春色タペストリー｜リアクション

春色タペストリー

　四野辺蘭月は帰路をゆく。
　できるだけ顔を上げたくなかった。なにか目にするたび、いちいちカレシとの思い出が蘇ってくるから。
　あの交差点で彼が笑った。あの時計台のところで待ち合わせをした。あの歩道橋ではしゃぎあい追いかけあった……。まるで街のすべてが、思い出のパッチワークできているような気分だ。
　行き倒れそうな勢いだったがなんとか自宅までたどりつき、リボンと眼鏡を部屋の机の上に置くと、敷きっぱなしの布団にぼふっと倒れ込んだ。
　顔をうずめたまま、布団に吸い込まれるような声でつぶやく。
「これからはもう、『元カレ』やんね。バイバイ」
　ポケットからスマホと取り出すと、蘭月はその壁紙画像を、カレシとのツーショットからありきたりの模様に変更した。
　バイバイ。
　もう一度言った。

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