増えるまたたびメイトの謎｜リアクション

増えるまたたびメイトの謎

　集まった面々を観察していた逆巻天野だったが、あるキーワードに反応を示す。
（牛乳配達……？）
　彼はもう少し様子を見てから、話をしてみよう、と思うのだった。時々聞こえてくる会話などから、『渡辺　弥栄』の状況を把握し、なんとなく考える。
（どうやら、疲れてるとろっこんが発動するのかもしれないな。ため息ついたときとかに……）
　仲の良い友達である伸幸が、たくさんの小箱を抱えている。そのパッケージは先ほど弥栄が落とした物とまったく同じだ。
（こんなに、落としてたんだな。という事は疲労が濃いのかもしれない）
　一人そんな風に考えつつも、天野は牛乳配達の事が気になっていた。もしかしたら、アルバイトができるかもしれない、と。

元々落とし主へと返したかった伸幸が、弥栄へまたたびメイトをすっ、と差し出した。
「ぬん、これを落としたのは先輩だって聞いたよ～」
「違うと思いますよ。……さっきも八神君からそう言われましたが」
　弥栄が訝しげに首をひねると、茉菜はふと、胸に湧いた疑問を口にする。
「もしかして、最近、よくこれを落としたって、聞かれるのかしら？」
「！　そうなんですよ。先日も保健室に行く途中にそう言われまして……」
　ふう、とため息を付けば、彼のズボンのポケットからぽろり、とまたたびメイトが落ちる。それに修以外の面々は目をみはる。

　確かに、弥栄のズボンのポケットから、またたびメイトは落ちたのだ。

（弥栄先輩のろっこんって、『思った物が具現化しちゃう』って効果かな？　でも、なんかそれだとしっくりこないかも……）
　ふと、翡翠はそう考える。またたびメイトは安いが物入りな学生としては余計な出費は抑えたい。これを見る前までは彼女は噂で聞いていた弥栄の妹の所為か、と思っていたがあの瞬間を目撃したからには、その線を捨てていい、と思い直した。
「またたびメイトがたくさん拾えたのは、やっちゃんセンパイのおかげって噂になってるのだ。やっちゃんセンパイのろっこんなのだ？」
「ちょっとまてっ」
　無邪気に真央が笑顔で言うと、刀が肩を叩く。はにゃ？　と目をパチクリさせる彼女に、彼は小声で言った。
「いきなりろっこんとか言われても、わからないと思うし説明しないと……」
「……その、ろっこんって、何ですか？」
　その傍らできょとん、となっていた弥栄に円が小さく笑って言った。
「簡単に言えば、異能力かな。話すと長くなっちゃうんだけど、説明させてもらえるかな？」
　弥栄はその言葉に、「お願いします」と頭を下げ、その言葉を受けて刀が少し考え、ややあって口を開く。
「入学式の時に、『ののこ』という神様がこの島に『落ちて』来たんだ。その時に、彼女は『神魂』という物を世界中にばらまいてしまったらしい」
「それが人間に入ると、『もれいび』となって、その人達が使える力を『ろっこん』と言うんだが……いきなりこう言われても、信じてもらえないかもしれないな」
　刀の言葉に合わせ、修も説明に回る。２人が語った事に、弥栄は初めきょとん、としていたが、真央や茉菜をはじめとしたもれいび達が頷き、彼は目を丸くした。その様子を見つつ更に円が言葉を続けた。
「『ろっこん』は『もれいび』１人につき１つある力でね、色んな形で出たりするんだ。効果も、発動する条件も１人１人違うんだよ！　弥栄君の場合は『疲れていると、またたびメイトを召喚する』という能力なのかも」
　ぽん、と手を打ちながら言う円。その言葉に弥栄は「えっ？！」と驚きを隠せない。