ほしゅうじゅぎょう　が　あらわれた！｜リアクション

ほしゅうじゅぎょう　が　あらわれた！

■春山小枝のフシギな補習授業
「うーん、ねむいよう……」
　目をこすりながら日の当たる道をゆく少女、小枝。
　世界のフシギを知ってから数ヶ月。なんだかんだでどっこい日常を生きている。
　サメが飛んだりするよりも、朝早くに起きなきゃあいけないことのほうがずっとつらい日々なのだ。
　大体この寒いのにお布団から出るなんて酷じゃあないか。
　いっそお布団に入ったまま学校まで運んでくれればよいものを。
　……などと考えているせいか寝坊しちゃうことも多々ある彼女。積もり積もって補習授業という形で降り注いだワケである。
「でも、これさえ出れば大丈夫だよね。皆と一緒に二年生になれる……なる……なりたいもん！」
　手をグーにしてお空へ突き上げる。
　いわゆる誓いの拳である。
「今日ばっかりは、がんばって補習授業に出るんだよ！」
『ううん、寝ようよ』
　ぽん、と後ろから肩を叩かれた。
　振り向くとそこに影。
　自分の影がうにょんと人型に浮かび上がったものが、公園のベンチを指さしている。
『いいお天気だよ。歩くのに疲れたでしょ。一休みするくらいなら大丈夫だよ』
「そ、そうかな……」
『ひなたぼっこして、元気が出たら行けばいいんだよ』
「そ、そうだよね……」
　なに、ベンチに座って一休みくらい誰でもするさ。
　こうして座って、背もたれに寄りかかり、お日様がまぶしいから目を瞑り、深く深く息を吸って、吐いて……。
　すやあ。

『ハッ！？』
　小枝は目を見開いた。
『私寝てた！？　だめだめ、補習授業は受けに行かなきゃ！』
　そう思って時計を見ると、まだそんなに時間は経っていないようす。今から走れば間に合う……と思ったが、どうにも視線が低い。
　寝起きで頭がくらくらしちゃってるのかと周りを見回すと、ベンチできもちよーくすやってる小枝が見えた。
『……』
「……」
『……』
「……むにゃ」
『ねてるうううううううううう！』
　小枝は、というか小枝が乗り移ったネコはウニャーといって転がった。
『だ、だめだめ！　寝たらだめなのよー！』
　膝に飛び乗り、顔をぺしぺし叩く。
　ダメだ、肉球のやわらかさにかえって癒やされている。
　頭突きをして起こそうにも、もふもふ毛皮で更に癒やされる始末。
『このままじゃ寝過ごしちゃう！』
　病気や怪我ならまだしも、お昼寝してたので行けませんでしたじゃあ進級は許されないだろう。
『こうなったら、最後の手段……！』
　小枝（の乗り移ったネコ）は爪をしゃきーんと構えると、お昼寝する小枝の膝にさくっとやった。

「いったーい！」
　痛みに飛び起きる小枝。
　うにゃーといって逃げるネコをよそに、時計を見やった。
「いけない、寝てたみたい……！　早く学校に行かなきゃ！」
　口元をぬぐい、走り出す。
　かくして小枝は無事に学校へたどり着き、途中でウトウトしながらもなんとか補習授業をやりとげ進級を許されたそうな。
　めでたし、めでたし。

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