増えるまたたびメイトの謎｜リアクション

増えるまたたびメイトの謎

序：またたびメイトを辿れば　～昼休み～

　――南校舎２階・廊下

　廊下に転がっているまたたびメイト（未開封）を見つけたのは、後木真央だった。彼女は素早く拾い上げると嬉しそうにリュックへと入れた。
「真央ちゃん、フルーツ味大好きなのだぁ♪　とーってもしゃーわせなのだぁ♪」
　噂通り、ちょっと見ただけでも２、３個落ちていたりする。にゃっふう！　と喜びの声を上げて拾って、またリュックの中へ。非常用のおやつがこうして補給でき、真央はすこぶるご機嫌だった。
リュックいっぱいに拾ったら、猫鳴館のみんなとまたたびメイトでパーティをしよう、と思いついた時、ちょっと先に人が見えた。自分と目的が同じではないか、と真央は考え、てってこ歩み寄って肩を叩いた。

（またたびメイト……本当に落ちてた……）
　件の事件を聞きつけ、興味を持った維都月茉菜もまた、ここでまたたびメイトを見つけていた。元お嬢様だった彼女は、またたびメイトを遠目から見た事しかなかった。
「粗末にしては、勿体無いし……」
　そう言いながら勇気を出して開封し、横目で誰もいない事を確認してから、ぱくっ、と一口。さくさくとした歯ごたえと、ドライフルーツの爽やかな味が口に広がって、目が丸くなる。
（バターの風味も相まって、フルーツの美味しさが引き立ってるっ！　これなら今まで遠目に見てきた、チョコ味やチーズ味も美味しいかも……）
　美味しさに震えながら「食べ比べ、してみたいなぁ」と呟いた時、ぽん、と肩を叩かれる。それに思わず驚き、「ひゃうっ？！」と悲鳴をあげてしまった。
「ごごごめんなさいっ？！」
「どうしたのだ？」
　不思議そうに見る真央に、茉菜はあたふたとまたたびメイトを隠そうとする。が、手が滑って落としてしまった。さらに硬直し、真っ赤になる茉菜。因みに口元にはちょこっとクッキーの破片がついていたりする。
（どどどどどうしよう？！　食べていたのがバレちゃう～～っ！）
　さらにパニックになりそうになっている茉菜の手を取り、真央がにっこり笑った。
「またたびメイトが食べたいのだ？　だったら真央ちゃんと一緒に拾うのだ！」
　……その天使のような笑顔に、茉菜はちょっとだけ落ち着きを取り戻した。
　目的はどうあれ、件の噂について調べている事をお互いに知ると、２人は一緒に行動する事にした。

　――南校舎２階・２年１組の教室

　その頃、２年１組の教室に来ていた御剣刀と桜庭円は噂の人物である渡辺　弥栄の居場所と様子を同じクラスの人から聞いていた。
「渡辺くんだったら、図書室か保健室じゃないかな。本を返したら保健室に行く、とか言ってたから」
　眼鏡を掛けた女子の先輩が言い、保健委員だと言った男子の先輩がため息混じりに答える。
「家事の他にも、牛乳配達も手伝ってるんだって。牛乳配達のアルバイトが全員やめちゃったらしくて……」
　その他にも話を聞きながら、刀の脳裏では１つの仮説が組み上がる。弥栄がもれいびであり、またたびメイトはろっこんによって召喚されたものではないか、と。
（発動条件は『本人が疲れている時にため息をつく』か？）
今はまだ、不思議がられてる程度だが、放っておけばフツウが危なくなるのではないか。そう考えた刀は弥栄にもれいびである自覚を持ってもらおうと考えた。ちらり、と円と視線を合わせれば、彼女も同じ事を考えていたのだろう、小さく頷いてくれた。

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