おいしいコーヒーの淹れ方｜リアクション

おいしいコーヒーの淹れ方

　寝子ヶ浜交番の向かいにある「299　COFFEE」。
　いつもは営業している時間なのだが、本日は「研修のためお休みです」と紙が貼ってあった。

　店内では店長の森崎壮二がアルバイトたちにコーヒーの淹れ方を教えている。みんなメモを取って熱心に話を聞いていた。
「御剣、僕の淹れ方見てもらってもいいかい？　習ったところをおさらいしたいんだ」
　ロベルト・エメリヤノフが御剣刀に尋ねる。刀は
「俺でよければ勿論」
　と生真面目な表情で返事をしてロベルトの隣に移動した。ロベルトが手動タイプのミルをくるくる回す。グラニュー糖くらいの粒になった豆をミルの引き出しから取り出しペーパードリップの中に入れる。
「ここから蒸らして～」
「いい感じです、先輩」
　緊張した面持ちのロベルトを、刀が静かに応援している。
　森崎店長は少し離れた場所で熱心な少年たちを見守っていた。
「今週から、私たちがお客様に淹れ方をご案内するんですね……」
　御巫時子が自分の淹れたコーヒーを飲みながら森崎店長に話しかける。
「いつもと違うやり方を覚えてもらって悪いね。お店のコーヒーはサイフォンで淹れているけど、家でやるのは難しいから」
　森崎店長が軽い調子でわびると、時子が「いいえ」と笑った。
「御巫さんは覚えるのが早いからサイフォン式の淹れ方もすぐにマスターしちゃったね」
　時子は森崎店長に助言をもらって購入した豆で、美味しいコーヒーを淹れる練習をしていた。
「少しずつ上達してきました……」
「御巫さんに淹れてもらえる相手は幸せ者だね」
　時子のひだまりのような笑顔を見て、勘のいい森崎店長は「青春だなあ」と心の中でつぶやいた。

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