第一回、思いつきの釣り大会！｜リアクション

第一回、思いつきの釣り大会！

【裏読みも賭けも趣味では無いこと】

　さて、優が公園の方へまた戻ろうとすると、わいのわいのと声が聞こえてきた。
　どうやら、理事長と誰かが会話をしているようだ。優はそちら側に行ってみることにした。
　そこには理事長と二人の生徒がなにやらそれぞれ言い合っているようだ。
「やっぱこー言うのは大会以外にも盛り上がるものって必要だと思うのよね」
「そうね」
　理事長は、春日野日向の熱いプッシュに笑顔で応える。
「何より、トトカルチョは大会の面白さが増えると思うわ！」
「トトカルチョってそんなにすごいの？」
「だって、こういう大会にはそういうのがつくっていうのは暗黙の了解よ」
「ふ～ん、暗黙の了解なんだ」
　さらに熱が入る日向に、理事長は優雅に微笑んで話を聞く。
「あたしは大会を盛り上げるために頑張れるわ！」
と、泣き落しを始める日向。
「あらあら、どうしましょう」
　と理事長はすっかり困ったように日向は見えた。
「だから、トトカルチョの実行を！」
「だめよ」
　気合一閃のお願いを、理事長は笑顔で退けた。
「分かってない、分ってないわ！　理事長！　そう思うよね信彦ちゃん？」
「……俺は、魚を釣るのではなく、人を釣ってみせるさっ！」
　日向の説得はかくも虚しい結果になった。
　そして、八十八旗信彦のその突然の宣言には二人が一瞬、こいつ大丈夫か？というふうに顔を合わせる。
「一応、聞いてみるけど、その心は何なのよ？」
　とりあえず、日向がおそるおそる聞くと、信彦は会心の笑顔で応える。
「自分の釣果は、集めた「バーベキューの参加者」達であるからさっ」
「「……」」
　一世一代のドや顔というのはこういうことを言うのであろう、信彦の顔は今最高に輝いていた。
「……素敵な提案だわね、そうね、やってみたらどう？」
　理事長は、何かを思い当たったように提案を飲んだ。
「えっ、あたしのトトカルチョは……？」
　驚く日向にウインク一つをして理事長は信彦に許可を与えた。
　……結果。
「いやー今から海でバーベキューやるんだ。どう、君たちも？」
「ええっと、すいません、急ぐんで」
「君、イかしてるね！　どうだい？　これからバーベキューでも？」
「嫌よ」
「お金とかは、俺払っちゃうよー。お姉さんたちもやってかない？」
「興味ないわ」
　不発。
「予想通りね」
　釣果を見て、理事長は頷いた。
　一応、その様子は優が日向と合わせて写真を撮っていたという。
　……そして、以降もそれぞれが思い思いの釣りに興じた。
「はーいッ！　ストップよ。各自のバケツをこっちに持ってきてね」
　時間となり、拡声器で理事長は大会の終了合図を送った。

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