ふと気がつくと、
壬生 由貴奈は煌めきの中に立っていた。
「これは……ステンドグラス?」
煌めきの正体は、由貴奈が見留めた通り、美しく荘厳なステンドグラスだった。
色味の統一されたそれは、半球状のドームを構成している。
「うーん、今度は一体何事だろうねぇ」
ドームの中で由貴奈が思った、その時。
『――ようこそ、人間の皆様!』
朗々とした声が、ドーム内に響き渡った。
ドームの中心に、いつの間にか一人の悪魔が立っている。
男の悪魔だ。整ったかんばせには、優美な笑みが乗っていた。
『ワタクシの名前はブブ・ベルゼ。魔界の、しがない商人でございます』
背を彩る漆黒の羽を揺らしながら、恭しく、一礼するベルゼ。
その姿には、時折ノイズのようなものが走っていた。
恐らく、ここにいる彼は本体ではないのだろう。
『さあ、本題に入りましょう。皆様は、ワタクシの次の商品に選ばれました』
自分が次に商うのは、
『人間の想像力』だとベルゼは言った。
曰く、このドームには想像力を熟成させる力があるという。
『熟成された想像力を抽出すれば、良質の商品の完成です。ですが……』
それだけでは面白くないと、ベルゼは口元に弧を描く。
『皆様には、《試練の物語》に挑戦していただきます』
――それをクリアすれば、ワタクシは皆様を必ず解放いたしましょう。
そう言い切って、ベルゼは少し笑った。
『実のところ、この挑戦を、魔界の紳士淑女の皆様がご覧になっているのです』
つまり、ドームの中の出来事は、悪魔達の為の見世物になっているのだ。
『さて、この挑戦のルールですが……』
つらつらと、ベルゼは悠然として命懸けのゲームについて説明していく。
そして最後に、こう締め括った。
『さあ、宴の始まりです! 願わくばこの宴が、黒い翼の君よりも我が心を湧き立たせるものであるよう!』
もう一度礼をしたベルゼの姿がノイズに紛れて消える。
途端、ドームの中に険呑な空気が満ち満ちた。
「さて……それじゃあ、どう動こうか?」
お世話になっております、巴めろと申します。
このページを開いてくださってありがとうございます!
壬生 由貴奈さん、ガイドへの登場誠にありがとうございました!
なお、もしこのシナリオにご参加いただける場合ですが、
ガイドは一例ですのでご自由にアクションをかけてくださいませ。
以下、本シナリオの詳細な説明になります。
このシナリオの概要
悪魔ブブ・ベルゼによって、半球状の謎のドームの中に召喚されてしまったPC様達。
ステンドグラスが妖しくも美しいドームには『想像力を熟成させる』力があるらしく、
ベルゼはPC様達の想像力を熟成させ、それを抽出して魔界で売り捌くつもりのようです。
しかし、同時に、ドーム内での出来事は悪魔達への見世物となっており、
見世物をより盛り上げてお客である悪魔達を満足させる為に、
3つあるドームの全てにそれぞれ用意されている《試練の物語》をPC様方がクリアすれば、
該当のドーム内にいた人物は全員無事寝子島へと帰還できる、
というルールをベルゼは設けていて、このルールは必ず守られます。
なお、召喚前にいた場所に関わらず、寝子島帰還時には九夜山にとばされます。
後述のルールに従って《試練の物語》をクリアして、
ベルゼの魔の手から逃れ寝子島へと無事帰還するのが本シナリオの一応の目的です。
《試練の物語》について
リアクションは、《試練の物語》開始直前からのスタートです。
全てのドーム内には、倒すべき《敵》と守るべき《味方》の役目を持つNPCがいます。
NPC達はベルゼの術で自分のことを用意された役割通りの人物だと思い込んでいます。
説得などで元の状態に戻すことはできません。
《味方》NPCを倒されることなく《敵》NPCを倒せば、《試練の物語》クリアです。
但し、今回の戦いは想像力を駆使した特殊なものとなります。
ドームの中では、想像力が文字通りの『力』になります。
「俺は手に光の剣を持っている!」と思えば、PC様の手の中に光の剣が現れます。
「私は小さな火球を飛ばす魔法を使える!」と思えば使えるようになります。
上述のように想像力で生み出したものだけが、《敵》にダメージを与え得ます。
但し、想像力を使いすぎると、熟成された想像力に心を食べられて、
自分は《敵》の忠実な配下であると思い込み、《敵》の手駒として行動することになります。
(その際の行動は、指定できません)
想像力は基本的に3回使用可能ですが、
「光の剣で、敵に大ダメージを与え得る必殺技を放つ!」のように、
あまりにも強力な力を使えば、3回分全ての想像力を一気に使い切ってしまうこともあり得ます。
同様に、程度の大きな力を使うのに2回分の想像力を用いてしまう、ということも起こります。
3回分の想像力を全て使い切った段階で、PC様は想像力に心を食べられてしまいます。
また、《敵》及び配下化したPC様は無制限に想像力を使えます。
なお、極端な例ですが、「敵を一撃で倒す!」のようなチートすぎる想像など、
問題があると判断された想像力の行使は、調整の対象となります。
今回の戦いでは、《敵》には物理攻撃を始めとする通常の攻撃は効きません。
また、ドーム内に武器等のアイテムを持ち込むことはできず、
ろっこんも、条件を満たせば発動可能ですが、直接ダメージを与えることはできません。
ろっこんを用いて敵を混乱させ、その隙を突いて想像力で攻撃、は可能です。
基本的にドーム内に障害物はありませんが、
「ここに柱がある!」など、想像力で生み出すことができます。(想像力を使用します)
ろっこんや想像力を用いても、ドーム自体を破壊することはできません。
《試練の物語》について2
《試練の物語》はドーム毎に違ったものが用意されています。
下記からPC様がどのドームに召喚されたかをひとつを選んで、
必ず「キャラクターの行動」欄の冒頭に【1】【2】【3】と記入してください。
自身が召喚されたドームの《試練の物語》の内容は、勝手に頭に流れ込んできます。
なお、PC様は無作為にいずれかのドームに召喚されたものとして扱われます。
【1】緑の試練 ~囚われの姫君を救え~
緑色基調のステンドグラスドームの中。
囚われたアオイ姫を救い出すために、PC様方は暗黒騎士イッセンに戦いを挑みます。
《味方》のアオイ姫を倒れさせることなく、《敵》のイッセンを倒せばクリアとなります。
アオイ姫は、癒しの力で後方からイッセンを回復することを強いられており、
癒しの力を使う度に衰弱していくので注意が必要です。
イッセンは闇の剣による攻撃の他、《風の刃》《風の壁》の2種の魔法を使います。
【2】青の試練 ~姫騎士の大冒険~
青色基調のステンドグラスドームの中。
自称姫騎士のおてんば姫ウイは、遂に悪の大魔女タカコの元へと辿り着きました。
《味方》のウイを倒れさせることなく、《敵》のタカコを倒せばクリアとなります。
ウイはレイピアを装備しているものの殆ど戦う力がないのですが、
本人は自信満々で《敵》に向かっていってしまうので、放っておくと狙われる確率も高くなります。
タカコは《氷の矢》《氷の壁》の2種の魔法を使う他、
PC様方に群がり動きを阻害しようとする使い魔ちびタイヨウ達をわちゃわちゃ召喚します。
【3】赤の試練 ~邪神の復活を阻止せよ~
赤色基調のステンドグラスドームの中。
神子ユキノを手中に収めた邪神官ケイを、邪神復活の儀式が終わる前に倒しましょう。
《味方》のユキノを倒れさせることなく、《敵》のケイを倒せばクリアとなります。
時間の経過と共にユキノの神子の力によって邪神の復活が近づき、
戦いが長引くほどケイの力は強まって、最終的には一撃でPC様方を全滅に追い込めるほどになります。
ケイは《炎の球》《炎の壁》の2種の魔法を使うことに加え、
ごく短い詠唱時間で自身に回復魔法を掛けることもできます。
戦闘後について
《試練の物語》を無事クリアできたドーム内にいたPC様及びNPCは、
全員九夜山の開けた場所へと、ダメージがゼロに戻った状態で転送されます。
NPC達は、ドームでの出来事をごくぼんやりとしか覚えていません。
全ての《試練の物語》がクリアされた場合のみ、
九夜山に今回の事件の元凶であるブブ・ベルゼの幻影が現れます。
攻撃などは通りませんが、会話などのコミュニケーションは可能です。
《試練の物語》をクリアできなかったドームがある場合は、
そのドーム内にいた全ての人物は皆、ベルゼに想像力を奪われてしまいます。
後日何らかの救済シナリオが用意されますが、
時空の歪みにより、該当のPC様方も他のシナリオには問題なくご参加いただけます。
それでは、皆様の素敵な想像力バトルを楽しみにしております。
ご縁がありましたら何卒よろしくお願いいたします!