「やば、追いつかれる!」「あいつめっちゃ足速いよー」
幼い子供たちの甲高い声を耳にして、
市橋 誉は通りを挟んだ公園へ向かって首を回した。
(鬼ごっこか)
全力の追いかけっこなんて、子供の頃に卒業しているさ。と格好つけてみたい高校生だったが、近頃不可思議な世界に誘われては、氷鬼や尻尾鬼に付き合わされていた。
(子供の遊びって思ってても、やり始めると気づけばムキになるくらい楽しいんだよな)
懐かしさ半分、共感半分で公園を見ていると、鬼に追いかけられていた子が、滑り台の上に駆け上がっていった。
あれは
高鬼だ。
『鬼よりも高い場所へ逃げれば捕まらないルールの鬼ごっこ』だったと記憶している。
(あれって意外と駆け引きが難しくて、夢中になって遊んだっけ)
彼がそんな事を思い出したからかは、分からないが——。
* * 「鬼ごっこしようよ」 * *
その声を聞いた時、世界は暗転した。今は夕陽でオレンジ色に染まった、寝子島中学校の校舎内に立っている。
放課後のお喋りや部活動の音が一切聞こえないのは、この世界に居るのが僅かな人間と、晴れやかな着物を纏った不思議な童女だけだからだ。
眉間にかかる髪をかき分けて二本の角が伸びており、おこぼ下駄の裏側は僅かにも床についていない。そんな童女が、静謐な空気のなかで、だらんと下ろしていた両手をあげ始める。
そして……
「知っている人は知っている。
知らない人は全然知らない、初対面なら今からよろしく鬼ごっこの妖精こと
鬼ちゃんデース! イエイッ♪
今日は高鬼で遊ぼうゼ!」
ダブルピースサインにウィンク舌出しポーズで、自己紹介を済ませた。
「せっかくの鬼ちゃん登場シーンだケド、日没までに終了って行きたいから巻きでいきます、巻きで!
というワケできらきらきらきらーのしゃらんらー☆」
ハイテンションで唱えられた適当な呪文は、
人間たちの身体を縮ませる効果があった。
縮むと言っても人間そのまま数分の1になるのではなく、串団子のようにまあるい頭と体がくっついた、お人形のような。漫画やアニメの界隈でSD(スーパーデフォルメ)キャラクターと呼ばれるそれに近い姿かたちだ。
皆、自分の手足を見てみたり、お互いの姿を確認して興奮気味だったが、呪文をかけた鬼ちゃんとしては、その姿は手段であって目的ではないのだとサクサク進行する。
「高鬼って背ぇ高いやつトカ、腕長いやつトカ有利すぎじゃね?
だから皆には、全体的にちっちゃくなって貰いました。これならあんまり変わんないからイイ感じ!
じゃ、ルール説明はっじめっるよー☆」
逃げ側になった『子』たちは2つのチームに分かれ、複数の鬼がいる校内を逃げまわる。
日没——タイムアップ時に、鬼に捕まった数が多いチームが負け。残り人数が多いチームが勝ちだ。
「もちろん高鬼だから、高いところに登れば鬼たちには捕まらない。
でも簡単じゃつまんないじゃん? 特別な鬼も用意致しました。こちらでっす!」
鬼ちゃんが廊下を示すと、鬼役は姿を見せるより先に「ワンッ!」と鳴き声を響かせた。
デフォルメ状態の人間たちをはるかに上回る70センチをこえる体高の、超大型ウルフハウンド犬——
「ボルゾイの
ポンチク君でーす!」
走れば速く、そこそこの高さでは軽く届いてしまう上、鋭い嗅覚を持った強敵だ。
おまけにその背中にはデフォルメ状態の彼の主人
イリヤ・ジュラヴリョフが乗っており、他の鬼たちと連携出来るようにハンドリングしているようだ。
平行世界鬼ごっこは一筋縄じゃないかないよ。と、鬼ちゃんは人間たちにニンマリと笑顔を向けた。
「さあ皆、めいいっぱい高いところに逃げないと、捕まっちゃうから頑張ってね!」
皆さんこんにちは、東安曇です。
今回のお届けする鬼ごっこは、遊びたい鬼ごっこゆるっと募集にて、ガイドにご登場頂きました市橋 誉様よりご希望を頂きました高鬼です。有難うございました!
平行世界鬼ごっこシリーズは、ストーリー自体に特別な繋がりはございませんので、今回がはじめてのPCさんでもご参加頂けます。お気軽にどうぞ。
それでは皆さんの楽しいアクション、お待ちしております!
舞台とPCの状態
【平行世界の寝子島中学校】
平日の夕方、平行世界の寝子島中学校が舞台です。
校舎内であれば、どこでも逃げたり隠れたり出来ます。校舎は一般的な作りの中学校を想像して、アクションをかけてください。
なお、今回の平行世界には鬼ごっこに参加していない人や動物は存在していません。
【デフォルメ状態】
鬼ごっこの間、PCは(20センチから25センチ程度の)SDキャラクターのような2~3頭身の姿になっています。衣服、装飾品、スマートフォンや携帯電話などの通信機器のみ同じくデフォルメ化されています。
体は柔らかく、謎のクッション性があって高いところから落ちても怪我をしたりすることはありません。持久力は人間時が大体そのまま反映されています。
しかし力は弱く、腕や足が短く、手も小さいので、思うようにいかないことも多いでしょう。
ゲーム中ろっこんの使用は可能です。
ろっこんの能力が半減することは有りませんが、デフォルメ状態の身体で可能かも含めて判定します。
ルール
今回の鬼ごっこでは、2つのチームに分かれて頂きます。
鬼にタッチされたPCは、ゲームオーバーになります。タイムアップ時(日没)に2つのチームのうちで、ゲームオーバーになったPCが少ないチームが勝利です。
鬼たちはPCと同じデフォルメ状態で、高いところに登ることができませんが、ポンチクのみいつもと同じ超大型犬の姿です。ポンチクにぱくっとされるとタッチと同じくゲームオーバー判定です。
高い場所にいられる時間制限はありませんが、一定以上同じ場所にいると、鬼ちゃんに意地悪されて床に落とされる可能性もあります。ご注意ください。
【チーム分け】
ご参加のPCさんたちを、マスターが適当に(あみだくじなどの運と、アクションの相性)で2つに振り分けます。
グループ参加で誰々さんと「協力したい」「対決したい」などが有りましたら、アクション欄にご記入下さい。有利になりすぎない範囲であれば、リアクション反映される可能性があります。
人数や戦力が偏った場合、NPCが追加されます。
鬼(NPC)
【ポンチク】
旧市街のカフェ『ミルクホール』の、賢い可愛いでかい犬です。
背中にのっている彼の主人(イリヤ)が、他の鬼たちと連携させています。イリヤはハンドラーに徹しているので、ろっこんの使用などはしません。
【鬼】
中学生4人(日本橋 泉、水海道 音春、高知 竹高、幌平 馬桐)です。
ろっこんを使用する場合もありますが、階段や梯子など移動手段以外の段差は昇りません。
ポンチク(イリヤ)とは直接会話以外に、通信機器での連携をする可能性もあります。
【鬼ちゃん】
基本的に見学のみですが、ゲームが滞ると掻き回そうと手を出してきます。