【バレンタイン】学生達のValentine's Day!｜リアクション

【バレンタイン】学生達のValentine's Day!

●女の子のバレンタイン！

　放課後の５年４組の教室は外の寒さをものともせず、わいわいきゃいきゃいと女子が集まりかしましかった。
　好きな男の子にどうやって渡そうか……と相談していた訳ではない。
　教室内では色とりどりのチョコレートが飛び交っている。
　そう、本日は女子もとっても楽しい友チョコ交換の日なのである。

　見た目は可憐でおしゃれであるが、佐藤瀬莉もまだまだ色気よりは食い気である。彼女にとってバレンタインは年に１度、友達といろんな種類のチョコレートを味わえる日だ。
　星ヶ丘に住む裕福な瀬莉が本日用意したのはとんでもなく高級なチョコ……ではなく、見た目が可愛らしい動物の形をあしらったチョコレートだ。勿論それなりにお高いものではあるが。これを彼女は友人みんなの分用意していた。
（お金はかかったけど……まあ、別にいいよね。バレンタインデーだし）
　紙袋から包みを取りだしながら瀬莉はふむと考える。こんなところでケチケチしてもしょうがない。自分もあげる分、友達からもしっかり貰えるんだから。年に１度のイベント、楽しまなきゃね！

　女の子達が囲む机の上には様々なチョコレート。ちょっとしたお菓子の見本市のようだ。
　結構凝ったデザインのものや、チョコよりも何だか包装に気合いを入れてるんじゃないかというくらい派手な包みのもの。和菓子っぽいものもあれば、定番のニャロルチョコのバレンタインバージョンまで。
　瀬莉は貰ったニャロルチョコの包みを眺めながら思わずむふふと笑みを浮かべる。
（ニャロルチョコ大好き！　これっていろんな種類のものがあるから、なかなか侮れないんだよね）
　お高かろうが、安かろうが。可愛くて楽しいものにワクワクしてしまう瀬莉はやっぱりおしゃまな小学生の女の子なのだ。

　甘いものというのは年代問わず、女子の潤滑油なのだろう。たくさんのチョコを前に女の子達の会話も尽きる事がない。皆できゃわきゃわと話している時、友人の１人が瀬莉に話しかけてきた。
「ねぇ、瀬莉は時計いじりが趣味って言うか何かもう権化じゃん」
「権化ってひどーい！　……まぁ、かなり好きだけどね」
「そしたらチョコで時計とか作ったらいいんじゃない？　面白くない？」
　突拍子もない友人の提案に瀬莉はちょっと目を見開いた。
「さすがにそんなの無理だよー」
「えー、そっかなー。瀬莉はすっごく手先器用だからいけると思うんだけどなー」
　口を尖らす友人に瀬莉は思わず苦笑する。そして２人はまた友人達の話の輪に加わったのだが。
　みんなと話しながら、実は瀬莉は上の空だった。先程の友人の提案が心を離れなかったのだ。
（チョコで時計……面白そうじゃない？　今度試してみようかな）
　将来は時計職人になりたいと思っている瀬莉。どんな事であれ時計が絡むと心が躍ってしまうのだ。
　やるなら本格的に。外見は勿論だけど、内部をどこまで表現出来るかしら？
　できるかどうかはわからない。それでも甘い時計という魅力的な物作りにわくわくしてしまう瀬莉だった。