スノーマンとの戦い＆のんびりコタツムリ？｜リアクション

スノーマンとの戦い＆のんびりコタツムリ？

「これでよし……とはいかないと思うけど」
　武道からされた来客用スリッパを、遥斗は礼を言って受け取った。
「他に誰もいないか」
　櫻は窓から見える雪景色を見ていた。
　大雪になっている寝子島ほどではなく、雪はしんしんと降っている。だが、同じく止みそうな気配はない。
「大雪をどうにかするには、あの雪だるま共を倒せばいいみたいだが……それにしても、動く雪だるまとは面妖な」
「俺も、それには興味が」
　自らの身長を越すほどの雪だるまが動いている。不思議な存在に遥斗とて気にならずにはいられない。
「サムイの苦手ダシこれ続くのキッツイヨ！――何とかしなくちゃだけど、どう戦っていこうかなコレ」
　ろっこんが通じなかった武道。むしろ突いた指の方が痛くて冷たくて麻痺しそうだ。
「剣の雪だるまは危ないが、他の雪だるまは致死性の攻撃はしてこないようだ。先にそちらから対処しよう」
　櫻の提案に、武道はうなずいた。
「なら、プランBで行くか」
「志波、なにか思いついたのか？」
「俺が囮になろう」
「……それは作戦なのか？」
「死ななければ多少の雪玉くらいDIE・JOB・SA！」
「そうだな。死ぬ直前までならアリか」
「あ、櫻ちゃん冷たい☆」
　二人の方針は決まった。自然と視線が遥斗に集まる。
「俺も先輩たちと一緒に戦います。行きますよ」
「分かった。だが、もう少し休めた方がいいだろう」
　櫻が遥斗の足の様子を見ようとかがむ。反射的に身を強張らせる遥斗。先んじて武道が足を確かめ言った。
「なら、遥斗くんにはもう少し保健室で休んでもらおう。一度俺と櫻ちゃんとで様子を確かめてから、連絡して来てもらった方が良さそうだし。あ、携帯の番号だけ教えて☆」
「分かりました。配慮感謝します、先輩」
　そうして、武道と櫻は二人で学校を出ることになった。幸い、雪だるまたちの痕跡はかろうじて残っている。
「少しは物音くらいするだろうし、それを頼りに探していこう。櫻ちゃんは離れてついてきて」
「分かった」
「見つけたら、俺が囮になっている間に櫻ちゃんが仕留めて――で、問題は相手が気付いて櫻ちゃんに発砲してきた場合だけど」
「なに、それなら問題ない。全て切り落とすか叩き落せばいいだけだ」
「頼もしいネ！それじゃ、作戦始めようか☆」
　武道はおもむろに上着のボタンを緩めると、音が出るほどの勢いで脱いだ。
「超寒い！上着脱いだだけで超サムゥイ！」
「……」
「よし、行くよ。おーい、まるまるころころ雪だるまーん！」
　と、武道は大騒ぎして歩き出した。

「早く先輩に追いつかないとな」
　保健室のベッドに腰掛け、遥斗は赤く腫れ上がった足に力を込める。なんとか感覚も戻ってきていた。
（これならほとんど問題ないか……？）
　感触を確かめている最中、遥斗は訝しげに眉をひそめた。廊下から妙な物音が聞こえてきたのだ。
　ザシュ、ザシュ……文字で書けばそんな音だろうか。まるで雪の上を歩いているかのような音だ。
　――雪だるまか？
　音は徐々に聞こえなくなっていく。そっと廊下を伺えば、階段の方から微かな残響が聞こえるばかりになっていた。
「確かめるしかないか」
　竹刀を素早く手に取ると、遥斗は正体不明の敵を追った。