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【感染者侵攻数】
Ａ全体：３５人
Ｂ全体：７５人（一部足止め）

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Final Round【Day3 朝】

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【Ｂ５：バリケード前】

　朝を迎える前に、タルトは屋上に戻り信彦達の様子を伝えていた。
　だが、巴の生存自体は喜ばしい事ではあるが、全員で逃げる以上その回復を待つ必要がある。
　ただでさえ他の傷を負っている以上、どうしても回復までは時間が掛かっていたのだ。
「いやはや、結局はあっしの思惑通りになった、って感じだねぃ」
　全員が屋上で休憩を取っている中、瓢は一人この場所へと姿を現していた。
　閉じたバリケードと撒かれた洗剤、この二つは有効に効果を発揮し、感染者は満足に昇る事が出来ずに足止めを喰らっていたのだ。
「少なくとも乾くまでは安全かね。にしても自分から言うたぁ、随分と剛毅な連中なこって」
　屋上に通じる階段の封鎖を指示したのは、他でもない信彦達である。
　こちらはこちらで考えがある、だからタルト達は屋上を封鎖して欲しい、と。
「ま、後はなるようにしかなりゃしないか」
　救助の時間までは残り６時間を切っている。
　バリケードも、まだ強度自体は問題がなく、このまま行けば十分に逃げ切れる時間は稼げるだろう。
　――張った賭けは、今の所は瓢の一人勝ち。
　それをひっくり返す事があるかどうか、瓢にとっての関心事はいまやそちらに傾いていた。

【Ｂ４：教室前廊下】

　巴がある程度回復した事を見越し、まずは修が外の様子を確認する。
「どうだい、やがみん」
「……余り良くは無いな」
　夜半に一度、教室の引き戸を叩かれた為に、それを内側から抑える事でどうにか朝を迎えることが出来ていた。
　両側から侵攻されていれば抑え切れなかったのだろうが、スプリンクラーが作動し消火されたバリケードの残骸は、十分に効果を発揮してくれていたのだ。
「それでも行かないとねぇ。どの道、ここに留まったって逃げれるわけじゃないし」
　持っていた木製の箒は既に巴に渡しており、由貴奈は素手のままで修に答える。
「まったく、あんた等だけで逃げりゃよかっただろうに……」
　巴は気絶している最中にねむるの特効薬が投与された事を聞かされていた。
　それに対し、始めこそ猛烈に怒りを全員に向けていたが、今はようやくそれを納めていたのだ。
「はっは、レディーを見捨てて逃げるって？ そんなの無理って話さ！」
　完全に元のテンションに戻った信彦が、素敵なまでの笑顔で巴に対し口にする。
「……ったく、ホント馬鹿だね」
「はは、それものぶひこ君のいいところなんだよ。多分」
　ねむるのフォローに、巴は信彦に呆れたような顔を向けていた。
「とにかくだ。目的は二つ、全員が階段まで辿り着き、俺がこの階の廊下を崩壊させる。いいな？」
　全員に向け、修はこれを口にする。
　――確実に生還する為に残された手は、一人ではなく、広く対象を取れる修のろっこんにあったのだ。
「出来る出来ないってよりは、やるしかないって話だよねぇ」
「それでも希望はある。大丈夫、巴ちゃんも壬生先輩も、俺が守ってみせるさ！」
「そうだね、僕も頑張るよ」
　返答は全員より。
　巴は静かに頷き、賛同を返していた。

【Ｂ５：バリケード前】

　信彦達が行動を開始した事が、透の携帯に伝えられ、屋上の生存者は全員がバリケードの側に集まる。
「問題なければ、もうすぐ着くはずです。吾妻さん、準備は？」
「……出来てるっす」
　透の指示を待ち、優は目の前に一部バリケードから外した大型の黒板を置いていた。
「流石に、数が多いですね……！」
「出来れば、早く来て欲しい所よん！」
　投擲出来る物が全て無くなったため、陽太と月を含めた全員がバリケード越しに感染者を無理矢理引き剥がしていた。
　洗剤は既に乾き、ここには大勢の感染者が押し寄せている。
　――この中を突破した上で、本当に信彦達が無事に抜けてこられるのか？
　その疑問に答える為には、優が使えるろっこんの力が鍵になっていたのだ。

【Ｂ５：３－屋上階段前】

　信彦が先頭に立ち、ひたすらに前へと向かい、全員が無傷で階段前に到着する。
「やがみん、急いで！」
　階段前の確保を行い、修を囲む形で全員が感染者の行動を抑える。
――周囲への意識を切り、修は廊下に手のひらを当て、息を止める。
　手のひらより周囲が徐々に変容し、廊下の塗装が剥げ、その下の骨組みを露出させていく。
「ぐ……！ ダメ……！」
　崩壊させるより早く、由貴奈が押し切られる形で感染者につかまれる。
「壬生さんから離れろ！」
　それを引き剥がす為に、ねむるがモップで突き、感染者を押し返す。
「まだかい！ 急ぎな、修！」
　額に流れる汗を拭く事なく、修は巴の声も聞こえない程に集中していく。
　――骨組みが崩れ、一部の廊下はついに２階が見え始める。
　それに続き、廊下に居た感染者達もまた、巻き込まれるように階下へと叩き落されていた。
「皆、壁側に！ やがみんもそこまで！」
　修の集中が切れるのは、信彦が挙げた声により。
　――階段手前の廊下から、三階の廊下はまだら状ではあるが穴が開く形となり、全員が立つ壁側に向かう感染者は全て二階に落ちる形を作る事に成功していた。
「後は――」
　ここまで来れば、後は待つだけしかない。
　上階に居る生存者達に聞こえるように声を上げ――五人が乗れる程の大型の黒板はゆっくりと階段上から姿を現していた。

【Ｂ５：屋上】

　修があけた穴により、階段に居る感染者を除き、それ以上増えることは無かった。
　その効果も手伝い、屋上での防衛は無事に昼を迎えるまで成功していた。

　――遠くより聞こえるのは、救助の為のヘリの音。
　生存者は誰一人欠ける事無くこの持久戦を勝ち残り、地獄のような様相を呈した寝子島を後にしていく。

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【状況終了】
全テノプレイヤーノ消去ヲ確認、世界ノ消去ヲ確認

【結果】
全グループノ離脱ヲ確認－３グループ全テノ完全勝利ト判定

―― game is over ――

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【現実：寝子島高校・部室棟のとある一室】

　光を徐々に消しながら、マイスターは全ての意識の解放と自身の変化を行い、姿を消していく。

　目覚めたプレイヤーに残る記憶はそれぞれに異なる。
　ある者は、どこかで有りもしない力を使い、それがやはり夢であったと確認し、またある者は確かなものとして、マイスターに関する事以外を記憶している。
　だが、それがどちらであっても、それは夢や幻のようにプレイヤーには影響を及ぼすことは無い。

　次のゲームは、誰かがマイスターをプレイした時。
　その時まで、マイスターはどこかで静かにその時を待つ――