【星幽塔】第九階層　星が飾ったカナーリス｜リアクション

【星幽塔】第九階層　星が飾ったカナーリス

　星形の薬草は第三層で準備したものだった。煎じて飲めば高い治癒効果を発揮するのだという。
　その効能を確かめながら、パウンドケーキにしたためたものを手にした鴻上彰尋は周囲を確認しながらゆっくりと進む。
　先ほど擦れ違った面々には金剛オレンジで作ったオレンジピールを手渡した。
　アルゴーを降りる際にピエロットに「君は牡羊座のアステリズムなのかな？」と問い掛けたときのことを思い出し、彰尋は小さく息をついた。

　数十分を遡るのは易い。
「んー……んー、そうだよお」
　簡単に牡羊座のアステリズムって言うらしいよと告げたのんびり屋の青年。
　眠たげだが船の舵取りをする能力は光るものがあるらしく、眠たげにしながらも的確にアルゴーを操縦していた。
「僕はアステリズムでー……えらいのだ」
「え、えらいのか」
　成程、とうなづいた彰尋は「ここに連れてこれば黄金花は喜んでくれるのかな」と確かめる様にピエロットに聞いていた。
「きっと喜ぶよお。アルゴーと黄金の花はひとつだからねぇ」
　その言葉を思い出し、早く見つけてやろうと彼は一人、意気込んだ。

　

　一方で、木々の上に飛び乗った衛は「鬼さんこちらと……！」とかいぶつを呼ぶ。
「さあ捕まえてみろよ」
　敵を煽りながらも木々を飛び移り撹乱する衛。その下で、一気に叩いて見せるとアカリはサファイアリリーと呼ばれる水晶花を煎じた薬を一気に飲み干した。
「この時のために頑張って育てたんだ。出し惜しみしねーでありったけの力を込めてやる……！」
　焔の敵ならば、氷で一気に叩く。
　範囲攻撃だという様に一気に水流を流し込んだアカリは「うわっ！」と大袈裟な声をあげた。
「アカリくん！？」
「水出し過ぎた！！！」
　纏っていた青いローブが肌に張り付き、薄っすらと肌が見える。
　衛が「だいじょーぶか！」と問い掛けた声に気恥ずかしさが混ざり込んだように「だいじょうぶ」とアカリは小声で呟いた。
「ひでー敵だな！」
　憤慨する衛は上空と言う位置を使用して的確に敵の居場所を知らし続ける。
　ふと、その視界に入ったのは茂みに隠れながら移動する彰尋の姿。
　彼と視線が交え、回復係として参入した彰尋の福音が衛を勇気づけてゆく。
「これは――……影？」
　しかし、まだ動物のフォルムを保っている。衛が予期したゴンザレスのような影ではないようだが、それに類似し始めて居ると彰尋は確かに感じていた。
（……洞窟に近づいたからどうか？）
　悩まし気にしながらも、手渡した回復薬。
　徐々に増える敵に対して上空から木々を移動し撹乱しながら囮となる衛、後方より範囲攻撃で一網打尽にするアカリ、そして回復係としてすべての傷をいやす彰尋とバランスのとれたパーティーが目指すのは奥に見えた洞窟。
　幾人かの後姿を見かけ、彰尋が「あの洞窟だ」と上げた声に衛は「勘があたった！」と歓喜した。

　ちなみに、己の攻撃で見事に濡れてしまったアカリは「衣服を回復するってできるのか」と小さな声で彰尋へと問い掛けたのだった。

　