで響也の生涯で、これほど入れ込んだ曲はなかったと断言できるほどに。
意識を集中させ雑念を振り払うと、響也は弓を滑らせ『深海』へと漕ぎ出した。
凄まじく弾き続けた結果、響也は『深海』に譜面を超えた自分なりの解釈を見出していた。それを織りこむ。
テンポは、やや落とし目に、深い深い海の底のような静けさを胸に感じながら、壊れ物を扱うように丁寧に弦を震わせる。
――けどこの曲はそれだけじゃない。
それだけじゃ、理解したことにはならない。
序盤が終わってからが響也の本領の見せ所だ。眼差しが一気に力をはらんだ。
静かな曲だから、スローテンポだからといって、それが激しくないとなぜ言えよう。
楽曲の静けさの内側に秘められた、溶岩のような熱さを響也は表現する。
高めよ、情熱を。
轟かせよ、感情を。
我が身を引きちぎらんばかりの、この、想いを。
これなんだろう? なあ?
楽曲の表現のみで響也は征一郎に話しかけていた。音楽家に言葉は必要ない。
神嶋が俺のために作ってくれた曲、きっとこの曲は俺なんだろう?
今の自分を、この曲で表現しろと、
俺という存在のすべてを語りきれと、
なぁ神嶋……お前は、俺にそう求めているんだろう?
自分という存在のすべてを賭して、響也はこの難曲を奏できった。
まったくミスはなかった。
やりきった――響也はそんな気分だった。数えきれぬほどこなした練習のどのときよりも巧くできたと思う。いつの間にか汗びっしょりになってもいた。体から蒸気がたちのぼり、天井へ消えて行くのが見える気がする。
征一郎は、手を叩いた。拍手だ。
響也の解釈は気に入った。
征一郎は彼の演奏を聴きながら、曲を作ったときの気持ちを回想していた。文字通り、音楽の深海に溺れてもいた。深く青い色、ついで、マントルのような赤い色が見えたようにも思う。
響也がヴァイオリンひとつで、響也自身を表現せんとしたことも十分理解していた。
だが征一郎が第一声を発するのを制したのは、他ならぬ響也の声だった。
「……俺さ、音楽しかないと思ってたんだ」
征一郎は口をつぐみ、言ってみろ、というように先を促した。
「でもお前や友達や恋人や、みんなと出会って少しだけ変わった気がするんだ……音楽は俺にとってなくてはならないものだけど、それ以外にも大切な、なくてはならないものが増えた」
響也の凛とした目には、力強さとともに柔和さがある。怒りとか喜びとか、そういった感情を超越したような、強いて言えば慈愛に近い色が。
「神嶋、そのひとつは間違いなくお前だよ」
響也は手を伸ばして征一郎を指さしたわけではない。だがしっかりと、突き刺さるものを征一郎は覚えた。
「神嶋、お前は、俺より圧倒的な技量を持っていて、その演奏は俺を魅了する。お前に届きたくて、負けたくなくて、今も俺は絶えずお前を追い続けている」
そして響也は慈愛の目をしたまま、はっきりとこう締めくくったのである。
「でも絶対に俺はお前を超えてみせる。……これはお前への、宣戦布告でもあるから」
言うようになったものだ――征一郎は小癪に思う。だがその一方で、不思議な愉快さも覚えている。
響也の『宣戦布告』には敢えて触れず、まず征一郎は感想を述べた。
「てめぇがここまでやるとはな。……否、お前ならやると思っていた。確かに、お前にしか出せない音だったし、弾いてくれて感謝する……満点じゃねぇが合格点だ」
だが、と一言加えずにはおれない。求める完璧には、隔たること大きいと征一郎は思っているから。複数のポイントを指摘した。
「……この小節でもう少しヴィブラートをかけるともっといい。後ここのデタッシェが甘い」
いずれも並の教師であれば見落とす程度のポイントだ。されど征一郎にとっては、ノイズのように耳障りな部分だった。
そう、征一郎からすれば、響也の全力は、まだまだ物足りないものなのである。
「それから」
と言ったとき、征一郎は無意識のうちに立ち上がっていた。
「……お前、自分の背中をどこまで捉えてると思っている」
高い目線から響也を見おろすように、
「そう簡単には掴ませねぇし追い越させると思うな」
きっぱりと、疑念を挟む余地がないほどに言い切った。
「自分も……また変化している。前とは違う」
響也に鉄槌を振り下ろした、そんな気がする。
だがそれで折れるような男に、征一郎が楽曲を提供するはずはないのだ。
ただ一言征一郎は、こう付け加えるのを忘れなかった。
「篠崎のそのたゆまぬ努力には敬意を払ってやるが」
――さすがに、言うよな……。
きつい一発だ。響也は自信がぐらつくのを覚えていた。言われるまで気がつかなかったが、指摘されたポイントはすべて痛すぎるほどに痛いものだった。序の口扱いされたあたりも含めて、どうにも思考が渦を巻いてしまう。
けれどもやはり響也に後悔はないのだ。現在自分が持っているすべてを出し切ったという自負があるから。後はもっと高めるだけだ。
「ありがとう」
改めてもう一度、響也は感謝の言葉を口にした。
このとき、
暗い音楽室だし一瞬だったので見間違いかもしれないが――響也は見た気がした。
思わず訊いてしまう。
「神嶋、いま、笑った?」
口に微笑をたたえたように見えたのだ。あの征一郎が。
「……笑ってねぇ」
征一郎は否定するも、もしかしたら、という己への疑念は拭えなかった。
短い時間とはいえ我を忘れてしまった可能性はある。
篠崎のためにと送った自作曲を、彼が懸命に、ある意味自分の予想以上に弾きこなし、表現し、その上身の程知らずにも「お前を超えてみせる」とまで言ってのけたことに、なんとも言いがたい感情、強いて言えば嬉しさに近いものを、征一郎が感じてしまったのは事実なのだから。
「だからいや、笑ってたよ」
と言う響也は無邪気に微笑んでいる。
「違う笑ってねぇ」
きっぱりと否定すると、征一郎は響也から視線を外してピアノの蓋を下ろしたのである。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
コメディ
定員
30人
参加キャラクター数
30人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年02月27日
参加申し込みの期限
2017年03月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年03月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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