【４周年記念】異世界ばっひゅーん｜リアクション

【４周年記念】異世界ばっひゅーん

　綾辻綾花は制服を着て寝子島高校に訪れていた。職員室に赴き、事情を説明して鍵を受け取った。
　廊下を早足で歩く。図書室の鍵を開けて中へと入った。最初から決めていたかのように一つの本棚に向かう。中段の辺りに目をやると一冊分の隙間が空いていた。
「ここですね」
　小脇に抱えていた黄色い本を目の前に掲げる。
　――無事に返却されて良かったです。では、本棚に戻しましょう。
　隙間に本を入れようとした。

　身体が斜めに傾ぐ。呆気に取られて口が開いた。

「どうして私は空にいるのでしょうか」
　心地良い浮遊感に間もなく笑みが零れる。周囲の空の広さに、わぁー、と子供っぽい声を上げた。
　同じような声が近くから聞こえる。キョロキョロと見回しているところに七夜あおいが目の前に降ってきた。ツインテールをふんわりと上げて猫のプリントされたピンクの服が愛らしい。
「あおいちゃんも来ていたのですね」
「綾花ちゃんもだね。最初は本当にびっくりしたよ。散歩してたら急に空なんだから」
「私は学校の図書館にいました」
　手に持っていた黄色い本を見せる。でも、と二人は同時に口にした。おかしそうに笑って互いの手をパチンと合わせた。
「楽しいよね！」
「楽しいですね！」
　同じような言葉に、また笑みを交わす。あおいは周囲の様子に目をやる。
「私は色々と回ってみる。空の散歩もたまにはいいよね」
「では、私も好きなところを散歩します」
「じゃあ、またね！」
　あおいは大きく手を振って回るように離れていく。小さく手を振って見送ると綾花は別の方向に目を向けた。
「ちょっとした冒険気分です」
　空を歩くように足を動かす。ゆったりした空中散歩に出掛けていった。