【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治

●ブラック・リキッド亭

　クエスト参加者達がトワ・E・ライトフェロゥに見送られ、『Barアストラル』を後にした頃。
　空き屋通りの端近くに店を構える薄い本と画材の店……BL亭……『ブラック・リキッド亭』の前には荷馬車が停まっていた。

　そこで忙しく往復するのは鎌八まもる。最後の什器を店に運び終えるとふうと一息つき、荷馬車に繋がれている黒馬の首を優しく撫でた。
「オブシディアンもお疲れ様だったな」
　黒馬―――オブシディアン（黒曜石）がまもるの声に応えるように軽く首を振る。まもるはちょっと微笑むと、店に掛けられた真新しい看板を満足そうに眺めた。
「看板があるとザ・店って感じになるな。オレ達の店か……悪くない」
　すると入り口からひょいと猫耳メイド姿の響タルトが顔を出した。
「ムッシュくんお疲れさま～」
「お、にゃんこたん。メイドのコスプレも可愛いね」
　タルトの揺れるポニーテールに思わずまもるの頬が緩む。直球の褒め言葉にタルトが照れながら言った。
「チラシ出来たんだ～、見てくれる？」
「お、早いな。勿論見させてもらうよ」
　まもるはオブシディアンの手綱を店の前に繋ぎ直すと、店内に入っていった。

「お－、漫画の説明入りかー。流石だな分かりやすい」
　チラシを手にしたまもるがうんうんと頷いた。そこにはイラスト入りの店の紹介と共に、メニュー表もついている。基本薄い本のお店だが、飲食もできた方がいいかと２人で話し合い、ハンバーガーとアイスも提供することにしたのだ。料理は牧場バイトのノウハウがあるまもるの担当となっていた。
「ポニテバーガーにBLバーガー。それなら攻めバーガーとか受けバーガーもほしいな♪」
「アイスはネコとかあるんだけど……。了解、考えてみるよ」
　可愛いポニテのお願いに、まもるは綺麗なウインクで返す。そしてチラシにまた目を戻すと、へぇと声を上げた。
「『あなたの薄い本描きます』か。面白いね」
「色々やってみたいんだ。お客さんと萌え話をして、趣味を把握したり」
　タルトが瞳を輝かせ元気よく立ち上がった。
「待ってるだけじゃダメだもんね。ムッシュくん、チラシ配りに行こう！」
「よし、じゃあオレも着替えてくるよ」
「着替え？」
　不思議そうにするタルトにまもるは笑って言った。
「にゃんこたんはオブシディアンの傍で待ってて」

　そして外で待つタルトの前に現れたのは。
「おー、執事服だ！　ムッシュくん似合ってるじゃない♪」
　タルトが感嘆の声を上げる。そう、まもるはメイド姿のタルトに合わせ、執事服に着替えたのだ。
　彼は役者のように無駄のない動きでオブシディアンの背に乗ると、優雅にタルトに手を差し伸べた。
「では参りましょうかお嬢さま……ふふ、こんな感じだったよなあの店」
　そしてタルトの手を掴み、ふわりと彼女を馬に乗せた。

「みんなスライム退治にいってるんでしょ？　下水道にも何枚かチラシ入れたほうがいいかな？」
「ばらまくってことかい？」
「違うよ、これはポスティング♪」

　今日のサジタリオはいい天気だ。
　パッカパッカ。
　異世界の道を、メイドと執事がのどかに仲良く馬の背に揺られて行く。

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