スクール水着は世界を救う｜リアクション

スクール水着は世界を救う

【６】

（今日はやっぱり何か変……？）
　数学の授業中だった碧南は桐島先生の視線に妙な雰囲気を感じていた。
　まるで見たことのない生き物を見るような、駅で風変わりなおじさんを見たときのような。
　そんな目でちょくちょくこちらを見ているような気がするのだ。
（なんか気になるな……私、何か変かな？）
「あー、コホン。羽生、次の問題解いてみろ」
「え？　わ、私ですか？　わ、わかりました！」
　全然問題を見てなかった。解けるかな……と思いつつ、黒板の前に立つ。
　苦手な数学なので苦戦しつつも、どうにか解を導き出すことができた。
「ふぅ……。どうですか、桐島先生？　……あの、先生？」
「……………………」
　先生は黒板ではなく、彼女のスク水をじぃっと見ていた。
「せ、先生？」
　しかも、先生だけではなかった。
　クラスの男子の何人かは食い入るように彼女のスク水を見ている。真っ赤な顔で。
（な、何この空気？　答え間違ってるのかな？）
　あのー、と再び声をかけたそのとき。
「！　おい、しっかりしろ！」
　慌てて、先生が一番前の席の男子に駆け寄った。
　男子の鼻からはつつーと鼻血が流れ落ち、ノートに赤い花を描いていた。
「え？　だ、大丈夫？　のぼせちゃったの？」
　心配する碧南をよそに、先生は保健委員は誰だと声をかけた。
　とりあえず、保健室に、と負傷した生徒を外に出す。
　碧南にしてみれば、何が何やらよくわからない。
（気のせいかな……？）
　教室を出る前、鼻血の男子が自分にサムズアップしていったのは……。
　謎は深まるばかりである。

　＊＊＊

　そして、桐島先生の謎もますます深まっていく。
　今日は気のせいか、妙な格好をした生徒がいるような気がする……。
　何かがおかしいのは確かだ、しかし、何がおかしいのかわからないので注意もできない。
　何故、わからないのか……。
　それは神経質な先生にとって相当なストレスであった。
　晴れることのない謎を抱えて、やってきたのは次の授業。次は１年1組だ。
　しかし、そこでもまたストレスに直面する。

　＊＊＊

（気のせいかな……。義弘先生が見てる気がする）
　宮祀智瑜は憧れの先生の視線に戸惑っていた。
　もちろん、大好きな先生に見てもらえるのはうれしいが、そんなに見られると照れてしまう。
（どうして見てるんだろう……。何かいつもと違うのかな……）
　自分の格好を見ても、特に目立ったところもない。ごくごく普通のスク水だ。
　寝子校指定の水着だし、校則違反というわけでもないだろう。
　それとも、本当に気のせいなのかな……とも思った。
　先生が好きすぎるあまり、先生が見てるような気がする……とか。
（ううん、今は授業に集中しなくちゃ、先生の授業は頑張らないと）
「じゃあ、次の問題わかる者はいるか。……あーその、宮祀、解いてみろ」
「え？　あ、あの、手は挙げてませんけど？」
「そ、そうだったか？　ま、まぁいい、前に出てこい」
「は、はい。わかりました」
　黒板の前に立ち、問題と向き合う智瑜。
　前に解いたことのある問題だ、落ち着いてやれば解けるはず。
　しかし、落ち着かない。さっきよりも先生の視線が矢のように突き刺さってる……気がする。
（義弘先生、どうしてそんなに見てくるの……？）
　だんだん、解けるはずの問題もわからなくなってきた。
「あ、あの、ここが分からないんですけど……？」
　先生のほうを向くと、弾けんばかりに実った彼女の大きな胸がたぷんと揺れた。
「！！！？」
「？　先生？　どうかしたんですか？」
　少し先生のほうに歩みを寄せる。たぷんとその度に胸が揺れた。
「！！！！！！！？」
　これにはたまらず先生も後ずさり。
　特に智瑜はおかしな格好はしていないはず……なのに何故、こんな背徳感を感じるのか。
　何故にこれほど見てはいけないものを見ている気分になってしまうのか。
　わからない。ああ、わからない。
　わからないというストレスで、先生の胃はキリキリと痛んだ。
「義弘先生？」
　とどめとばかりに、智瑜は上目遣いで無言の先生の顔を覗き込んだ。
　ぷるぷるとつっつきたくなる谷間が、胸元からこれでもかとアピールしている。
　先生は光速の速さで目を逸らした。
「チャ、チャイムには少し早いが授業はここまでにする……！」
「えっ？」
　そそくさと逃げるように先生は教室を出て行ってしまった。痛む胃を押さえながら。
「ど、どうしちゃったんだろう、先生……？　変だよね……？」

このページにイラストを設定する

スクール水着は世界を救う

シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧