空想ラストバトル！？｜リアクション

空想ラストバトル！？

　神子ユキノの前に壬生由貴奈が庇い立つ中、
「これ以上、珪先生にいけないことはさせません！」
　黒の翼の機動力を生かし由貴奈達の頭上へと移動していた綾辻綾花が、凛として声を上げた。
　綾花が広げた手のひらから、渦を巻きながら水流が発生する。
（珪先生を攻撃するのは辛いですが……それでも）
　大切な人を助ける為に、胸の痛みを堪えて想像の翼を広げる綾花。
　イメージは、風に乗ってケイを飲み込む濁流だ。
（怪我をさせるんじゃなくて、炎ごと包み込むような……）
　そんな想像の下、綾花が生み出した水の流れが大蛇のように唸り始める。
　それが己の野望を害するものと見て取って、ケイは一旦魔法を解除すると《炎の壁》を盾のように展開した。
　――しかし。
「なっ……！？」
　綾花が操る水は、ケイの頭上を越えて半球状のドームの壁を目指す。
　そうして、ケイが対応する間もなしに、そこに反射して大波のようにケイを飲み込んだ。
　――挑戦者・綾辻綾花、想像力熟成完了しました。
　機械的な声が、水音に混じってドーム内に響き渡る。
（角度の計算、上手く行きました……珪、先生……）
　胸の内に呟いて――それきり、綾花の意識は途絶えた。
　黒い翼が消え、綾花の身体はふわりと床に落ちる。
　そして――むくり、と身を起こした綾花の目からは、一切の表情が失われていた。
　げほ、と咳込んで、床の上にくずおれていたケイがようやっと顔を上げる。
　その双眸は、ぎらぎらと煌めいていた。
「っはは……いいぞ、アヤカ。僕の手足となって、あの女を……」
「誰を、どうするって？」
　ケイが、態勢を立て直す間もなかった。
「え……」
　気付くとケイは、金属の弾に四方八方を囲まれていたのだから。

「――チェックメイト、決めさせてもらうよぉ」
　ヒュン、と風を切る音を立てて、全ての弾がケイに命中する。
　声を上げることもなしに、ぐらり、ケイは床の上に崩れ落ちた。
　途端――全てのステンドグラスが、鮮やかに煌めき始める。
「う……あ、れ……？」
　綾花が、額を押さえて呻いた。
　眼差しには、確かな光が戻っている。
「私、は……？」
「さっきの技で、想像力を使い過ぎちゃったんだと思うよぉ」
　大技だったもんねぇ、と口元を緩める由貴奈。
　倒れ伏すケイの姿を見留めて、綾花はハッとして邪神官だった男の元へと駆け寄った。
「珪先生！」
「ん……」
　ケイ――早川先生が目を開こうとした、その瞬間。
　辺りは、目も開けていられないほどの赤い輝きに飲み込まれた。

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