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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
寝子島グレートレース
新田 亮は人の多い大通りを避けた。走り抜ける際に無駄な体力を消耗する。寝子島一周の目標の為には必要な選択であった。
――疲れは感じるが、俺は諦めていない。
路地を抜けて二車線の道に合流した。歩道は狭いが人通りは少ない。
亮は歩道を走った。やや視線を下げて一定の速度を保つ。前方から話し声が聞こえてきた。
「今日は猫の姿を見ていないね。お守りを咥えた茶トラはどこだろう。やはり、狭い路地に隠れていたりするのかな。カーキーは、どう思う？」
八神 修は柴犬のカーキーに話を振った。数秒と空けずに、クゥ～ン、と困ったような声を返す。
「猫か」
亮は周囲を見遣り、納得した。目は前方に向かう。隙間を探すように動いた。
――抜けられないこともないが、犬に当たりそうな気もする。仕方ない、少し様子を見るか。
方針が決まった瞬間、急激に速度を落とした。前方の修が立ち止まってペットボトルの中身を飲み始める。傍のカーキーには自らの掌に注いで与えた。
亮は走るのを止めて歩いた。早足で抜きに掛かる。直前に修が顔を向けた。
「少し聞いてもいいかい？」
「猫のことなら俺は知らない」
「そうか。君も走っているみたいだね」
修は亮の姿を見て言った。
「そうだ。この島を一周するつもりだ」
「それは凄いな。俺は自己記録を更新しようと思っている。どうだろう、一緒に走らないか」
修の言葉に僅かに熱が籠る。亮は即座に挑戦と受け取った。
「この俺についてこれるのか？」
「試してみるかい」
「もちろんだ」
亮は逸早く地面を蹴った。滑らかな手足の連動で速度を上げる。曲がる道を利用して後ろに目をやると、苦しそうな表情の修の姿があった。
――目算で六メートルか。意外とやるな。
前を見て更なる加速に入る。
「あれは北条か」
目は斜め前に固定された。車道を挟んだ歩道を北条 冬華が走っていた。黒のタンクトップがはち切れんばかりに迫り出し、無秩序な動きで揺れている。
――凄いとしか言いようがないな。
冬華の接近に比例して亮の足が遅くなる。その間に修は横に並んだ。
「何か、見えるのか。もしかして例の猫か」
「クラスメートがいただけだ。それと、あれはなんだ？」
冬華の後方から追い上げてくる人物がいた。赤いジャージを着た伊賀 解理であった。突然、鷲掴みするような両手で叫んだ。
「その不謹慎な胸部装甲を、ゼェ、僕の握力で、ハァハァ、擦り減らしてくれる！」
「解理さん、私が何かしましたか？ 思い当ることがないのですが」
冬華は前を向いたまま、大きく弾む胸で不思議そうに聞いた。
「問答無用！ とにかく胸を揉ませろ！ 拒むなら胸をもがせろ！」
「胸は揉まないでください。それと、もがせろって何ですか？ 梨狩りの季節は終わりましたよ」
「今が収穫祭なんだ！」
解理は裏返る声で叫んだ。
目の当たりにした亮は呆然として立ち尽くす。
「なんだ、あの痴女は」
「伊賀は、その、おかしな人物ではないはずなんだが」
「あれでか」
亮は血走った眼で追い掛ける解理を指差した。修は苦笑して、どうだろう、と答えた。
冬華は走りながら、仕方ないですね、と口にした。急激に速度を上げる。
その結果、解理は明らかに戦意を喪失した。体力も底を突いたのか。項垂れた姿で立ち止まる。心配になった修が声を掛けようとした。
その時、解理は天に向かって拳を突き上げた。
「我が生涯に一片の膨らみなし！」
言い放つとがっくりと首を折った。
修は視線を流して亮に向き直る。
「走りの続きをするか」
「そうするか」
二人は逃げるようにして、その場を去った。
海が見える道を競り合って走る。島を一周の話は忘却の彼方に消えた。両者は闘志をぶつけ合い、そして力尽きた。
寝子島大橋が見える大地に横たわった。落ちていた木の葉は柔らかく、天然のベッドのようだった。
亮は仰向けの姿で顔を横に向ける。似たような姿で修が目を閉じていた。カーキーは主人の掌を舐めていて、それに構うように指を動かしている。
「俺は新田亮だ」
「俺は八神修だ」
名乗った二人は風に吹かれて暫しの眠りに就いた。
――疲れは感じるが、俺は諦めていない。
路地を抜けて二車線の道に合流した。歩道は狭いが人通りは少ない。
亮は歩道を走った。やや視線を下げて一定の速度を保つ。前方から話し声が聞こえてきた。
「今日は猫の姿を見ていないね。お守りを咥えた茶トラはどこだろう。やはり、狭い路地に隠れていたりするのかな。カーキーは、どう思う？」
八神 修は柴犬のカーキーに話を振った。数秒と空けずに、クゥ～ン、と困ったような声を返す。
「猫か」
亮は周囲を見遣り、納得した。目は前方に向かう。隙間を探すように動いた。
――抜けられないこともないが、犬に当たりそうな気もする。仕方ない、少し様子を見るか。
方針が決まった瞬間、急激に速度を落とした。前方の修が立ち止まってペットボトルの中身を飲み始める。傍のカーキーには自らの掌に注いで与えた。
亮は走るのを止めて歩いた。早足で抜きに掛かる。直前に修が顔を向けた。
「少し聞いてもいいかい？」
「猫のことなら俺は知らない」
「そうか。君も走っているみたいだね」
修は亮の姿を見て言った。
「そうだ。この島を一周するつもりだ」
「それは凄いな。俺は自己記録を更新しようと思っている。どうだろう、一緒に走らないか」
修の言葉に僅かに熱が籠る。亮は即座に挑戦と受け取った。
「この俺についてこれるのか？」
「試してみるかい」
「もちろんだ」
亮は逸早く地面を蹴った。滑らかな手足の連動で速度を上げる。曲がる道を利用して後ろに目をやると、苦しそうな表情の修の姿があった。
――目算で六メートルか。意外とやるな。
前を見て更なる加速に入る。
「あれは北条か」
目は斜め前に固定された。車道を挟んだ歩道を北条 冬華が走っていた。黒のタンクトップがはち切れんばかりに迫り出し、無秩序な動きで揺れている。
――凄いとしか言いようがないな。
冬華の接近に比例して亮の足が遅くなる。その間に修は横に並んだ。
「何か、見えるのか。もしかして例の猫か」
「クラスメートがいただけだ。それと、あれはなんだ？」
冬華の後方から追い上げてくる人物がいた。赤いジャージを着た伊賀 解理であった。突然、鷲掴みするような両手で叫んだ。
「その不謹慎な胸部装甲を、ゼェ、僕の握力で、ハァハァ、擦り減らしてくれる！」
「解理さん、私が何かしましたか？ 思い当ることがないのですが」
冬華は前を向いたまま、大きく弾む胸で不思議そうに聞いた。
「問答無用！ とにかく胸を揉ませろ！ 拒むなら胸をもがせろ！」
「胸は揉まないでください。それと、もがせろって何ですか？ 梨狩りの季節は終わりましたよ」
「今が収穫祭なんだ！」
解理は裏返る声で叫んだ。
目の当たりにした亮は呆然として立ち尽くす。
「なんだ、あの痴女は」
「伊賀は、その、おかしな人物ではないはずなんだが」
「あれでか」
亮は血走った眼で追い掛ける解理を指差した。修は苦笑して、どうだろう、と答えた。
冬華は走りながら、仕方ないですね、と口にした。急激に速度を上げる。
その結果、解理は明らかに戦意を喪失した。体力も底を突いたのか。項垂れた姿で立ち止まる。心配になった修が声を掛けようとした。
その時、解理は天に向かって拳を突き上げた。
「我が生涯に一片の膨らみなし！」
言い放つとがっくりと首を折った。
修は視線を流して亮に向き直る。
「走りの続きをするか」
「そうするか」
二人は逃げるようにして、その場を去った。
海が見える道を競り合って走る。島を一周の話は忘却の彼方に消えた。両者は闘志をぶつけ合い、そして力尽きた。
寝子島大橋が見える大地に横たわった。落ちていた木の葉は柔らかく、天然のベッドのようだった。
亮は仰向けの姿で顔を横に向ける。似たような姿で修が目を閉じていた。カーキーは主人の掌を舐めていて、それに構うように指を動かしている。
「俺は新田亮だ」
「俺は八神修だ」
名乗った二人は風に吹かれて暫しの眠りに就いた。
あとがき
担当マスター：
黒羽カラス
ファンレターはマスターページから！
今回は走ることに特化したシナリオとなりました。
ＰＣなりの理由で思い切り走れましたでしょうか。
中には追掛けられたＰＣもいましたが、
良い運動になったと思います（胸の大きさは変わらず）。
気付いた人もいるとは思いますが、シナリオのタイトルはテレビを観て思い付きました。
グレートレースなので異次元や異生物をてんこ盛りにした命懸けのレースを、
という妄想は途中で捨て去りました。スペースオペラ化しそうになりましたので。
とにもかくにもご参加、ありがとうございました。
ＰＣなりの理由で思い切り走れましたでしょうか。
中には追掛けられたＰＣもいましたが、
良い運動になったと思います（胸の大きさは変わらず）。
気付いた人もいるとは思いますが、シナリオのタイトルはテレビを観て思い付きました。
グレートレースなので異次元や異生物をてんこ盛りにした命懸けのレースを、
という妄想は途中で捨て去りました。スペースオペラ化しそうになりましたので。
とにもかくにもご参加、ありがとうございました。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2016年08月24日
- 参加申し込みの期限
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- 2016年08月31日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2016年08月31日 11時00分
