美少女戦士？の尋ね人｜リアクション

美少女戦士？の尋ね人

　　　２

「本当に大きくなったわ。このままのスピードだと――いえ、もっと速く大きくなる可能性もあるわね」
「それじゃあっという間に大人になって、お爺ちゃんになっちゃうわけ？」
　莉鳥の言葉に、巧が盛大に顔を歪めた。
「それまで僕が世話するの？」
「そこが問題ね。こう成長が急だと、肉体の変化に心がついていけない可能性もあるから……」
「教育が大事ですね」
　うん、と美咲紀が頷いた。
「基本、何でも褒めて。他の人といるのは楽しいと思ってもらうです」
「それもいいが、知育と情操教育だ」
「ちいく？」
「というわけで、ちょっと持ってきてみた」
　修は鞄から、絵本と小さな積み木セットを取り出した。
「要はこれで遊ぶんだ」
「へー」
「このままのスピードで成長すれば、自力で歩行もするだろうし話せるようになるだろう。そうすれば、出自の謎も分かるはずだ」
「だといいなあ」
　巧はちらりと光を見た。光は、修が出した積み木に興味津々だ。手に取って、ぶんぶんと振り回したり、転がして喜んでいる。
「……ま、遊び方は追い追いな」
「くうう、じっと見ていたいのは山々なのですが、私は掃除をするのです！」
「掃除なら、大家さんがしてるよ？」
「この部屋も？」
「……ここは僕が」
「最後にしたのはいつですか？」
　えーと、と巧は考え込んだ。
「ほら！　埃は赤ちゃんによくないし、小さい子は何でも口に入れちゃいますから」
　積み木を舐めているのを見て、確かに、と巧は思った。
「先にこの部屋以外を掃除しますね。大丈夫、小百合さんにはちゃんと許可貰ってます！　さあっ、ほら、シュー君も！」
「俺も！？」
「私一人にやらせるつもりですか！？」
「分かったよ……先にやっててくれ。俺は東門にもうちょっと話がある」
「ラジャーです！」
　美咲紀は両方の袖をまくり、やる気満々で部屋を出ていった。
「――で、東門」
「何？」
　生徒会副会長――というだけで緊張する巧は、修に対しては正座で対する。
「ほら、光」
　積み木を持ったままの光を膝に乗せ、莉鳥が絵本を読み聞かせる。ゆっくり、分かりやすく。
　修はそれを横目でちらりと眺め――巧の勘違いでなければ、頬が緩んでいた――、それから言った。
「さっき聞いたんだが、光を散歩に連れ出すって？」
「うん、なんか外に出たがってるみたいで、一階にいると庭とかひょいひょい降りるし、そこから外に行こうとするし。僕は別に行かなくていいんだけど」
「変な女の子の話は聞いたか？」
　うん、と巧は頷いた。
「怖いよね……でも椿さんにも言われたけど、確かに僕は対象外な気がするし、光が行きたいならいいかな、と」
「いや。光に関係があるかもしれない」
　莉鳥がはっと顔を上げた。光も自分の名が出たことに気付いたのか、う？　と修を見る。
　修はそれに気づかぬまま、続けた。
「確かにターゲットは背の高い男――だが、タイミングが良すぎる」
「とはいえ、寝子島では色んなことがしょっちゅう起きるしねえ」
　背後から声をかけられ、修は一瞬、息を飲んだ。巧に至っては完全に硬直している。
　寝子島高校生徒会会長、志波武道であった。

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