増えるまたたびメイトの謎｜リアクション

増えるまたたびメイトの謎

破：あっさり解明した謎

　――北校舎１階・廊下：天野が保健室に来る数分前

　後木真央がねこったーで拾った場所などを呟き、維都月茉菜が聞き込みをする。と、おぼろげに浮かび上がったのは渡辺　弥栄という２年生。ついでに、彼が家の家事や牛乳配達、妹の世話等で妙に疲れている、という事も判明する。
面白事件はらっかみかもれいびの仕業だと思っている真央はまたたびメイト片手に考え、茉菜もまた、得た情報からちょっと考えてみる。
「そのやっちゃん先輩のろっこんなのだ？」
「発動条件はため息をつくこと……なのかしら？」
　二人はまたたびメイトを拾いながらここまでやってきたが、真央のリュックは半分ほどそれで埋まっていた。
「ともかく、保健室に行って」
「「あっ！」」
　ゴンッ、と鈍い音がした。茉菜が声をかけたが間に合わなかったようだ。乾いた音を立てて散らばる大量のまたたびメイトの箱と数冊の本。真央がぶつかったのは、彼女同様またたびメイトを拾っていた真辺伸幸だった。その後ろには心配そうに２人の様子を伺う弓弦原譲の姿があった。どうやら、茉菜と同時に声を上げたのは彼のようだ。
「ぬーん、痛かったぁ……。ごめんね、だいじょうぶ？」
「こっちこそ、ごめんなさいなのだ」
　真央と伸幸が同時に頭を下げ、再びゴツン。そんな様子に茉菜が少し心配になる。
「二人ともちょっとコブができてるから、保健室に行きましょう」
「冷やした方が良さそうだな」
　譲も２人のおでこにできたこぶを見つつ冷静に判断する。真央と伸幸が「そうだね」と声を揃えて頷いていると……、２人の視線の先に、またたびメイトがあった。
「保健室の前に、か？」
「という事は、渡辺先輩は、今ここに？」
　譲と茉菜が頷き合っていると、後ろから声が聞こえる。緑色の髪が目立つ桜庭円と少し目つきが鋭い御剣刀のコンビもまた聞き込み等から保健室へと向かっていたのだ。
「あれ？　みんな弥栄くんを探してたのかな？」
「……そうかもな」
　円の呟きに刀が相槌を打つと、真央がぴょっこりと顔を上げた。釣られて伸幸達も２人を見た。
「もしかして、これのことかな？」
　伸幸がまたたびメイトを見せると、円は「そうだよ～」と拾った物を取り出す。こうして集まった６人はとりあえず保健室を訪ねてみる事にした。

　そうしながら、円は内心冷たい物を覚えていた。落ちているまたたびメイトの量と、聞き込みで聞いた弥栄の疲労具合から、関連性があるのでは……と睨んでいたのだ。
（疲れに比例してメイトの数が増えているのだとしたら、限界が近いって事かも）

　――北校舎１階・保健室：現在

　椅子に座って、逆巻天野は集まったメンバーをなんとなく見ていた。その中に見知った顔を見つけ、少し考えつつも観察を始めた。彼には周囲の人間を鋭く観察する癖があるのだ。
（後木に、御剣に、真辺……そして猫村も、渡辺って先輩に用があるのか）
　ベッドが嫌いな天野はベッドに腰掛ける、顔色が少し悪い男子生徒を何気なく見た。疲れているのか、わずかにため息を付いたとたん、ポケットからこぼれ落ちるまたたびメイトの箱。その瞬間に、少しだけ目を細める。
（……もしかして、彼は……）
　天野は、無意識のうちに、少しだけ近づいて、よく見ようとしていた。