【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治

　もぞもぞと蠢くスライム達は、動きが遅い。先手必勝とばかりに勘三郎が飛び出した。

「雑魚は一掃！　そーれっと！」
　勘三郎が手袋を着けた腕をぶん！　と振る。ザーッ！　と勢いよく風が起こり、何匹ものスライムがびちゃびちゃと体を吹き飛ばされていった。

　だるそうではあるが楓子も両手の指輪をきらりと光らせながら風を起こす。舞い上がり壁に叩きつけられるスライム達を見ながら、
「スライム倒すごとにコインに変わればいいのに……」
と呟くのは、重度のスマホゲーム中毒故だろう。

　その横で日和も華麗にバイオリンを構える。
「さあ、風の魔法を聞かせちゃうよ！」
　そう言って巧みに弓を操り弾き始めた。胸元の緑のブローチがぼうっと光って風が巻き起こり、素晴らしい音色に乗ってスライムを吹き飛ばす。

　しかしいくら動きが遅いスライムでもここまでされて黙ってはいない。彼らは向きを変え、ズルズル動きながら溶解液を発射してきた。
「……お、反撃」
「ひゃあ！」
　咄嗟の事に楓子と日和の反応が遅れる。そこにすかさず一陣の風が起こり、彼女達に迫る溶解液を見事に吹き飛ばした。

「大丈夫か？」
　そう言いながらも鋭い瞳でスライムに向かって竹刀を構え直したのは遥斗だ。そしてまた１歩踏み込み勢いよく竹刀を振る。彼はろっこんで風を起こしたつもりだったが、いつもとは比較にならないほどの強い風が舞い起こり、スライム達が気流に巻き込まれ壁面にぶち当たり、ずるずると崩れながら落ちていった。
　彼が思わず竹刀を見ると、柄が緑の翼状の淡い光を纏っている。
「星の、力か……？」
　遥斗が驚きながら呟いた。

　時子もスライムの前でさっと扇を構え、優雅に踊るようにそれを振った。
　ひらり。幾つもの火の玉が現れる。そしてそれは小さな鳥を形作り。ひらり。鳥たちが一斉にスライムめがけて襲いかかった。ボッと音がして火の手が上がる。スライム達が纏めて炎に包まれた。
「ちょっと強かったでしょうか……」
　その優しげな眉をひそめる時子の前に、勘三郎が飛び出す。スライムが時子めがけて発射した溶解液を、その腕の鋭い一振りで風を起こし、薙ぎ払った。
「ありがとうございます！」
　お礼を言う時子に勘三郎は少し得意げに鼻をこすった。
「へへ、俺もちょっとはカッコイイとこ見せないとな。頑張ろうぜ！」

　風と火の力が確実にスライムを減らしていく。
　そんな激しい戦闘の中、衛は逸る気持ちを抑え、じっとスライムを観察していた。
　飛んでいくスライムや炎に炙られるスライムは色とりどりだ。けれど、どこかにその弱点が隠されているはず。
（あー、数が多くてイマイチわかんねーな）
　でも何となくバラバラだった色味が少なくなってきた気がする。
（んー、もうやってみっか！）
　鮮やかな朱のマントを翻し、衛は走り出した。

　その動きは俊敏であった。本物の盗賊のように、衛はすばしこくスライムの間を走り回り、スライムの注意を自分に引きつける。
　赤と緑のスライムが衛に狙いを定めたらしい。溶解液をぶしゃぶしゃ吹き出しながらずいずりと衛に近付いてくる。

　衛はこう考えていたのだ。
（色の違うスライムは別属性って聞いたからな。なら色の違うスライム同士をかちあわせりゃ、有効だったりしねえかな？）
　自分の計画通りに色の違うスライムが追ってくる。よしよしと内心ほくそえみながら彼はつま先で地面を蹴る準備をする。彼のろっこん＜月面ラビット＞を発動し、スライムをかちあわせる寸前にジャンプで上に逃げようというのだ。
　スライムがせまってくる。つま先をまさに立てたその時、気付いた遥斗の声が飛んだ。

「卯木、それはまずい！」
「え？」

　衛は振り返ったが、同時にろっこんを発動してしまった。勢いよく彼は天井近くまで跳び上がり、目標を失ったスライム達はぶにりとぶつかって…………どろりと混ざり合うと１つの大きなスライムになった。

　―――そう、合体してしまったのである。