旧市街はレトロなカフェ『ミルクホール』に、近所に住む中学三年生の
日本橋 泉がやってきた。
丁度カウンターに居た店長の
寺島 康子は、甥
イリヤ・ジュラヴリョフの同級生である泉の姿を見つけて「あら」と微笑みかける。
「いらっしゃい泉君。ごめんなさいねイリヤまだ帰ってきてないのよ」
椅子を勧める康子だったが、泉は首を横に振って返すばかりだ。看板犬の
ポンチクが足元に寄ってきて、何かを気にして鼻をひくつかせているのに、視線を泳がせて上の空である。
イリヤの双子の兄の
エリセイと
レナートは、明らかに挙動不審な泉を見つけて、両側から挟んで逃げられないようにしてしまおうと無言の合図を送り合う。
しかし実行に移そうとした瞬間に、「用がある」と泉の方から腕を掴まれて、店の前まで連れ出された。
「——っんだよいきなり。つかイリヤは? 放課後お前ん家遊び行くって聞いてたのに、なんで一人」
眉を吊り上げるレナートだが、エリセイは別のことに興味津々だ。泉のコートの胸元が妙な形に膨らんでいるのが、エリセイの人差し指を引き寄せる。
「えいっ」
エリセイが堪らず突っつくと、泉の首の下からピクピク動く動物の耳が見えた。
「おお、これはもしや?」
もう一度突っつくと、遂に動物が顔を出した。
長毛の猫がフシャーッ! と牙を見せ、毛を逆立ててエリセイを威嚇している。「何するんだよ」と怒っているようだ。
「あはは! からかわれた時のイリヤみたい!」
「うん、イリヤなんだこいつ。猫になった。
ベースのクリーニングしてる間に、ソファから寝息聞こえたから暫く放っといたら、振り返った時には猫」
「おおっときましたよ、お馴染み寝子島怪奇現象が」
面白そうにしているエリセイの横でレナートは懐疑的だったが、泉が出したスマートフォンの画面を猫がペタペタ叩いて「ぼくだよ」と打った時には、もう信じるしかなかった。
「はあ……どうすんだこれ」
「俺も考えた」泉は、事件に気づいた後、三秒も熟考した結果を話し出した。
「この家はもう犬飼ってるだろ? だからここは俺に任せてくれ、俺の家でしっかり面倒みる。
動物病院でしっかり健康診断を受けさせて、ワクチンも接種させる。
ああそれから
去勢もさせねーとな——」
いち男子として聞き捨てならない言葉を聞いた瞬間、イリヤは爪を立てて泉の頬を引っ掻き、一目散にその場を逃げ出した。
レナートは呆気に取られ、泉はぼんやり頬を押さえているが、エリセイは一人冷静だ。
頷きながら「動きもちゃんと猫なんだな」と関心していた。
そんな時に康子が店から顔をだして「そろそろ戻って」と二人の甥に指示を出した。エリセイとレナートは時間切れだ。
仕事中で猫になった弟を探しに行けないエリセイは、代わりにポンチクを連れてくると、リードと散歩袋を泉に託した。
「俺たちの賢いわんちゃんを貸してやろう。匂いでイリヤを見つけられるかもよ」
「責任とって探してこいよな!!」
レナートに重い拳で肩を叩かれた泉は、ポンチクを相棒に、イリヤの捜索を始める事になった——。
* * * * *
さて。この神魂が原因と思しき不可思議な現象は、寝子島の方々でも起こっていた。イリヤと同じように昼寝をしていた人々が、猫に姿を変えてしまう『猫化現象』だ。
変化を起こした世界に気づいた
テオドロス・バルツァだったが、幸いここは猫の楽園・寝子島だ。
「ちょっとばかし猫が増えただけじゃねえか」と鼻を鳴らすと、くるりと身体を丸めて昼寝の続きに戻るのだった。
皆さんこんにちは、東安曇です。
らっかみタイムも2月と言うことでニャンニャンニャンの日に因んで、今回は『PCが猫になったりならなかったりするシナリオ』です。
猫になって楽しく1日を過ごしたり、猫になった仲間でパニックを起こしたり、迷子の猫イリヤを探したり、自由なアクションをお待ちしております。(*行動出来る範囲は寝子島のみです)
猫化ついて
【条件】
▼この日に(昼)寝をしたPCが、起きると猫化してしまいます。数秒寝落ちでも、運が悪ければ猫化です。猫化するかしないかは、PLさんの好きなようにどうぞ。
【猫状態について】
▼少しばかり本能的に行動してしまったりもしますが、基本的には人間としての自我を保っています。
身体能力は猫ですが、ネギやチョコレートなどを食べたりなどは影響はありません。マタタビは人(猫)によります。
▼一般的な猫と同じ外見になります。種類の希望がある方は、アクション欄にご記載下さい。
▼猫化した時点でにゃん語しか喋れなくなるので、人間と会話は出来ません。猫同士は何となくで会話出来ます。
▼ろっこんは使用不可になります。
【解除方法】
▼お馴染み真実の愛のキスでも元に戻ると思うんですが、ほっといても24時になれば戻ります。
▼服は猫化する時にその場で脱げてしまいます。人間に戻った時に都合よく着ている状態には戻りません。ご注意下さい。
NPC
▼猫になったイリヤ・ジュラヴリョフが迷子になってしまい、日本橋 泉がイリヤの愛犬ポンチクを連れて探しています。
(猫イリヤ:イリヤの髪と同じ色の長毛で、同じ灰色の目。全体的にサイベリアンに似ている大きめの猫)
▼イリヤの捜索は、水海道 音春、高知 竹高、幌平 馬桐に協力してもらうことも可能です。
▼イリヤの双子の兄エリセイ、レナートは、自宅でもある『ミルクホール』で働きながらイリヤの帰宅を待っています。
▼大道寺 紅緒は猫化して桜花寮に居ます。伊橋 陽毬は通常どおりで同寮に居ます。