今日から自宅警備員になりました。｜リアクション

今日から自宅警備員になりました。

【サイドD：響タルトの遭逢】

　タルトが５の部屋を見回っていると、ちょうど八神修と七夜あおいが扉を開けてやってきた。

「あ～！　八神くんだ！」

　タルトはやや警戒心を覗かせる二人に無防備に近づいていくと、お決まりの文句を口にした。

「お誘いはありがたいが、せっかくここまで来たんだ。遠慮しておくよ」
「え～」

　口を尖らせ不満を漏らすが、だからといってタルトは二人に襲いかかる気はまるでない。

「ここに来るの、すごく大変だったから」
「そんなに大変だったなんて……どんなトラップだったの？」
「本当に大変だったよ……一度目のささやき戦術もだが、二度目なんてあの巨体で上に……」

　語るうちに、修の顔色は見る見る蒼く変化する。
　しかしふと口を閉ざすと、ふっと目尻を緩めて微笑んだ。

「……あおいが助けてくれなかったら、たぶん二度目も失敗していたな」
「それは言わないで……恥ずかしかったんだから」

　楽しそうな二人に生暖かい視線を送りながら、タルトはぼんやりと考えを巡らす。

（考えてみるとこれって、自宅警備員が自宅を抜け出せない最大の罠でもあるよねえ。
　ま、僕としては美少年同士の絡みが見られればおいしいけど）

　タルトはフニャンと口を緩める、がはたと気が付く。

（……って見回りのせいでそれも見れないじゃん、しまった～！）

　そこからはもう目の前の友人のことも忘れて、タルトはひたすら後悔に耽る。
　修とあおいがこっそりと立ち去っても、タルトはそれに気が付かないほどだった。

（もしかしたら、今もあんなことやこんなことになってるかもしれないのに！）

【八神修は２の部屋で富士山権蔵の挑戦に成功した。５の部屋に進む】
【八神修は５の部屋で響タルトに遭遇した。８の部屋へ進む】