２！２！２！｜リアクション

２！２！２！

　海と千歳は浴場に誰も居ないことを再度確認してから、猫を抱いて中に一緒に入ると、早速汚れた彼を洗い始めた。
　桶にためたお湯をすくってかけてやると、猫が意外にも大人しいので驚いている。
「きっとお風呂に慣れているのね」
　千歳が言うのを聞きながら、海はこの猫はやっぱり飼い猫かもしれないなと考えていた。
　シャワーで綺麗にしてあげたら、どうにかして飼い主を探してあげよう。そんなことを考えつつ、猫に片手を添える。
（あ、この子オスなんだ）と気づいたのは、海もまた『ある部分』に触れたからだ。しかし海は猫が元人間で、かつ刀であるとは気づいていない。
（それじゃきれいにしてあげるからね）
　海は石鹸を泡立て始めた。その後は彼女の好意からの行動だったが、当の刀は（まさか二度もこんな恥ずかしい目に……）と死ぬ思いだった。

　それから、洗い終わった身体をタオルで拭かれている間じゅう、刀はずっと一点を見つめ続けていた。
（全身洗われて乾かされちゃった。気持ち良かったのが尚更恥ずかしい）
　と思う気持ちは当然二人の女の子には伝わらない。
「——静かになったわね、疲れちゃったのかしら」
　千歳は海と笑顔を交わした。
「そういえば、刀君結局来なかったけど、どうしたのかしら」
　海が（そうだね）と頷いた時、刀は——バレたら終わりだと言うことを忘れて——これが最後のチャンスと「にゃーにゃー！」と鳴き声を上げた。

　皮肉か幸いか——。これでも二人は猫の正体に気付かない。
「ん？　あなたのことじゃないのよ、黒猫さん」
　猫の背中を撫でて、「もしかして、この子もカタナって名前とか？」『目つきもなんか日本刀みたいに鋭い気がするし』「ま、そんなわけないわよね」と談笑していた。

(ΦωΦ)　＊　(ΦωΦ)　＊　(ΦωΦ)

　一方その頃。未だ猫の武道は、驚きのあまり立毛筋をフルに使って毛を逆立てていた。
「フナー！？」

　櫻が案内してくれた彼女の自宅が、『家』と言うより『小屋』だったのだ。
　電気は引いてある。水も通っている。
　冷蔵庫や炊飯器と言った最低限の家電製品などもある。しかし……。
（マジで山の中だと思ったけど、思った以上だった……）

　顎を逸らしてあちこちみている武道を不思議そうに一瞥して、櫻は今夜の準備を始めた。
　武道リクエストの鰹節を混ぜた猫まんまと、自分の夕食。それから寝床も必要だ。
（猫用の寝床……バスタオルで良いだろうか？）
　広げたところで理解してくれたのか、武道が「ニャア」と鳴いて答える。初めこそ大変な事になりそうな雰囲気だったが、櫻と武道くらいに信頼の深い関係は言葉のみに依存しないのだろう。
　実際櫻は猫の姿をしているとはいえ、武道と共に食事をとることに、不思議な気持ちを感じていた。
　　床に就くときもそれについて考えていた櫻だったが、やがて瞼が重くなってきた。
　きっと色々あった所為だろう。
「今日はもう休む。志波もゆっくり休んだ方がいい」
　きっと朝には元通りだと期待して、櫻はバスタオルにくるまっている武道へ静かに挨拶した。
「じゃあ、おやすみ」

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