【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治｜リアクション

【星幽塔】第一階層　ＱＵＥＳＴ！下水道のスライム退治

【猫島亭】

「おー、みんなお帰りー！」
　バタンと開いた扉に、厨房でビーフシチューを煮込んでいた来島アカリがひょいと顔を出した。
　その声に元気に答えたのは。
「たっだいまー！　腹へったー！」
「アカリ氏、遥斗氏から土産だ」
「スライムを持って帰ってきた。食べられそうなところを料理してくれ」
「邪魔するぜ……お、美味そうな匂いだな」
　クエストから無事帰還した卯木衛、千歳飴楓子、優木遥斗、七峯亨の４人だ。
　ガヤガヤドヤドヤと、一気に『猫島亭』が賑やかになった。

「スライムって食えるのか……？」
　入念に洗って汚れた部分をこそげ落とし、一応煮沸消毒までされたスライム。厨房の作業台に置いたはいいが、アカリはその赤くでろりとした物体を前にむむむと腕を組む。遥斗はその横で大真面目に頷いた。
「食える。生き物なら、食える」
「その判断基準ってなんなんだよ」
　２人の横で楓子が棒読みにヤジを飛ばす。
「味見しろー」
「これって勇気いるよな。頑張れアカリくん！」
「俺だけかよ？！」
　衛の言葉に思わずアカリがツッコむ。亨は君子危うきに近寄らずと、ビーフシチューの鍋を覗き込んでいる。
　で、結局。
「……腹、壊さないかな？」
「大丈夫。生き物なら食える」
　アカリと遥斗が味見係となった。小さな欠片をせーので口に放り込む。
「～～～！」
「……」
　皆が固唾を呑んで見守る中、アカリはキュッと目をつぶりながら、遥斗はもぎゅもぎゅとスライムを味わい。同時にカッと目を見開いた。
「「イチゴ味だ！」」
「マジで？！」
　衛が驚いて自分も欠片を放り込み、叫ぶ。
「ホントだ！」
「なら、今日のデザートだな」
　スライムを撫でた指をぺろりと舐め、楓子が言う。亨もいつの間にか傍に来て、
「緑だったらメロン味、黄色だったら……パイン味か？」
と言いながら口をもぐもぐさせた。

　そして本日の『猫島亭』の夕食は。
　ふっくらしたパンに、丁寧に煮込んだアカリお手製のビーフシチュー、新鮮なサラダがテーブルに並び。デザートにイチゴ味の……ゼリーもどきが宿泊者に振る舞われた。
　美味しいご飯を囲み、皆の会話も大いに弾む。楽しく夜は更けていき、翌日『猫島亭』のメニューにこんな１文が追加されたのだった。

『イチゴ味のスライムゼリー入荷！　在庫限り！！』

このページにイラストを設定する