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いつかあなたの鏡写し
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浅葱 あやめ
は劇団の集会の帰り道に、市街の住宅街を歩いていた。
雲はもう真っ黒く、南西の方だけ建物の間から煌々と光が映っている。それを見て、なんとなく「早く家に帰ってしまおう」とあやめは胸がつかえたような気分になった。
彼は一言で表せば、陰鬱な人だった。
時折隠された前髪からちらりと覗く眼光は鋭く、得てしていつも怒っているような印象を他人に与える。彼が猫背になってのそのそと歩く様を見て、巡邏に呼び止められるようなことなど、さて何度あっただろうか。
ぼんやりと取り留めもなく、小劇団の予定や、確定申告のこと、眼鏡屋の収支状況のことを心配し始めると、少し不安な気持ちになって、それがまた彼の陰鬱な雰囲気をいや増すことになる。
「『兄さん。行っちゃいけませんよ。ハチスズメもあんな遠くにいるんですし、僕ひとりぼっちになってしまうじゃありませんか』」
ふと、公園から声がした。まだ変声期にも達していない、高い少年の声だ。あやめには彼の諳んじるセリフが一体何なのか、一つ心当たりがあった。宮沢賢治の『よだかの星』に出てくる、川せみのセリフだ。本来ならば、困惑や悲壮感を込めて声にする箇所だが、いまいち感情がこもりきっていないのは、まだ役柄に感情移入しきれていないからだろうか。
「こんな夜遅くに……」
一人で朗読劇の練習だろうか。周囲を見ても保護者らしき人は見えない。自身も過去に似たようなことをしていたのだから、あまり人に強く言えた義理ではないが、それでもやはり夜に未成年が一人だけというのは危なっかしくて仕方がない。
自分が声をかけて不審者のように扱われたらどうしようかとも一瞬考えたが、それで怖がって家に帰ってくれればむしろ好都合だ。
「『兄さん。どうしたんです。まあもう一寸お待ちなさい』」
さてどう声をかけたものだろうか、と少年相手にすら二の足を踏みながら近寄ると、川せみのセリフが終わった。折り返し地点だ、と思った時には、するりと言葉が出ていた。
「『兄さん。今晩は。何か急のご用ですか』」
口をついて出たのは、川せみの最初のセリフだ。
ようやく気付いた少年が、あやめへと振り向く。子どもらしからぬ、眼鏡の奥からぎろりと睨め付けるような鋭利な目つきに一瞬あやめも怯みそうになって、それから驚いたように歩みが止まってしまった。
それもそのはず。髪は今と違って、まだ黒髪だったが、あやめの目の前にいる少年は他人の空似などではなく、過去の自分に違いなかった。
少年も少し目を見張って、それから笑った。あやめが自分よりも年下の自分を「兄さん」と呼んだことがおかしかったのか、それとも共通の作品を知っているという親近感か、あるいはもっと別の何かか。
――怒ってるのか笑ってるのかどっちかにしろよ。キモい。
その少年の笑顔を見て幼少期のトラウマが呼び起こされてしまい、つい苦虫を噛み潰したかのような表情になってしまう。この様子だと、この過去の自分はこの言葉を聞く前の自分だろうか。
ああ、身に覚えがあるとは言え、痛々しい。けれど無邪気に笑うのがその年頃の仕事と言っても過言ではないのだ。あやめは慌てて首を振って、努めて仏頂面を作った。
それを見て、少年は次のセリフを催促されたのだと勘違いしたのか、あやめのセリフを継いでよだかのセリフを諳んじる。
「『いいや、僕は今度遠い所へ行くからね、その前一寸お前に遭いに来たよ』」
川せみの時とは打って変わって、厭世的で、何もかもを諦めきって、自分の無価値さに絶望したかのような声だった。あやめはまだ覚えている。自分があの頃、夢中になって『よだかの星』の台本を読み込んだことを。そうしている内に、幼き自分は割り振られた役柄の川せみよりも、よだかにすっかり感情移入してしまっていたことを。
ふと、目が合う。
ナイフのように鋭い目付き。しかし、その奥にある瞳は優しい。まるで、弟を気遣う兄のような――。
あやめは目の前にいる幼少期の自分を、実にみにくい鳥を見て思った。
彼はよだかだ。あやめは彼を見守る鳥や星だ。
「『兄さん。行っちゃいけませんよ。ハチスズメもあんな遠くにいるんですし、僕ひとりぼっちになってしまうじゃありませんか』」
「『それはね。どうも仕方ないのだ。もう今日は何も云わないで呉れ――』」
演じる少年を見て、あやめは眼鏡をかけ直す。
語り合うように。けれど二人共自分の言葉を用いず、演劇という親しい道具を通じて、辿々しい手つきで触れ合うように。二人は言葉を重ねていく。
「『――さよなら。もうあわないよ。さよなら』」
それでも、川せみとよだかの会話はあまりにも短い。よだかのその言葉によって、二人の間で言葉を交わす手段が途絶えた。
ふと、少年が夜空を見上げた。釣られるように、あやめも空を仰ぐ。
この真っ黒な空を、命を燃やしてよだかが飛んでいるのだろうか。
よだか。自身の出自に罪悪感を覚えた、実にみにくい鳥。
彼も、いつかその罪悪感に絶望するのだろう。
「……僕もいつか、この罪悪感にけじめを付けられるのかな……」
独り言ちて、視線を降ろす。幼き彼は、もうすでにそこにはいなかった。
「……もう、帰ったか」
吐息。
思い返せば、あやめの過去はそう明るいものではなかったかもしれない。
けれどこの不思議な夜の“再会”は、彼の陰鬱な雰囲気を少しだけ薄らいだものにさせていた。
今も黒々とした暗雲の隙間から、星は下界を見守り続けている。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
豚野郎
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年01月12日
参加申し込みの期限
2017年01月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年01月19日 11時00分
参加キャラクター一覧
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