みんなで楽しいひなまつり！｜リアクション

みんなで楽しいひなまつり！

　楽しく笑い、話しながら参道を上がる女の子達がいた。寝子島小５年の佐藤瀬莉と、その友人達である。
　彼女達はひなまつりなので、神社の桃の花を見に来たのだ。……というのは口実で、もしかしたら違うものが目的かもしれない。
　彼女達は屋台で色々と買ってはみんなでそれを食べたり、参道を上がれば甘酒とひなあられの振る舞いに目を輝かせたり。
　勿論桃の花を見るのも楽しみだから、花より団子……というよりは花も団子も、という所であろう。
　神社でのひなまつり。瀬莉は単純にこういう賑やかな感じも好きだ。

　甘酒とひなあられを貰った瀬莉達は、境内のベンチで一休み。けれども小さくたって女の子の集まりだ。口が休む訳がない。ひなまつりの今日は、『おうちのお雛様』について色々と話が盛り上がった。
「うちのお雛様はねー、手作りなんだよ」
　友人の１人が言った言葉を、瀬莉は聞き逃さなかった。瀬莉は両手利きで、非常に手先が器用だ。懐中時計いじりが趣味の彼女は、ジャンルが違うとはいえ、物を作るという事に強い興味がある。瀬莉はキラン！　とその可愛らしい瞳を輝かせた。
「手作り？　どんなふうに作ったの？　衣装はどうやって作ったの？」
「え、顔は紙粘土で、着物はちりめん使ったけど……お母さんがほとんどやってくれたんだ」
「ちりめんか～！　色合わせ楽しそうだね。屏風とか小物は？」
　次から次へと質問しまくる瀬莉。きっと今材料が手元にあったら早速作っているだろう。
「瀬莉の職人気質はハンパないよね……」
　苦笑しながら見守る友人達。すると別の友人が瀬莉に言った。
「ねえ、どうせだったらお雛様のロボット作ればいいじゃん！」
「はぁ？！」
　瀬莉は思わず振り返る。その友人はいつも結構な無茶ぶりをしてくるのだ。
「何バカな事……」
　言いかけて、瀬莉の瞳が真剣なものになった。ロボット……というか、からくり人形ならどうだろう。時計で動く雛人形。
「……面白いかもって思ったでしょ？」
　先程の友人がにししと笑う。ちょっぴり悔しかったが、彼女の言う通りなので瀬莉は仕方なく頷いた。
　チョコの時計というのも面白いけど、時計仕掛けの雛人形も悪くない。
（五人囃子が動いて演奏したりするのを作ったりするのはどうだろう）
　何だか夢が広がる瀬莉だった。

　ひとしきり境内の散策を楽しんだ瀬莉達は、流し雛をする事にした。
　境内で願い事を書き、みんなで猫又川に流しに来る。ゆったりと流れる猫又川にはたくさんの笹舟が浮かんでいる。そこに瀬莉もそっと自分の笹舟を流した。
　流し雛の願い事は、『一流の時計職人になれますように』。
　瀬莉の願いを乗せ、笹舟が流れていく。この時ばかりはあまのじゃくで気分屋な瀬莉も、真剣にお祈りした。
　皆が笹舟を見送ると、誰かが言った。
「さぁーて、じゃあ瀬莉んちのお雛様見に行こうか！」
　いいねいいねと皆が賛成する。実は神社でお雛様の話題が出た際、瀬莉の家の三段飾り１７人というお雛様の話をしたら、大変珍しがられたのである。
「いいいでしょ、瀬莉？」
　期待を込めた目で見てくる友人達に、瀬莉は笑って答えた。
「いいよ！　じゃあみんなで家に行こうか」
　やった！　と友人達が笑顔になる。彼女達の楽しいひなまつりはまだまだ続くのであった。