【星幽塔】第八階層　妖精のオーブと２人の乙女｜リアクション

【星幽塔】第八階層　妖精のオーブと２人の乙女

●森で

　骨削瓢は森の奥深くを歩いていた。

　今回の戦闘で手に入れたのは割れた石１つと、妖精から貰った魅惑の粉。勿論城から報賞金が出る事は聞いていたが、瓢はそれだけでは足りなかった。
　これだけ苦労したのだ（いや、苦労したのは石拾いだが）。もっと何か頂いてもいいはずだ。瓢は考えていた。
（こんな素っ頓狂な世界なら妖精が２匹だけというのも考えにくい。魅惑の粉……妖精を捕まえてまとめてすりおろせばそれなりの量になろう）
　そのためには森のどこに妖精が生息しているのか把握する必要がある。その下調べに歩いていたのだ。
　しかし、歩けど探せど妖精の姿など見当たらない。その時後ろからガサリという音と共に瓢に声がかけられた。
「骨削じゃないか！」
　その明るく真っ直ぐな声には聞き覚えがあった。内心でアイタと思いながらも瓢はへらりと振り向いた。
「おや、風雲児はん」
　瓢の前に、ろっこんを解いた風雲児轟が笑顔で立っていた。

　瓢は特に問いもしなかったが、轟は自分が影についての聞き込みをしてると話し始めた。
「この階層に来るまでの間にも、影が事件の原因を作っていた場所は少なからずある。つまり、今回も同じパターンと見ていいだろう」
　轟は瓢相手に真剣な声で言った。
「ここももう第八階層だ。全部でどれぐらいあるか知らねえが、そろそろしっぽの１つでも掴んでおきたくてな」
「はぁ、なるほどねえ」
　瓢は気のない返事をした。
（影のしっぽ、ねぇ）
　今まで何度か影に関わった瓢は、しっぽなら影の数だけあると感じていた。この階層の影は腑抜けだったし、どうも共通点がないのだ。
（……いや、共通点ならある）
　それはひたすらオーブを消す事に拘っている事だ。そこだけは一緒だった。
　この考えを轟に教えても良かった。が、しかし。
（影のしっぽを掴まれちゃ面白くないよい）
　影が自由だからこその異世界の混乱だ。これを防ごうなんて瓢が思うはずもない。瓢は轟にへらりと笑って言った。
「それは大変だねえ。あっしも協力できたらいいんだけど。何か聞けたかい？」
　轟は首を振った。
「町では特に何も聞けなかった。妖精達にも聞いてみたが、そもそも彼らは何て言うか……自由な奴らで、こっちが聞きたい事をなかなか教えてくれなくてな」
　瓢が目をひんむいた。
「妖精達？！　おたく見たのかい？！」
「あ、ああ。俺が面白いのか集まってきたよ」
「何だって？　こっちは小一時間歩き回っても全然見かけないのに」
　歯噛みする瓢に轟は笑って言った。
「また何か過激な事考えてたんじゃないか？　妖精は敏感みたいだぞ」
　瓢はむううと口を引き結んだ。妖精のすりおろしなんて考えていたから反論も出来ない。
　瓢はアハハと笑う轟をじとりと睨みつけた。
（この妖精ホイホイが……。今度はお前さんと歩いて妖精を捕まえてやろうかね）

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