春色タペストリー｜リアクション

春色タペストリー

　下着専門店を出てからもシーサイドタウン内をぶらぶらし、両手に紙袋を提げて黒依アリーセは帰路についた。
　まさか胡乱路秘子と会えるとは思ってもみなかった。秘子はとてもフレンドリーで、短い時間とはいえ、わきあいあいと楽しい時間をすごしたものだ。素敵な下着もしっかり買えたし。
　気になる出会いといえば『ナターシャ』と呼ばれていた長身の女性のことも印象に残っている。
　こうした様々な場面がもたらしたのだろう、このとき唐突に、アリーセの頭に歌詞のピースが降りて来た。
　このところずっと頭を悩ませていた歌詞がやっとできあがったのだ。
　――やっと出来そう。
　しかし卒業式用の曲としては、これだと少し暗いかもしれない。それならそれで書き直せばいい。この歌はこの歌で取っておこう。タイトルは『無題』、アリーセはこれを口ずさみながら歩くのである。

　ずっと　いつまでも　永遠に
　綺麗な嘘をつき続ける　ソレは無いと知っているのに
　ずっと　いつまでも　永遠に
　同じ嘘をつき続ける　ソレの影を探し求めて

　好きな自分を　好きと言ってくれた君と
　嫌いな自分も　好きと言ってくれた君と

　ずっと　いつまでも　永遠に
　言葉通りであれと願った　道を別つと知っているのに

　風舞う桜　君の肩に　初めて交わした　言葉を花へ
　夜空を見上げ　背中合わす　頬を伝った　涙を星へ
　紅く染まった　葉を貼り合わせ　描いた未来　希望を空へ
　雪が残した　二人の跡　繋いだ指先　絆を大地へ

　同じ場所で　過ごせなくても　二人の想い　通じていれば
　共に過ごした　時間が繋ぐ　二人の心　離れていても

　ずっと　いつまでも　永遠に
　綺麗な殻を満たしていく　言葉　涙　希望　絆
　ずっと　いつまでも　永遠に
　同じ花　同じ星　二人を繋ぐ　空と大地が

　生まれた宝石　胸に感じる　無理に笑って　アナタに手を振る