眠猫島夢奇譚　古代ネコ文明（接触編）｜リアクション

眠猫島夢奇譚　古代ネコ文明（接触編）

■Ａパート・１：ゴロゴロ王国のお祭り
「いらっしゃいませにゃー」
「一緒に踊りますにゃー」
「カリカリ食べますにゃー」
　吹奏楽が空に響き、稲穂がニャーニャーの歌に揺れている。
　クラリネットをねじ曲げたような楽器を奏でるネコたちの前を、小柄なネコたちが走って行く。
　綾辻綾花は膝を折って野原に座ると、駆け寄る子猫を抱きかかえた。
「人間のだっこは高いにゃー！」
　手の中できゃっきゃと暴れるやんちゃなネコに苦笑しながら、周りのネコたちに問いかけた。
「こんにちは。これはどんなお祭り？」
「人間さんとお友達になったお祭りですにゃん。国王さまから聞いておりませんにゃん？」
　エプロンをつけた母親らしきネコが歩いてくる。
　どうやらゴロゴロ王国のネコたちは二本足でも四本足でも歩けるようだ。
　生物学的物理学的におかしな話だが、みなしっかり歩いていて、ぐらつく様子もない。皆大なり小なりフシギな力を持っているのが、見て分かる。だって喋ってるし。
「今聞きましたよ。そうですね……じゃあ、一緒に踊りましょう。花冠の作り方、あとで教えてくださいね」
「はいですにゃー」
「一緒に踊りますにゃー」
　子猫たちに導かれて広場へ到着すると、既に羽生碧南がネコたちに混ざって踊っていた。
　踊っていたと言うか、ブレていたというか、不思議な儀式にすら見えた。
「いい？　私が暑苦しく踊るから、私に見られてない時だけポケットに手を入れてかったるそうについてきて」
「にゃー」
「それじゃあいくわよ、あせーのっ」
　それから暫く、気合いの入れどころを間違えた盆踊りみたいな儀式が開催されていた。
　あの人はゴロゴロ族のネコたちになにを教えているんだと思ったが、なんか楽しそうなのでよしとした。よしとする。
「あの踊りをしますかにゃ？」
「私は、ちょっと……」
　両手を翳してやんわりノーサンキューする綾花に、花の髪飾りをした白猫たちが駆け寄ってきた。
「ならこっちで、一緒に花冠をつくりますにゃ。綺麗にできると楽しいですにゃ」
　綾花はにっこり笑って、白猫たちについていった。

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