練習！勉強！武者修行！？｜リアクション

練習！勉強！武者修行！？

　テーブルの上にばら撒かれた、とりどりの素材と道具。これらは全てアクセサリーを制作する為のものだ。
　部屋の照明に反射する眩い金属光を見つめながら、水上桜はため息をつく。——ああ、今月のお小遣いは全滅だ。
　シーサイドタウンのアウトレット内にあるアクセサリーのパーツ専門店でこれらの買い物をしたのは、桜が某魔法少女事件に巻き込まれた後だった。テンションが上がった所為で、ついあれこれと購入し過ぎてしまった。近頃出費が重なっていたのに、随分無茶をしたものだと自分に呆れている。
　来月までどうしようか。もし今友達に「高校進学試験終わったし、パーっと遊ぼうよ！」などと誘われたらどうしようか。
　そんな自問がぐるぐる頭を回っている。
「ええい、気にしちゃ負け！　今度こそ普通にアクセサリー作りに励むんだから！！」
　桜は両手の平でテーブルを叩くと、椅子を引いて立ち上がった。

　ピンセット、ピンドリル、ピンバイスなどの工具類が揃っているか確認すると、UVライトの電源コードを繋ぐ。そしてルーズリーフを取り出し、パーツの横に広げて、椅子の上に戻る。
　これらの準備が終わると、次は白い紙とパーツを腕を組んでじっと睨んだり、逆に宙を見つめて無我の境地に至る時間だ。もともとあったアイディアと、インスピレーション的に降って湧いてくるものを繋ぎ合わせて、デザインを頭の中で完成させ、紙の上に起こしていく。
　桜はこんな調子で何枚か書き上げたものの中から、「これは」と思えるものを一つ採用した。

　作り始ようとしているのは、近頃桜のようなハンドクラフト趣味の間で流行しているUVレジンチャームだ。細かいパーツや絵などを、UVレジン——紫外線硬化樹脂をフレームになるパーツに流し込んだアクセサリーである。
　桜は今回、デザインの中心に、小さな鍵の形のパーツを選んだ。この真鍮系の鍵とフレームによって全体はアンティークな印象になるだろうが、シーグラスやラメパウダーでキラキラさせて華やかに仕上げるつもりだ。
　早速レジン液を取り扱う為の手袋を付けると、フレームパーツに液を流し込んでいく。
　気泡を作らないように慎重に、慎重に……。桜の若く綺麗な額に、熟練の職人のようなシワが寄った。
　表情にも手つきにも、彼女の情熱的な性格が表れているが、反面（まあつぶせばいいし、できたらできたでデザインの一部とごかませるけどね！）と頭の片隅で思ってしまうのもまた桜なのだった。
　

このページにイラストを設定する