スノーマンとの戦い＆のんびりコタツムリ？｜リアクション

スノーマンとの戦い＆のんびりコタツムリ？

「八神さん、この密室は結局なんなのでしょう？」
「さっきのメモの通りなんだろうな」
　常闇月と八神修は、テオの声を聞いたのち、出口のない部屋で相対することとなった。
　密室という状況に最初は何が起きるのかと警戒はしたものの、中央にあるコタツにあったメモを見た後、二人ともこの状況を満喫しようということになった。
「コタツだもんな！　コタツ！」
　はしゃいだ様子でコタツに触れる修。布団をまくって中を調べたり、その電気的な仕組みを見ては声を漏らしている。
　やがて、月の問いたげな視線に気付き、修は照れ笑いを浮かべた。
「実は、俺の家にはコタツがなくてさ。あ、テレビで見たことはあるぞ」
「八神さんもでしたか」
「……常闇もか？」
「聞いたことはあるのですが、触れたことはありませんね」
「なら、いい機会じゃないか。俺と一緒にコタツデビューだ」
　修が中に入る。促され、月もまた布団をまくった。中から見える、炎を思わせる赤熱の光と熱波に不思議な感慨を抱きつつ、いそいそと中に入る。
「暖かい……」
「ああ、これは気持ちいいな」
　温泉に入っているような心地良さに包まれ、修と月は穏やかな息を吐き出した。
「ここで物を食べたり、団らんしたり、テレビを見るんだな」
「幸せな時間ですね」
　イメージして、うなずきあう二人。
　やがてこの部屋の当初の目的に思い至った。
「楽しめばスノーマンに対処できるということですが、スノーマンとはなんでしょう？」
「そうだな……」
　修は考える。
　この数日、島には異常な積雪があった。その上でテオのこの行動は、雪と関連したナニカが現れたということなのだろう。
「それがスノーマン、ですか」
「世界的に有名な絵本がある。命を持った雪だるまの話で、主人公の少年は空を飛んで雪だるまたちのパーティ会場に行くというものなんだが……俺はこの部屋も、その話に関連した役割があるように思う」
「楽しむ……パーティ会場、でしょうか」
「おそらくはね。パーティが終われば少年は家に戻り、雪だるまは溶けてしまう。同じかは断言できないが、ここは割り切って楽しむとしよう」
「じゃあ、何をして楽しめばいいでしょう？」
「そうだな……あれがあれば」
　修がそう言った瞬間だった。コタツの上に参考書やプリント、筆記用具が現れる。
「……ここは、念じたものが現れるのか」
　修が嬉しそうに笑みを浮かべた。現れたそれが学校の宿題だとわかり、月もクスリと笑った。
「宿題とは準備がいいですね。私もしましょうか」
　月の手元にも、宿題が生み出される。
「ちょうど、この問題の解き方を知りたかったのです」
「この問題か。ああ、これは――」
　修が説明しようと乗り出す。彼の足がコタツの中で何かにぶつかった。
「すまない。ぶつかった」
「え？　私はぶつかってませんが」
　月が不思議そうな顔をする。
　そのとき、
「いったぁ……」
　二人のものとは違う、誰かの声が聞こえた。
　修と月が驚いて見れば、死角となった一辺に、いつの間にか誰かがコタツにすっぽり入る形で眠っている。
　真境名アリサだった。

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