【４周年記念】異世界ばっひゅーん｜リアクション

【４周年記念】異世界ばっひゅーん

　トワ・E・ライトフェロゥは早々と散歩に出掛けた。フリルをあしらったパゴダ型の傘をくるくると回しながら歩く。
　突然、表情が明るくなった。
「今日はparkでー、slideあーそーびーするマス！」
　黄色いドレスのスカートをふんわりと膨らませて走り出す。
　着いた公園で子供らしい笑顔を見せた。砂場の近くにある滑り台に駆け寄るときょとんとした顔付きになった。階段を塞ぐように立てられた看板に顔を近づける。
『ペンキ塗り立て　使用禁止』
　青い瞳が片仮名に注がれる。近くに落ちていた枝を拾って滑り台の一部に押し付けた。先端には鮮やかな色が付着していた。
「こんな時にはー、メリーgoなのデス！」
　小さな拳を突き上げた。

　地面が消えた。トワは傘を差した状態で空にいた。
「flying skyデス？」
　頬に手を当てて笑顔を増大させていく。

「flying falldownであるマス！」
　高い山に登った時のように大きな声を出した。耳に手を当てて、じっと待つ。
「ヒャッホー、ボッシューされたデス」
　緩やかな流れの中、トワはきょろきょろと周囲を窺う。
「Goingメリーなくて、flying メリーは……dreamなるましたカー」
　下の方に歪な三角形の雲を見つけた。トワは顔を突き出した。
「slideあそびするデス！」
　雲の頂点に片足を掛ける。
「get onできるマス！」
　トワはぴょんぴょんと跳ねて喜んだ。足場が平らになった。
「作れるデスよ！」
　手で大まかに形を作り、足で踏み固めて階段を設えた。滑り易いように傾斜の部分は滑らかに仕上げた。
　試しに滑ってみる。トワの表情は子供ながらに渋い。距離に不満があるようだった。
「Cloud いっぱい集めるデス！」
　近くの雲を引っ掴み、傾斜に足した。傘を手に辺りを飛び回って雲を集め続けた。その奮闘が巨大な構造物を作り出した。滑り台の域を遙かに超えている。
「loop coasterでー、ぐるーデス！」
　一番、速度の上がるところが一回転と、その全体はジェットコースターを彷彿とさせた。
　トワはふんわりと飛んで階段に着地した。笑いが止まらない様子で登っていく。
　頂上に立って、ふわぁー、と欠伸にも似た声を出した。青い瞳を巡らして周囲の景色を楽しむ。
　間もなくして傾斜に両足を投げ出した姿で座った。開いていた傘を閉じて、プフフフ、と口に小さな拳を当てて笑った。
「トワいくまーす！」
　元気な声を上げて少し前に出た。垂直に近い傾斜をトワが滑る。受ける風圧で額が露わになった。
「ビュービュー、Windがキャーですヨ！」
　抑えられない笑顔でトワが叫んだ。身体が左右に揺さぶられる。その中、そそり立つ壁に直面した。
「ぐるーデデデス！」
　振動の激しさに声が震える。天と地が綯い交ぜになって最後が見えてきた。コースの先端は反っていた。
「おもーきり、flyするデス！」
　トワは飛んだ。縦にゆっくりと回転して空の彼方に打ち上げられた。
　黄色い傘が瞬時に開いた。回転は緩やかに収まり、ふわふわと空を舞う。
「トワはー、todayも元気いっぱいデスヨ！」
　笑顔で声を張り上げる。遠くにいる友達の耳に届けるかのように――。