this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
春色タペストリー
<< もどる
1
…
22
23
24
25
26
…
35
つぎへ >>
花々が芽吹く春。桜の気配も近い春。
素肌に纏う空気に春の香気が感じられて、気持ちが華やぐような時期なのに、彼女の心は沈み切っている。
鬱々として楽しまない、という表現を擬人化したかのように。
羽生 碧南
は一枚の紙を手に、肩を震わせているのだった。
彼女を見ているのは胸像だけだ。これは初代理事長・桜栄万吉氏のものだという。校内のベンチに座って、碧南は風に吹かれているのだった。
紙は碧南に厳しい現実を突きつけていた。これこそがすべての元凶だ。
それは、期末試験の結果がもたらした召喚通知、別の言い方をするなら『補習への呼び出し』、追試も決定という冷酷な紙切れだった。
「ううー」
膝に突っ伏して泣きたい。泣いたところでどうしようもないから、首をガックリとうなだれるだけだけど。
主要五科目は良かった。何しろ不得手な数学でまさかの90点越えしたのだから。その他の科目も悪くなかった。大変に快調だったのである。
……ただひとつ、音楽が赤点(
28点
)なのを除けば。
音楽を聴くことは嫌いじゃないしむしろ好みだ。歌だってそう悪くはないほうのはず。それなのに、ああ、それなのに、碧南にとって音楽の実技とペーパーテストは、なぜにこうして難解きわまりないのか。二学期の中間でも彼女は音楽で盛大にコケた。しかしこのときは、記号を丸暗記するなどして期末でばっちり挽回したのだ。
それで油断したのだろうか? 学年末では結果はまたしても、惨敗。
繰り返す。
28点
だ。
赤点なので赤文字……碧南にとってはまるで血文字だ。オーマイゴッド。
春なのに、もうじき春休みなのに。
春休みは買ったばかりの新作乙女ゲー(『幻想恋鎖』〈初回特典付き限定バージョン〉)をやり込む気満々だったのに。攻略キャラの順番も、内心密かに決めていたのに。
でもってバスケにも打ち込もうと思っていたのに……! 目指せ全国大会とばかりに……!
あまりのことにため息つく気力もない。どっと背もたれに体を預け、グレーの春休みを思って碧南は放熱中のロースペックPCのように放心していた。
「……くん」
誰かに話しかけられた、と思う。
顔を向けると、そこに立っていたのは
鷹取 洋二
だった。いつも通りの不思議なセンスの髪型で、いつも通りの、なんだかふわりとした優しげな笑みをたたえて。
「羽生くん、ひなたぼっこかい?」
笑って誤魔化してもよかった。けれど、碧南はどうしても、洋二に虚勢を張る気にはなれなかった。
「……はぁ。そんな気楽なものではないです」
「そうかい……」
洋二は隣に腰を下ろす。
「僕は、ひなたぼっこでね」
午後の陽を浴びて、洋二は目を細めた。
「僕で良ければ、話くらい聞くよ」
「いいんですか?」
「光合成しながらでよければ、だけどね」
ふっと洋二は微笑む。その冗談に碧南の口元も弛んでいた。こういう風に、押しつけがましくないところが彼らしい。
碧南は試験の結果について話をした。音楽だけ惨敗ということも含めてすべて。
うんうん、そうか、と静かに聞いたが、洋二はすぐに回答をすることがなかった。かわりに彼は、〈初代理事長・桜栄万吉氏〉の胸像を指さして、
「らくがお仮面事件、って知ってるかい?」
「ええと、去年の春のことでしたっけ? あの胸像に落書きをしようとする怪人を、みんなでとっちめたという……まだ入学式前のオリエンテーションの時期のことなんて、私よく知らないんですけど」
「そうそう、それだよ。その怪人って、僕だったらしいんだよねえ」
「えっ!」
碧南は洋二を見た。彼はごく平然としている。
「催眠術か自己催眠かなにかで、ちょっと変になっちゃって、あれをやらかした……って言われてる。全然覚えてないんで、いまだ真相は藪の中だけどね。ま、それから何も実害はないし、なんとなくそのままになってる」
過ぎた話さ、と洋二は笑った。
「そういうこともあってねえ、僕は芸術科の美術専攻だ、って思われがちなんだよ。実際美術部にも所属してるしさ。でも本当は」
と言って、洋二は碧南に言ったのだ。
「専攻は音楽で、バイオリン奏者なんだよ」
「そう、でしたね……」
言われてみれば、という感じだ。自分は体育科なので、芸術科の話はいまひとつピンとこない。
はっはっは、と洋二は笑った。
「まだわからないかい? 羽生くん、きみの追試の勉強、僕ならたぶん手伝える、ってことだよ」
ええっ! と碧南は驚きのあまりベンチから弾かれたように立ち上がっていた。
「い、いけませんよそんな……私なんかのために……申し訳ないです!」
「気にしなくていいよ。こんな僕でも誰かの役に立てることがあるかと思うと、割と……いや、けっこう、嬉しいんだ」
そうと決まれば善は急げだ、と言って洋二も立ち上がったのである。
「まだ四時前だから美術部の部室は使っても大丈夫だよ。たぶん誰もいないし、誰かいたって、部活の時間までは他のことに使っても構わないさ。実際、試験前は勉強に使ってる子も多いくらいで……さあ、行こう」
「本当にいいんですか……あの……私なんかのために……」
「気にしない気にしない。羽生くんにはハロウィンのときとかもお世話になったしねえ。まあ絶対合格とまではいかずとも、多少はコツとか身につけられると思うよ」
「じゃあお言葉に甘えて……」
碧南は洋二のあとをついていく。彼のほうが背が低いはずなのに、とても大きく見えた。
美術室は無人だった。どこか静謐な絵の具や石膏の匂いの中で、洋二はつきっきりで、碧南に音楽の指導をしてくれたのだった。
「……なるほど、これはね、理屈を考えるより丸暗記したほうが早いよ。何を隠そう僕もそうなんだ。語呂合わせで……」
いつもフワフワしている洋二が、このときばかりは真剣に、そしてわかりやすく音楽について語っていた。さすがは音楽専攻、と思うと同時に、彼の知らない側面を知ったようにも碧南は思った。
追試はどうにか頑張れそう、そんな自信がわいてくる。
それと同時に、美術室にふたりきり、手を伸ばせば彼に触れられる距離というこの状況に、碧南の胸はなにか、説明のつかない感情に焦がれてくるのだった。
――なぜだろう、この気持ちは……単に気の合う人と一緒にいる安心感以上の、この想いは……。
頬が熱くなって碧南はうつむいていた。
気づいた。
気づいてしまった。
――私……先輩に恋してる……恋、しちゃってる……。
胸中でつぶやく。
<< もどる
1
…
22
23
24
25
26
…
35
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
春色タペストリー
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
コメディ
定員
30人
参加キャラクター数
30人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年02月27日
参加申し込みの期限
2017年03月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年03月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!