チビタカ。～平行世界鬼ごっこ～｜リアクション

チビタカ。～平行世界鬼ごっこ～

「——って時には実はもう『薔薇チーム』は全員捕まってたらしいのよ」
　桜はツンとしながらカップに半分以上残っていた紅茶を、一気飲み干してしてみせた。
「ただの嫌がらせじゃないですかそれ。大体日本橋先輩も」馬桐は眉を寄せ、「次そういう事あったらあの人殴っていいですからね」と言い切った。
「でも、皆で本気で鬼ごっこするのってやっぱり楽しいよ」
　まあまあ、と英二は苦笑しながら、桜にティーポットを傾けて二杯目を注いでいる。
「全く……。入試も終わったし、もうここまできたら開き直るしかないけど」
　桜が睨みを効かせると、「きゃあ怖い！」と四つ身の裾が閃いた。
　
　日が落ちてから『ミルクホール』に現れた中高生たちとやってきたのは、着物に被布にヘッドドレスと少し変わった服装だったが、概ね一般的な童女である。
　彼女は刀の後ろに隠れて「そんくらいで怒るなんてまだ子供なんだから」と桜や馬桐たち中学生を揶揄っていたが、ませた子供なら普通の行動だろう。
　しかし。
　カウンターの中にいる双子は考えていた。——本当にあの童女は何歳なのだろう。いや、何歳と言う枠にあてはめるの自体が、無駄な事かもしれない。２人は鏡合わせの如く揃った動きで作業をしながら、ぼんやり呟いた。
「……うちにも遂に人外のお客様がやってくるとはねー」
「鬼ごっこの妖精って、ケーキ食うんだなぁ……」
　なんでもこの店に鬼ちゃんを連れてくる提案は、彼らの後輩の刀したらしい。「何だかんだで付き合いが長いからさ、偶にはどうかなって思って」と言う豪胆さだ。
「まあ楽しそうだからいっか」
「鬼ごっこも楽しかったんだろ？　ぶどーさんよ」
　双子の口からあだ名で呼ばれて一瞬驚いた武道だったが、すぐにガッツポーズで決めて見せた。
「結果は見事俺たち『百合チーム』の勝利でしたっ☆」
「ほーん」
「じゃあ勝った子たちにはケーキに旗でもつけてやろうか」
「つかケーキより。もうそろそろ飯の時間じゃね？　なんか食う？」
「ソウネ！　ミンナはどーする？」
　仲間を見た武道は、はたと気付いた。「そう言えば誉君は？」
　ゲーム終了後には、途中だったランニングの場所に戻って行った亮。
　それに「今日の薄い本が厚くなる展開、忘れないうちに書かなきゃだよ！」と走って寮へ帰ったタルトや、彼女と同じ寮生だから一緒に帰ると言っていた陽毬。
「連絡してないのに遅くなるとお母さんが心配するから」と大凡ロッカーとは思えぬ理由で音春を連れて早々に帰宅した竹高。
「日本橋君もベース弾きたいってすぐ帰ったケド……、あれ？」
　はて、誉はどうしたのだっけ。

　＊

　ミルクホールは２階。ジュラヴリョフ兄弟の居住スペースに、夢心地の声が響いた。
「……きらきら……」
　その道を目指す彼が今ピアノを弾いたら、最高にしっちゃかめっちゃかでジャジーな音が出るだろうが、残念ながら今の誉に演奏をリクエストする事は出来ない。
　恍惚の表情で愛犬を抱きしめてラグマットに転がっている誉を、イリヤはちょこんと小首を傾げて見つめていた。

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あとがき

担当マスター：東安曇
ファンレターはマスターページから！

シナリオにご参加頂き有難うございました。
高鬼。またはタカタカ鬼などと言うそうですが、皆さんご経験はお有りだったでしょうか。せっかくの平行世界なので、今回は普段は独り占めできない中学校の校舎で遊んで頂きました。

結果は『百合チーム』市橋誉様、志波武道様、水上桜様（追加ＮＰＣ伊橋陽毬）の勝利となりました。
勝因は、アクションを総合して、複数の状況での対策が取れていた事が大きかったと思います。

それではまたお会いできましたら幸いです。東安曇でした。

＊ガイドにございます『装飾品』ですが、リアクションでは身につける装飾品（装身具）として判定致しました。
＊遊びたい鬼ごっこはまだゆるっと募集中です。よろしければファンレター機能でアイディアをお待ちしております。（採用の際、判定出来るゲームにするために、今回のデフォルメ化のように特殊ルールが付く可能性が高いです。ご了承ください）

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