【星幽塔】第八階層　妖精のオーブと２人の乙女｜リアクション

【星幽塔】第八階層　妖精のオーブと２人の乙女

●城下町にて

　恵御納夏朝は城を出て、城下町を散策する事にした。城下町というのは似ているようで、国ごとにやはり何となく違うものだ。夏朝は街並を興味深く眺めて歩く。そして『茶葉取扱い』と看板を掲げた店を見つけると、ふらりと入っていった。

　小さな店内は沢山の値段の違うミントティーが並べられていた。不思議に思った夏朝は、奥から出てきた店のおかみさんに訊いてみた。彼女は夏朝の質問に笑った。
「そりゃあ効能が違うからさ」
「効能？」
「ああ。『魅惑の粉』は聞いた事あるだろう？」
　ジンやサナに話を聞いていた夏朝はこくんと頷いた。おかみさんは話を続けた。
「じゃあミントティーの効用も知ってるだろうけど、実は効き目に結構違いがあるんだよ」
「そうなの？」
　ちょっと驚いた夏朝におかみさんは得意げに続けた。
「ああ。値段の高い物ほど『魅惑の粉』の効き目がなくなるんだ。でもだからって安いのが売れない訳じゃない」
「どうして？」
　不思議そうな夏朝におかみさんはウインクした。
「粉を使う奴が相手に警戒させない為に、安い茶葉も用意しちゃうんだよ。素人には分かんないからね」
　内心でほええと夏朝は感心した。男女の駆け引きはどうも奥が深そうだ。

　普通に飲んでも美味しいと言われ、夏朝はおかみさんおすすめのミントティーを買う事にした。
　お金を支払う時、夏朝はふと気付いてサジタリオのコインを出してみた。ここでも使えるか試してみたかったのだ。しかし使えないと言われ、手元に今回の戦いで城から出た報賞金があった夏朝は、ダソスの通貨で支払い直した。

（やっぱ、異世界って面白い……）
　お店を出て、ふうと夏朝は息をついた。さて、今度はどこに行こうか。

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