今日から自宅警備員になりました。｜リアクション

今日から自宅警備員になりました。

【サイドI：羽生碧南の不運】

　罠に掛かり入り口に飛ばされた碧南は、考え抜いた末に違うルートを行くことにした。
　そして４の部屋で響タルトと出会い、７の部屋へやってきたのだが……。

　※このボタンを押してね♪※

　入り口側に立てかけられた看板と、あからさまに怪しい赤ボタン。
　立て札に書かれた文字を凝視し、碧南は再び熟考する。

「これって……」

　タルトの言葉を信用するならば、美少女・美男子・美猫の熱いおもてなしを受けることになるのだろう。
　一度目の失敗もあって警戒心を強めた碧南は、安易にボタンは押さず、そのまま部屋を通り抜けることにした。
　もちろん、他の罠がないか警戒を怠ることはない。

（……うん、本当に他に罠はなさそうね）

　ならば次はボスの部屋。心の準備をしてから部屋を出ようと、碧南が立ち止まったときだった。

「あら、これが響さんの言ってたボタンね。……えい！」

（えい？）

　背後から聞こえた不吉な言葉に、碧南の背筋が粟立つ。
　巻き込まれる前に部屋を出てしまおう、そう決意するも、碧南は意思とは無関係に強引に身体を反転させられ、近くの壁に追い込まれた。

「おい……なんで俺のこと無視してんだよ」

　碧南の顔のすぐ側に手を付き、格好をつけるのは赤髪、吊り目のイケメン。

「そんな風に碧南のこと追い込んで。余裕なさすぎ、ダサいよそういうの」

　その赤毛のイケメンを非難するのは、涼し気な目元が印象的な青髪のイケメン。
　その後も元気一杯可愛い系金髪イケメンに、柔和な笑顔が素敵な癒し系緑髪のイケメン。
　戦隊モノよろしくカラフルなイケメン達が現れ、それぞれ我こそはと碧南を求め、争っている。

（うわぁ……）

　碧南は群がるイケメン達をまじまじと眺め、目を輝かせた。
　彼らは碧南のお気に入りの乙女ゲームのキャラクター達。
　そして碧南はヒロイン扱い。

（私、このまま『美しい罠』に引っかかって、ゲームオーバーかも……）

　緊張と高揚感で素肌は白桃色に染まる。

「碧南ちゃん、一緒にケーキ食べよ？」
「……うん」

　上目遣いで小首を傾げる金髪君。
　碧南に、そのおねだりを跳ね除けられるはずもない。

【羽生碧南は７の部屋でイケメンのおもてなしを受けて、足止めを食らう】